自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

幼虫,その後の成長

2014-09-10 | ツマグロヒョウモン

8月23,24日に記事にしたツマグロヒョウモンに関して。下写真を写したときは,孵化後,2日12時間経過。すでに2齢幼虫になっています。 


孵化後10日目。もう5齢(終齢)幼虫になりました。 葉には脱いだ皮が残されていました。 


孵化後14日目。前蛹に。植木鉢にビニル袋を覆って個体が出て行かないようにしておいたところ,この袋に尾端をくっ付けてぶら下がっていました。

孵化後15日目。 蛹化に向かって大変化が進行するときです。この日の観察で,場合によっては,とんでもない程にエネルギーを費やす大変化らしいことがわかってきました。なにしろ前日の早朝に前蛹になったのを確認して以降,1日と12時間が経っても蛹になれないのですから。“なれない”という表現は適切ではないのかもしれませんが,ふつうなら1日あれば蛹に移行できるのです。なのに,それ以上の12時間,ひたすら脱皮するために動き続けたのです。それでも蛹化できないとは!

16日目の朝を迎えました。前蛹は依然としてぶら下がったまま。動きはありません。力尽き果てて,死に絶えたのでしょうか。2日間まるまる前蛹の状態だったのですから。こういうかたちでいのちを失う場面を見たのは,今回が初めてです。


この個体から3日遅れて蛹化した個体があります。2個体がまったく同じように成長過程をたどったとすると,産卵後27日で羽化したことになります。 

 


珍しい,表側への産卵

2014-09-09 | ヤマトシジミ

ヤマトシジミの産卵は,幼虫の食草であるカタバミの葉になされます。そして,そのほとんどが葉の裏側です。考えてみると,その理由としては,卵が日照りや降雨などの気象条件からの影響を受けにくいように,また天敵による難から逃れるように,という点が考えられます。

さらに,カタバミは日が沈むと葉を閉じる性質,日周性をもっているので,暗くなると,産付卵はそのままでは観察できない状態になります。この性質もまた,卵の安全を保つうえで少なからず力を発揮しているでしょう。

ところが,“ほとんど”の例に当てはまらない例外例もときには見られます。

たとえば,葉の表側です。たまたまそこに産み付けられたと思われますが,たいへん珍しい例です。観察者には孵化まできちんと見届けることができるので,とても助かります。


たとえば,実(果)の表面です。この産付卵もまた,途切れることなく観察できます。


観察事例を増やしていくうちに,生きものの多様性を考える材料が自ずと手に入るものだなあと改めて感じています。それゆえに,やっぱり観察の目を緩めるわけにいきません。

 


柑橘の木と虫たち

2014-09-08 | 昆虫

キンカンやレモン,それにスダチの葉にアブラムシが付いて,そこにアリがやって来て,さらにヒラタアブが産卵して,……。アゲハが産卵して,その卵や幼虫に天敵のハチがやって来て,……。そんなふうに,柑橘の木は生きもののいのちが展開していく舞台になっています。


退治せずそのまま放置しているので,なかなかおもしろい風景を目にすることがあります。虫が訪れると,必ずクモが登場します。保護色をしているクモは,わたしの目にもなかなか見えにくいのですが,昆虫たちにしても同じでしょう。 

 
葉の裏にいたり,表側に回ったり。しかし,動きはほとんどありません。じっと待っているだけ。上写真を写したときは,クモはたまたま表側にいました。そこに偶然獲物が飛び込んできました。それをまったくすばやい行動でハントしたのです。目撃して,もうびっくり。その確かな行動はみごとなばかりでした。

別の葉でナナホシテントウを見かけました。アブラムシがいくらでもいるので,餌に事欠くことはありません。動きを追っていけば,食餌行動を目撃することができるですが,そこまではしませんでした。 

 


また別の葉で,テントウムシの幼虫を見ました。それはアブラムシを捕らえていました。 


葉の裏側で,ミノムシの抜け殻を見かけました。成虫が脱皮して飛び去った名残りです。蓑の材料に枝が使われています。明らかにキンカンの枝です。


柑橘類の木を見ていると,飽きることはありません。 

 


蛹の体内から天敵が!(続)

2014-09-07 | ツマグロヒョウモン

寄生バエの幼虫が囲蛹になってから11日目のこと。

囲蛹を入れた容器を見ると,ハエが一匹飛び回っていました。囲蛹に見合った大型のハエです。それまで入っていたカプセルの先には,出てきた穴がぽっかり開いて,蓋がかろうじて取り残されていました。

このハエが寄生バエなのです。ハエのことなので,盛んに動き回り,チャンスがあれば容器から逃げ出そうとします。それで,撮影するのは容易ではありません。プラスチック容器の壁の向こうにとまったハエを写したのですが,壁越しでは像が曇ってしまい,結局満足のゆく画像を得ることはできませんでした。

