自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

葉を広げるヒガンバナ(続)

2013-01-17 | 生物

ところでよく考えてみると,畦や土手でこんなにも繁茂しているのはふしぎです。そこばかりか,お墓近くにもたくさん生えています。その理由を解説書から要約すれば,球根が持つ毒性が畦・土手・墓地などを荒らすモグラやネズミを退治するのに効果があるので植えたとか,飢饉の際に球根からデンプンを取り出して非常食にするために植えた,ということになります。

記録が残っているというのですから,それは事実にちがいありません。しかしそれにしても,身近なところで実際にそれが役立ったという話をわたしは長老から来たことがありません。それに,その殖え方が特異でありながら,すっかり自然の風景に溶け込んだ感がします。今も多少は,子どもたちの野の遊び材料です。わたしたちの少年期は,冬,ヒガンバナの土手を滑り降りて遊んだものです。

殖え方が特異と書きましたが,生えているところをじっくり見ると,あることに気づきます。一様に広がっているわけではなく,何となく固まりができていて,小型のブッシュが点在しているといった感じです。

そして,ヒガンバナの見えない畦や土手には,ほんとうにさっぱり見当たりません。

あるところとないところができたのは,たぶん,圃場整備によって昔の畦や土手が潰され,新しく境がつくられたとき,土の中にヒガンバナの球根が入り込んだためでしょう。生えていなかったところにはさっぱり生えない,生えているところは球根がばらばらにされて人為的に拡散していったと思われます。

そうして,初めの頃はほんの数個,場合によってはたった1個だった球根が年とともにどんどん殖えていったのでしょう。たとえば,1個の球根が一年に2個になると仮定すると,7年後には128個にもなる計算になります。8年後には256個,9年後には512個,10年後にはついに1024個! 

こんなことを思いながら,一つの群落(株)を掘ってみれば納得できます。無数の球根がわんさと固まっているのです。まさに塊りです。

                                                                            (つづく)