自然となかよしおじさんの “ごった煮記”

風を聴き 水に触れ 土を匂う

❜17 春,虫の目写真(10)

2017-04-25 | 生物

春。農家にとっては活動開始の季節でもあり,草との戦いが始まる季節でもあります。ちょっと油断したり気を抜いたりしていると,スルスルっという感じで草丈が伸びて来ます。それがもう,ふしぎなほどなのです。

放っておくわけにもいかず,この度さっそく畑の草刈りをしました。 刈っていると,うれしいことにクビキリギスが現れました。冬を無事に越し,活動を始めているのです。機械の音とわたしの影にびっくりしたでしょう。褐色型の個体です。麦畑を背景にしてモデルになってもらいました。日がかなり傾いた頃でした。

 
緑色型の個体もいました。出て来たと思ったら,次々に現れて,とうとう4匹も!


逃げようとするその瞬間,ピントを合わせて撮りました。わたしの格好は,腹這いになって地面に這いつくばって! 

 
西の空に日が沈みかけています。逆光を味方につけようと思って撮りました。

 
「真後ろから撮るとどうなのかな」。そう思って,後方からねらいを定めて撮りました。全身が入りました。

 
この環境,クビキリギスにとって棲みやすいのでしょうか。短時間に次々と5匹もの個体に出合えたことがふしぎでしかたありません。畑周辺は棲みよい環境が残されているのかも。

 


カタクリの花と訪花昆虫たち(続)

2017-04-25 | 昆虫と花

カタクリと訪花昆虫との組み合わせで典型的な例はギフチョウでしょう。ギフチョウがいて当たり前といった雰囲気さえ感じさせるほどです。この群生地でなんとか虫が花に入る場面を目撃したい,それがわたしの強い願いでした。

それで,周回コースを再び回っていったのです。

めったに見ないハムシがいました。アトボシハムシです。もしかすると,カタクリの葉が食草なのかもしれません。 

 
ハナバチのなかまが時折やって来ます。そういうときは,姿をじっと追ってみる必要があります。一度だけ,たった一度だけ,そのハチが花の中に入ったのです。目の前の出来事,見たいと願っていた瞬間だけに,どきどきしてきました。ハナバチはしばらくそこにとどまって,蜜源に口吻を伸ばしているらしく,からだの半分だけが見えていました。また,ごくごく小さな昆虫が脇でじっとしていました。これも花を訪れたのでしょうか。

 
出て来た瞬間を撮ったのが下写真です。ミツバチかハナバチのようです。からだにはきっと花粉が付着しているでしょう。


待ちに待っていたショットをものにすることができました。ついに現場を目撃できたのです。

受粉の話になると,カタクリはチョウとの関係が引き合いに出されます。その方がきれいなかたちで語られやすいからでしょう。昔はそういう実例を見かけることが多かったかもしれませんが,これがあまりにも強調され過ぎるのは,今の自然の姿としてはいかがなものでしょう。もっとありのままの自然を伝えていく努力がなされないことには。受付の方の観察不足は止むを得ないとしても,カタクリを保護するなら一方で知識を補強する努力が欠かせないと思うのですが……。

これが観察者としてのわたしの,ささやかな注文です。 

 


カタクリの花と訪花昆虫たち

2017-04-24 | 昆虫と花

カタクリの花が受粉が成って,結実に至り,そして種が落下すると,それをアリが巣に持ち帰って発芽して……。そんなふうに分布拡大の説明がなされています。種子にはアリの大好物である甘味成分のエライオソームが付着していて,それを誘引物質にしてアリを招いているというわけです。

では送受粉はどうやって行われているか,容易に想像がつきそうですが,それがどうもなかなか。その場面を目撃しないとなかなか理解できないものです。わたしもまた,翅のある昆虫が訪れて花粉を運ぶ,写真で見るとギフチョウが紹介されている,その程度のことしかわかっていませんでした。

この度訪れた隣市の群生地で,この点に格段の関心を抱いて観察してみました。じつは,これまでもここを訪れて観察し,地元の人にインタビューもしていたのですが,解決できないままになっていたのです。ギフチョウは野生では絶滅していますから,見ることはないでしょう。どんなチョウやその他の昆虫が来るのか,見られるか,興味津々です。