それで,今度は冷却作戦をとりました。短時間冷蔵庫に入れて,動きを鈍らせる策です。これは効を奏しました。口器を掃除するしぐさも撮れました。

 
横から撮ると,全体のすがたがはっきりしています。棘の荒々しさが際立っています。

 
さて,このハエの正体のことです。詳しくはわかりませんが,ニクバエ科の一つであることはまず間違いなさそうです。蛹の腹部に寄生していたことを考え合わせると,辻褄が合います。

それにしても,ツマグロヒョウモンの体内に,どの時期に,どのようにして産み付けられたものなのでしょうか。残念ながら,この疑問が解けるヒントは得られていません。 

 


クサカゲロウの卵,成虫の死

2014-09-06 | 昆虫

キンカンの木で,クサカゲロウの卵を見かけました。卵柄の先にぽつんと1個。長細い,紡錘型の卵です。柄は全部で6本ありました。そのうち,卵があるのは2本だけ。他はもう孵化を終えたのでしょうか。


この卵は“優曇華(ウドンゲ)”,あるいは“優曇華の花”とも呼ばれて,よく知られています。語源は仏教用語です。


我が家で見かけるのは珍しいので,さらに見ていくうちに今度は成虫を発見。ただ,その姿は無惨にもクモの巣に絡め取られ,とっくにいのちを失っていました。しばらく経つと,クモがわたしへの警戒心を解除したらしく,そこに現れてクサカゲロウに取り付きました。


卵の母親はこの成虫だったのでしょうか。判断材料はまったくありませんが,もしかするとそうなのかもしれません。

観察を怠らなければ,身近なところでも結構発見が続きます。

 


幼虫,無惨

2014-09-05 | アカタテハ

ウォーキングをしていて往路で見かけたのが下写真の幼虫。葉の表側で巣を作っているところでした。その様子は,わたしにはたいへん大胆な行動に思われました。それで,天敵に見つかりやすい昼間に大丈夫なんだろうかと思いつつ写真に収めたのです。

 


20分後。復路,そこを通りかかると,先ほどの幼虫にハチが取り付いていました。幼虫はすっかり無惨な姿に成り果てていました。そんなふうになっているとは思ってもいなかったものですから,わたしはさっさと近づいていきました。ハチはわたしの接近に気づいたらしく,目に入った途端パッと飛び立ちました。幼虫は,このハチに襲われたのです。それも,巣作りを終える頃に。


わたしが「もしかしたら」と思ったとおり,アカタテハの幼虫に非常事態が生じたのでした。

すぐ隣りの葉で,ニクバエが幼虫のからだの一部と思われる肉片を舐めていました。ハエの臭覚のすごさが垣間見えます。肉片はハチがそこに移動させたものと思われます。


目の前で生起する自然事象には,ほんとうに驚くばかり。それが続く限り,観察の目を緩めるわけにはいきません。

 


ホソヒラタアブの卵と幼虫と

2014-09-04 | ヒラタアブ

プランターにスミレを植えています。この野草を植えているのは,花を愛でるためでなく,ツマグロヒョウモンを招くためです。

そのスミレに興味を持って盛んに飛来するのがホソヒラタアブ。もちろん,葉の裏にアブラムシがどっさり棲んでいるからなのです。そこに卵を産めば,孵化した幼虫が苦もなくそれらを食せます。

ホソヒラタアブが産卵行動を示した葉をあとで調べると,そこにちゃんと卵が一粒産み付けられていました。「これを写真に撮っておこう」と思い,カメラをセット。ファインダーを覗いていると,アリが視野に入ってきました。もちろん,アリはアブラムシと共生関係にあり,アブラムシから甘いごちそうを得て,お返しにアブラムシを守っているのです。

それで,一枚パチリ。

 

 
他の葉を調べると,すでに孵化し終わった若齢幼虫が見つかりました。幼虫の周りにはアブラムシがいっぱい。これなら餌に困らないはず。

 

 
この様子を撮っている際,偶然ここにもアリが現れました。アリの目には幼虫が入らなかったのか,入っていても構わないのか,そのまま向こうに行ってしまいました。

 

 
スミレは,いのちのドラマを様々に提供してくれる野草です。注目に値します。

 


ミョウガの花

2014-09-03 | 植物

家の片隅,日陰に今ミョウガの花が咲き始めています。

ミョウガは珍味で美味だとわたしは思っていますが,その昔,「ミョウガを食べると物忘れが激しくなる」という俗信があったことを思い出します。

母がその俗信をもっともらしく語ってくれたのを覚えています。ときどき,その珍味を食しながら,「そんな迷信なんか,吹っ飛んでしまえ」と思いつつ,「もし物忘れが激しくなったら困るなあ」と感じたことが懐かしく浮かんできます。しかし,けっして信じていたわけではありません。 


