(1)原発再稼働が「遅れ」ている。ゆえに電気料金再値上げが必要だ・・・・という議論が始まった。
電力会社やそれを支援する一部全国紙のキャンペーンだ。
その言い分は、まことに自分勝手で見苦しい。
(2)電力会社は、経産省を使いながら毎夏恒例の「電力不足」キャンペーンを必死になって展開している。原発再稼働を認めないと、電力不足でとんでもないことになるぞ・・・・という脅しだ。
原発の必要性をアピールして再稼働につなげる。もしそれが遅れた場合でも、料金値上げの口実に使う・・・・という作戦だ。
(3)しかし、原発が動かなくて電力会社の経営が苦しくなると値上げする・・・・という理屈が、なぜ成り立つのか。
電力会社は、原発が動かないのは天災のような不可抗力だと考えているが、それはまったく間違いだ。
世界中で原発の安全規制が年々厳しくなる中、日本だけがその規制強化を怠ってきた。そのサボタージュの推進役が電力会社だった。そのように、班目春樹・原子力安全委員会委員長(当時)が証言している。みんなで集まって、日本だけ規制強化の適用を逃れる方法を検討していた、というのだ。再稼働審査の「遅れ」の主因は、次のように、ひとえに電力会社の対応にある。
(a)原子力安全・保安院は、中越沖地震後に全原発に免震棟の建設を指示したが、実行したのは東電の福島第一など、ごく一部の原発だけだった。やるべきことを、電力会社がいかに怠ってきたかがわかる。
(b)今日電力会社が直面している安全規制の強化は、遅すぎたものだ。しかも、電力会社は基準の甘さを知りながら、対応を怠っていたのだ。
(c)さらに、原子力規制委員会の「想定する地震の大きさを見直せ」という指示を、電力会社は談合して無視した。
(4)ふた言めには、原発推進は国策だった、というが、強制ではない。
6月の東電の電力料金は沖縄電力の料金を超えることになったが、沖縄電力は原発を保有していない。他の電力会社は、沖縄電力のように原発なしで進めばよかったが、建設コストが高い原発を作ったほうがより大きな利益が出るという総括原価方式の甘い蜜に釣られて、とんでもない間違いを犯したのだ。
(5)すべて電力会社の責任だ。
(a)原発を選んだのも、
(b)安全対策を怠ったのも、
(c)新たな基準への対応が遅れたのも、
すべて電力会社の責任だ。少なくとも消費者にその責任はない。
それなのに、原発再稼働ができないことを理由に料金値上げを求めるのは筋違いもはなはだしい。
北海道電力、九州電力、関西電力などが経営難に陥っているが、値上げによる救済ではなく、電力会社が自らの責任で対応すべきだ。
(6)(5)は何を意味するか。破綻処理だ。
破綻処理により、経営者の責任が問われる。多くの場合、クビだ。
株は紙切れ。株主責任だ。
銀行の債権も大幅カット。貸手責任だ。
電力会社は身軽になり、一気に再生する。
被災者への賠償責任の問題もないから、東電のような難しさはない。
電力会社の場合、地域独占のおかげで顧客は逃げないから、最も再生しやすい。ANAと競争するJALより容易だ。むろん、破綻処理しても電力が止まる心配はない。
(7)米国では、ごく普通に大手電力会社が破綻処理される。4月も、エナジー・フューチャー・ホールディングス(テキサス州)が負債4兆円を抱えて米連邦破産裁判所に破産法第11条の申し立てを行った。
電力破綻の引き金は経産省に引いてもらおう。料金値上げを認めなければ破綻につながる。経産省は、電力会社と癒着し、福島の人々や国民に迷惑をかけてきた。一度くらい国民のための政策を実施してもらいたい。
□古賀茂明「電力会社「値上げ救済」の愚 ~官々愕々第109回~」(「週刊現代」2014年5月31日号)
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【参考】
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」
電力会社やそれを支援する一部全国紙のキャンペーンだ。
その言い分は、まことに自分勝手で見苦しい。
(2)電力会社は、経産省を使いながら毎夏恒例の「電力不足」キャンペーンを必死になって展開している。原発再稼働を認めないと、電力不足でとんでもないことになるぞ・・・・という脅しだ。