受付の方に,これまでと同じインタビューをしました。

わたし「受粉にチョウやって来るのですか。たとえば,ギフチョウとか」

係  「アリですよ。アリが運ぶんですよ。チョウなんか来たら困ります。それを捕りに来る人が出て来て,ここが荒らされますから。虫なんて来ないですよ。アリですね」

わたし「ありは種を運ぶんでしょう。わたしがどうしても知りたいのは,この説明板に貼ってある資料に載っているギフチョウのように,花粉を運ぶ昆虫のことなんですが」

係  「そんなものはいませんねえ。見たことがありません。アリじゃないですか」

これでは埒があきません。結局,チョウ,それも大きめの目立つチョウについては印象にないということなのでしょう。それなら,自分で確かめてみるほかありません。

カタクリの花はわんさか咲いているので,注意深く見てけば目にとまる昆虫が出てくるはず。しばらくして,小さな昆虫が飛んでいるのが目に入りました。ハエのなかまです。葉にとまりました。

 
さらにしばらくして,近くにヒラタアブがやって来ました。これら虫たちは明らかに花を訪れようとしているはず。このときは花に入るところは見られませんでした。

 
同じところに,今度はハチのなかまが訪れました。しかし,たぶん,このハチは他の虫の外敵でしょう。いかにも,そんな雰囲気で触角をぴくぴくさせていました。この観察結果は,虫が棲息している状況証拠になるでしょう。

 


離れたところで,今度は別のハエのなかまとヒラタアブを発見。 

 

 
これまでの観察では,結局花に入って行く昆虫の姿を目撃できませんでした。しかし,この分だときっと見つかるはず。そんな淡い期待感を抱いて,もう一度周回観察コースを歩くことに。撮影は二の次です。

                                         (つづく)

 


ベニシジミ,産卵から孵化へ(1)

2017-04-24 | ベニシジミ

4月24日(月)。快晴。

昼のこと。公園でベニシジミを見かけました。スイバの葉にとまったいたので,「ははーん,これは産卵するな」と予感。動きを追っていると,そのとおり,産卵行動をしている最中でした。こういうときは,すこし離れたところから,じっと見守るのがいちばん。動いてはダメです。ベニシジミをびっくりさせないことが大事です。


さっそく葉に産み付けました。そうして舞い上がり,今度は別のスイバに降り立ちました。葉にとまって,葉柄に向かいました。やはり産卵するのです。

産卵場面は撮影しませんでしたが,去ってから,確認しました。思ったとおり,葉柄に卵が1つ産み付けられていました。なつかしい卵です。かたちといい,表面のデコボコといい,ほんとうになつかしい気がします。


近づいて撮ると……。


公園は定期的に草刈りがなされます。今日も近くでされていました。このままでは,孵化を観察できない恐れがあります。というよりも,刈られたらいのちはそこでおしまい。それで,大急ぎで一株掘り上げて植木鉢に移植しました。これで,落ち着いて経過を観察できます。 いずれ変化が現れるでしょうから,そのときは報告しましょう。 

 


モンシロチョウの孵化

2017-04-23 | 昆虫

4月17日(月)。薹立ちして,花を付けたカブにモンシロチョウがやって来ています。改めて葉裏を確かめると,あちこちに産付卵が付いています。なかには,茎にある卵から孵化したばかりの幼虫も見つかりました。葉だけでなく茎にも産み付けるのです。下写真はコンデジで撮影したコマです。 


反対側から見ると……。 


卵をいくつか持ち帰りました。夜見ると,そのうちの一つが孵化したばかりでした。ちょうど卵殻を食べている最中だったので,撮影しておきました。カメラは一眼レフ使用。 

 

 
この分だと,孵化場面を観察できるチャンスは必ず訪れるでしょう。

4月18日(火)。持ち帰った卵のいくつかが,さっそく孵化しました。モンシロチョウの場合は孵化直前に透明感がぐんぐん増してくるので,観察が比較的容易です。


油断していると,もう孵化し終わっているということが度々。


「もう出てしまったかあ」。これら3個の卵はたぶんきょうだいでしょう。

  

 


❜17 春,虫の目写真(9)

2017-04-22 | 生物

カタクリは,とにかく見る人のこころを引き付けるというか,可憐さを見事に演出しているなあと思います。花弁の反り具合は,「なんでこんな姿をしているの?」とふしぎなくらい。朝露を付けたまま,もう虫の訪問を待っています。花弁にチョウが脚を引っかけ,ぶら下がっている光景が浮かびます。  

 
これだけ生えていると,受粉できない花があっても種としては十分維持できます。


もう一杯! 

