旧大利根町北大桑地区には「ネロハ」と呼ばれる一つ目お化けの逸話や伝承が残っている。逸話の起源を想うと昔からの農村部における人々の暮らしが垣間見える。
昔の農家は朝早くから夜遅くまで寝る間も惜しんで働いたという。特に嫁にきた者の仕事は多く、人一倍大変だった。
秋も深まった日の晩、農家に嫁いだ娘のことを心配に思った母親はそっと様子を見に行った。心配した通り娘は寒さをこらえながら夜なべの仕事をし、不憫に思った母親はせめて一晩だけでもゆっくり眠らせてやりたいと願いあれこれ思案したという。
師走の八日の晩思いったた母親は髪の毛をひりほどき額に日本の鰹節を括り付け帯ひるまいの姿で娘の家へと向かったという。
「ネロハー、ネロハー」
大声で母親は叫びながら戸をドンドンと叩いた。
突然のことに驚いた家の者は、恐る恐る外を覗くと鬼が戸を叩いている。慌てた家の者は「嫁ご、早よ寝ろ、鬼が来たぞ」と言って家の灯りを消して寝てしまった。
それからというもの、師走と如月の八日には「夜早く寝ないと鬼が婿に来る(嫁を盗みに来る)」と言って代わり飯(いつもと違ったご飯)をして早く寝るようになったという。
「ネロハ」とは北埼玉の方言で騎西地区においては昭和の初めまでこうした行事が行われていたという。如月八日を事始、師走八日を事納めとし、長い竿の先にみけざる(目の粗いザル)をかぶせ、庭に立てたという。一つ目の鬼が目の多いザルに驚いて逃げ出すと考えられたからである。
物語そのものが、娘を心配した親心から始まっていて、時代を超えて共感するものがある。嫁いでも娘が愛おしいの思いは変わらない。
農家に纏わる伝承は、祭りによって伝えられることが多い。
(引用 加須インターネット博物館 / 加須ものがたり/ネロハ )
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