ミョウガの花は花の集合体です。 


花の断面が見たくて,切ってみました。


 

この花は,ミョウガ本体から出た花茎の先に付きます。 

 
花を見ると,たいていの場合,実(種子)はどのように形成されていくのか気になります。

しかし,ふしぎなことにミョウガのは種子がめったに付かないのだそうです。ネット検索で種子にあたってみると,画像が紹介されています。赤い色をしていて,はっきり目立ちます。見た瞬間,「これはおもしろい!」と思いました。しかし,わたしはそれに出合ったことがありません。いつかこの目で見たいなあ。

ミョウガの花なのですが,もちろん食べました。季節の香りをちょっぴり味わった感じです。

 


アカタテハ,産卵行動と産付卵と

2014-09-02 | アカタテハ

8月26日(火)。昼休みのウォーキング中の話題です。たぶん忘れられないことになるだろう大発見をしました。アカタテハの産卵行動と卵の実物に出会ったのです。

アカタテハの生態に迫りながら画像記録を残すのは,今のわたしにとって一つの関心事です。アカタテハについては,産卵,卵,孵化を見届けたいという気持ちが強くて,日頃,歩きながら食草カラムシのある場所に来ると,目を注いでいました。しかし,幼虫は見かけるものの,見届けたい事象については,一向にチャンスに恵まれませんでした。

ところが,この日,一気に氷解するようなかたちで決定的場面と対面したのでした。

カラムシ群落のところに来ると,突然アカタテハが舞い上がりました。産卵に来たのだなと思って,その行方を追っていると,また舞い戻って来ました。そうして茎頂部の葉にとまると,そのまま産卵行動に移ったのです。ビックリ仰天。しばらくいて,また別の葉に移りました。そうしながら,産卵孔を葉に触れて卵を産み付けました。


飛び立ったあとを見ると,卵がはっきり確認できました。草色を帯びた,ツヤのある色合いに,縦筋が見えるきれいな卵です。大きさは,あとで計算すると0.7mm程度。そんなに小さいのですが,目が慣れてくるとどんどん見つかりかけました。一つの葉に3個付いた例もありました。複数のアカタテハが産んだものかもしれません。


すぐ上の写真を部分拡大してみましょう。単なる縦筋が付いているようには見えません。どうも線条突起のように見えます。


さらに別角度から写した写真を見ると,確かに縦方向に突起が10本以上走っています。0.7mmの中に,こんな世界が広がっているのです。“アカタテハならでは”の小宇宙です。


ここは森林の辺縁部にあたり,アカタテハの棲息環境にはピッタリと思われます。しかし,水田と道路の境にあたるため,カラムシは定期的に刈り取られます。最大の外敵はヒトだといえます。

したがって,この場所で成長を見届けることは到底望めません。それで卵を持ち帰ってみようと思いたちました。孵化を確認できれば,これはもうスゴイ話なのですが。

 


ツマグロヒョウモン,蛹の体内から天敵が!

2014-09-01 | ツマグロヒョウモン

ツマグロヒョウモンの幼虫がいる植木鉢に割り箸を立てておいたら,それに尾端を引っ付けて蛹になりました。

羽化をたのしみに見守り続けていたら,やがて色合いが濃くなり,羽化がかなり近づいてきたように思われました。早朝それを確認。それから1時間経って,その場を通りかかったときのことです。

蛹の中から,得体の知れない幼虫が出ようとしてグニャグニャと動いているではありませんか。もう,びっくり! 「お腹の中から出てきたんだ。寄生バエの幼虫だ!」と直感。もう大急ぎでカメラを持ち出してきて撮り始めました。

そのときは,幼虫のからだは完全に体外に出てしまっていました。そうして,強力な粘液でぶら下がっている感じでした。  


幼虫は,同じ動きを繰り返しました。結果,粘液は少しずつ伸びて,からだが地面に向かって降りていきました。 


地面に降りると,すばやく這って移動を始めました。動きのなんと速いこと! たぶん土の中に潜ろうとしたのでしょう。

わたしは外出しなくてはならなかったので,その幼虫を容器に入れておきました。4時間後にそれを見ると,姿がすっかり変わっていました。いわゆる“囲蛹” になっていたのです。幼虫の外皮がそのまま硬化して,その内側に真の蛹が形づくられ,二重構造になった蛹です。 


いったいどんなハエが誕生するのでしょうか。なんとしても正体を突き止めたいと思っています。