 
光を背に受けて,まぶしく光ります。

 
群生地を巡る人の群れが続きます。


斜面を覆う花,花,花。保護しようとする人の努力が実った風景です。人手が入らなければ,雑木が生え,こんな風景にはならないでしょう。言い換えると,人為的な環境なのです。 


ほんものの虫に出合えれば,申し分なし,というところです。 

 


❜17 春,虫の目写真(8)

2017-04-21 | 生物

カタクリの群生地を訪れました。

受粉・送粉には当然昆虫の手助けがいるでしょう。その話は他日取り上げることにして,まずは訪花昆虫の目になったつもりでカタクリの花を見ていきましょう。

花は満開を過ぎていました。それでも,群落の雰囲気は感じられました。反り返った花弁がなんとも優雅な曲線美をつくり出しています。昆虫が訪れたら,この花弁は脚場になるでしょう。花弁の中心に蜜源があることを察知するはずです。

 


オシベもメシベも,大きく突き出して存在をアピールしているかのよう。ついつい虫たちはとまりたくなるのでは? 

 

 
朝露に濡れて,静かに咲いています。虫を招く準備が進みます。

 


わんさか咲く群落で,虫たちはどの花にしようかなと迷うのでしょうか。どれでもいいやという感じで,片っ端から訪れるのでしょうか。 

 

 
こんなに反り返って,あっぱれなほどに反り返って,人間の目をも引き付けます。

 


花のじゅうたんといった雰囲気さえ漂っています。 

 


満開時だと,もっと迫力があるでしょう。虫の目になって対象を見つめ直すのは結構愉快です。

 


地域ミュージアムで考える(60)

2017-04-20 | 随想

昨日4月19日(水)のこと。前回取り上げたケント紙製及び段ボール製立体地球について強い関心を抱かれた来館者がありました。大阪から来られた小さなお子さん連れのご夫婦で,初めて訪れたとのことでした。そのうちのお母さんが興味津々で聞いて来られたのです。


話の内容は簡単に書くと以下のとおりです。

  •  館内あちこちに置かれた段ボール製地球はどうやって作ったのか。座っても大丈夫か。
  •  ケント紙製地球はとてもおもしろく,よくできている。どうやって作ったのか。
  •  ケント紙製の方(モビール作品)を入手したいのだが,販売されていないのか。

館内の見学でとてもご満足の様子。きっちりおもてなしをしてお帰りいただくことが大事です。とりわけ,目が輝くような感じでいろいろお聞きになる方って,わたしたちスタッフから見れば,ミュージアムの心強い味方です。

いったんは展示しているモビール作品を差し上げようと判断したのですが,完成品を差し上げてもおもしろさをたっぷり味わっていただけないでしょう。それで,余分に置いていた展開図を数枚準備してプレゼントすることに。自宅でご自分で作っていただくことにしたのです。


それで,うちの一枚を使い,作る要領をお伝えすることにしました。実際に作業をしてみるのです。カッター板の上で,展開図に折り線を入れ,のりしろ付きにして切りとりました。できると,その方に実際に折り曲げて立体を作っていただきました。出来上がったとき,お母さんの目がほんとうに輝いて見えました。よかった,よかった。吊り下げ方は口頭で伝えました。終始,興味をもって聞いてくださっていました。

あとで,スタッフから販売に向けて本格的に検討してはどうかと提案があり,いろいろ議論しました。窓口案内で,立体地球は販売していないのかと聞かれることが度々だということで,このままではもったいないというのです。では,どんなかたちで販売し,価格をいくらに設定するのか。完成品を販売するのではおもしろさは半減するでしょう。クラフトというものは自分で手作りして,組み立てるところにほんとうのたのしさが詰まっているはず。

折り目とのりしろを付けて,予め切っておくというのがいちばん手っ取り早いのですが,たくさん準備をするのは労力を考えると今はできない話。とかといって,印刷業者に発注するゆとりはまったくなし。

そんなこんなで,結局,商品として大々的に並べるのではなく,興味深く尋ねて入手を熱望される方があればお渡しできる程度の分を準備しておき,試験販売してはどうかという話にまとまりました。これも魅力あるミュージアムづくりの一環です。

