冬休み終盤ということで、一般には仕事始めの1月6日さいたま市大宮区にある鉄道博物館を見学しました。前日が子供の誕生日ということで、毎年この時期にどこかへ出かけることが多いのですが、本人の希望で「鉄博」へということになりました。家族連れで行くのは5年ぶりくらいでしょうか。
鉄道博物館はJR東日本創立20周年記念事業として2007年(平成19年)にオープンしています。私たち埼玉県人にとって大宮は埼玉の中心そのものですが、こと鉄道網に関しても東京の北の玄関口として、主要幹線鉄道の東京の手前の駅として昔から栄えてきたところです。2018年(平成30年)にリニューアルされ南館が増設、館内を車両、歴史、仕事、科学、未来の5つのステーションに分け鉄道を様々なテーマから発見、体感、想像する総合ミュージアムとして多くの来館者の期待に応えています。運営母体はJR東日本が出資する公益財団法人東日本鉄道文化財団ですので、公益性ある「博物館」です。営利を目的とした娯楽施設ではありません。
ジオラマ解説を始め館内の案内に多くのボランティアスタッフが当たっています。JRのOBの方が多いように思いますが、やはり人の解説が聞けるというのは嬉しいものです。
鉄道博物館の三つのコンセプトです。
①日本及び世界の鉄道に関わる遺産、資料に加え国鉄改革やJR東日本に関する資料を体系的に保存し調査研究を行う「鉄道博物館」
②鉄道システムの変革を車両等の実物展示を柱にそれぞれの時代背景を交え産業史として物語る「歴史博物館」
③鉄道の原理や仕組みと最新の鉄道技術について子供たちが模型やシュミレーションを活用しながら体験的に学習できる「教育博物館」
日本の近代化の歴史はまさに鉄道の歴史と言ってもいいほど、明治維新以来国策として鉄道網の整備と車両開発が行われてきました。館内中央のメイン会場である車両ステーションの上には長い長い鉄道年表が掲げられています。
鉄道という交通機関は1825年(文政8年)イギリスで誕生し、欧米各国に普及していきます。一方そのころ日本は陸上交通は馬、駕籠などによって行われていました。1854年ペリーの黒船来航以来、蒸気機関車の模型を持参し当時の人々を驚かせたそうです。また欧米へ渡った使節団や留学生は現地で鉄道を体験しその知識や経験を持ち帰って、その必要性を説きました。特に鉄道の開業によって日本人の生活が変わったこととして時間の概念が変化したことだといいます。
江戸時代の人々は日の出、日の入りを基準として、昼と夜をそれぞれ6等分した時間の中で生活することを習慣としていました。寺院に設けられた「時の鐘」と聞いて今がいつか把握する程度で、時間とは不変の点としてとらえるものではなく、大まかな「帯」の様なものだったといいます。今でも「時間帯」といったことばが残っていますが、正確な時間の概念が用いられたのは鉄道の導入が契機になったと言えます。
鉄道開業の前1872年(明治5年)鉄道建設の役所であった鉄道寮は東京港区芝の増上寺にあった梵鐘を新橋駅近くの愛宕山に移設し、定時ごとに鐘を鳴らして運行の基本となる「時刻」を人々に知らせようとします。文明開化の象徴として鉄道の開業を目指した維新政府は必死にこうした時刻の概念を植え付けようとしたのです。
同年11月明治政府は旧暦を廃止し、西洋に倣って太陽暦へと改暦します。その年の開業したのが新橋ー横浜間だったといわれいます。高校の歴史の教科書にも取り上げられていて、大学入試の問題にもなるところです。
その時に走った1号機関車です。車両ステーションの入り口に展示されています。鉄道記念物であると同時に1997年に初めて国指重要文化財となっています。
「惜別感無量」の文字がその重みを表しているようです。
初の国産蒸気機関車戸なったC51形です。展示場の最奥展示されています。
歴代の御召し列車も展示されています。1号御料車は国指定重要文化財です。
私はどうしても鉄道史の方に興味が向いてしまいますが、子供はやはり最新鋭の新幹線車両が気になります。実際に何度か本物の車両に乗りましたが、間近かで見る新幹線車両はどれも美しく、自分で運転する夢も膨らみます。
そんな子供の夢を叶えてくれるのがキッズプラザの先にあるミニ運転列車です。整理券が必要ですが、全長300mのコースを実際に車両の運転をすることができます。
車両は順番に乗る関係で選べませんが、山の手線車両を自分の手で走らせることができました。
東海道新幹線か開業したのは東京オリンピックを間近かに控えた1964年(昭和39年)のことです。戦後復興、高度経済成長を支える日本の大動脈としてその役割を果たしたといいます。その象徴的車両21形新幹線です。いわゆる0系新幹線。56年後の今年2度目のオリンピックが東京にやってきます。私も勿論前回のオリンピックは知りません。
今では最新系のE5系はやぶさが東北新幹線区間を時速320kmで駆け抜ける時代となりました。鉄道の進化はまだまだ続いていきます。人口減少と共に成熟社会を迎えたとも言いますが、速度だけではなく、環境、安全、乗り心地と鉄道の未来は子供の夢とと同じように限りなくひろがっていくことでしょう。
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