ミュージアムは人がつくり,人が育てる施設です。いのちを注ぎ込むのはあくまで人です。来館者の思いはもちろん,スタッフのそれを大事にしていかなくてはなりません。 

  


欠けた桜守の思考

2017-04-19 | 随想

ソメイヨシノは樹齢が長くても100年程度といわれています。サクラのなかでもソメイヨシノは代表的な種で,春を彩る花として人々にこころより愛されています。

田舎で山に入ると,ヤマザクラの木にあちこちで出合うことができます。山を遠くから見ると,春,ヤマザクラがぽっ,ぽっと木々の間で淡いピンクの花を付けているのがわかります。芽吹いたばかりの他の木に交じって咲くこの花には,ソメイヨシノに負けぬ風情が感じられます。

ヤマザクラは野生の樹木なので,いたってたくましい生き方をしています。木々との激しい戦いを,人手なしにやっていかなくてはなりません。そしてやって来た結果として,今,種を維持し続けているのです。病気にも害虫にも強い! この点,ソメイヨシノは完全に負けています。人が手を入れなければ衰弱の一途を辿るでしょう。そこから桜守の発想が生まれます。

堤防にサクラ回廊をつくるとかで,ソメイヨシノが並木風に植えられたところは限りなくあります。それを見ていると,ふと気になるところがありました。世話が行き届かないのでしょう,幹が枯れてしまって,枯れた部分だけが歯抜け状態になっているところがあるのです。

とても気になるので,一度,その場所を見てみました。下写真のところでは,完全になくなっています。あとを補植する気配は感じられません。驚いたことに,幹やら枝やらがごっそり伐られていました。堤防の外側は水田・用水路があり,その方はすべてがばっさりと伐られていたのです。これでは迷惑な木同然です。わたしには無残な姿に思われました。


サクラは若木なら枝を伐っても大丈夫だといわれていますが,老木になると伐ってはダメというのが常識です。そこから病原菌が侵入して腐り始めるのは目に見えています。たとえ伐っても防腐処理をしなくてはなりません。ことわざ「サクラ切るバカ,ウメ切らぬバカ」はここから出ています。


問題の場所からほんのすこし離れたところに,これとよく似た場所がありました。ところが,様相はまるで違っているのです。おもしろいほど異なっているので,写真でご紹介しましょう。


サクラが枯れた箇所にはすべて補植がなされていました。それも何回かに亘って行われている様子が窺われました。その証拠に,植えられた木の樹齢が異なっています。若木の場合は根元に新しい真砂土が入れられているので,それとわかります。この木はたぶん昨年植えられたものでしょう。


さらに,サクラの枝は伸びるがままにされています。先に書いた例と同じように,水田・用水路がありますが,枝が上にのしかかってこようとちっとも気にしないといったふうなのです。

さて,サクラを守り育てる姿勢を両者比べていかがでしょうか。軍配は当たり前ながら後者に上がるはず。後者には,枯れたところに補植することで,100年寿命をうまく受けとめて愛でるサクラが途切れないように慮る思想があります。まさに桜守の発想です。

思想というと小難しい感じですが,そうした理念が欠けていると植えっぱなし,枯れっぱなしでそのまま,なんてことになります。前者の例では,サクラは邪魔者のようにさえ見えます。愚かな実態です。

身近な樹木と接し,世話をするには,見通しをもたなくてはなりません。次代に自然環境を引き継ごうとする意志表明がなく,楽をしているだけでは自然は応えてくれません。

 


接写,モンシロチョウ

2017-04-19 | 昆虫

夕刻,畑のダイコンの葉にモンシロチョウがいるのを発見。ねぐらにする様子です。さっそく,コンデジで画像記録を開始。

 
体温がすっかり低下したらしく,わたしの動きにはまったく反応しません。「よし,これなら超接写をしよう」と思い,やってみること。

個眼と,毛で覆われた頭部辺りがじつによくわかります。

 

 
毛や突起状のヒレがなんとも印象的です。これらがからだを守っていることに感動。これなら水滴の一粒も通さないでしょう。

 

 
斜め前方からとらえました。

 

 
眼だけが露出しているって感じです。あとは毛ばかり。

 

 
真正面から見ると……。この複眼で全方位の様子を,彼なりのとらえ方で感じているのです。ではいったいどんなふうに見えているのかなあ。

 

 
超接写をとおして,見慣れたモンシロチョウの,意外な姿が伝わってくるのではないでしょうか。