原発の必要性をアピールして再稼働につなげる。もしそれが遅れた場合でも、料金値上げの口実に使う・・・・という作戦だ。
(3)しかし、原発が動かなくて電力会社の経営が苦しくなると値上げする・・・・という理屈が、なぜ成り立つのか。
電力会社は、原発が動かないのは天災のような不可抗力だと考えているが、それはまったく間違いだ。
世界中で原発の安全規制が年々厳しくなる中、日本だけがその規制強化を怠ってきた。そのサボタージュの推進役が電力会社だった。そのように、班目春樹・原子力安全委員会委員長(当時)が証言している。みんなで集まって、日本だけ規制強化の適用を逃れる方法を検討していた、というのだ。再稼働審査の「遅れ」の主因は、次のように、ひとえに電力会社の対応にある。
(a)原子力安全・保安院は、中越沖地震後に全原発に免震棟の建設を指示したが、実行したのは東電の福島第一など、ごく一部の原発だけだった。やるべきことを、電力会社がいかに怠ってきたかがわかる。
(b)今日電力会社が直面している安全規制の強化は、遅すぎたものだ。しかも、電力会社は基準の甘さを知りながら、対応を怠っていたのだ。
(c)さらに、原子力規制委員会の「想定する地震の大きさを見直せ」という指示を、電力会社は談合して無視した。
(4)ふた言めには、原発推進は国策だった、というが、強制ではない。
6月の東電の電力料金は沖縄電力の料金を超えることになったが、沖縄電力は原発を保有していない。他の電力会社は、沖縄電力のように原発なしで進めばよかったが、建設コストが高い原発を作ったほうがより大きな利益が出るという総括原価方式の甘い蜜に釣られて、とんでもない間違いを犯したのだ。
(5)すべて電力会社の責任だ。
(a)原発を選んだのも、
(b)安全対策を怠ったのも、
(c)新たな基準への対応が遅れたのも、
すべて電力会社の責任だ。少なくとも消費者にその責任はない。
それなのに、原発再稼働ができないことを理由に料金値上げを求めるのは筋違いもはなはだしい。
北海道電力、九州電力、関西電力などが経営難に陥っているが、値上げによる救済ではなく、電力会社が自らの責任で対応すべきだ。
(6)(5)は何を意味するか。破綻処理だ。
破綻処理により、経営者の責任が問われる。多くの場合、クビだ。
株は紙切れ。株主責任だ。
銀行の債権も大幅カット。貸手責任だ。
電力会社は身軽になり、一気に再生する。
被災者への賠償責任の問題もないから、東電のような難しさはない。
電力会社の場合、地域独占のおかげで顧客は逃げないから、最も再生しやすい。ANAと競争するJALより容易だ。むろん、破綻処理しても電力が止まる心配はない。
(7)米国では、ごく普通に大手電力会社が破綻処理される。4月も、エナジー・フューチャー・ホールディングス(テキサス州)が負債4兆円を抱えて米連邦破産裁判所に破産法第11条の申し立てを行った。
電力破綻の引き金は経産省に引いてもらおう。料金値上げを認めなければ破綻につながる。経産省は、電力会社と癒着し、福島の人々や国民に迷惑をかけてきた。一度くらい国民のための政策を実施してもらいたい。
□古賀茂明「電力会社「値上げ救済」の愚 ~官々愕々第109回~」(「週刊現代」2014年5月31日号)
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【参考】
「【古賀茂明】竹富町「教科書問題」の本質 ~原発推進教科書~」
「【古賀茂明】安部総理の「11本の矢」 ~戦争国家への道~」
「【古賀茂明】理研は利権 ~文科官僚~」
「【古賀茂明】「武器・原発・外国人」が成長戦略 ~アベノミクスの今~」
「【古賀茂明】マイナンバーを政治資金の監視に ~渡辺・猪瀬問題~」
「【古賀茂明】東電を絶対に潰さずに銀行を守る ~新再建計画~」
「【古賀茂明】「避難計画」なき原発再稼働」
「【古賀茂明】「建設バブル」の本当の問題 ~公共事業中毒の悪循環経済~ 」
「【古賀茂明】安倍政権の戦争準備 ~恐怖の3点セット~」
「【原発】【古賀茂明】利権構造が完全復活 ~東日本大震災3年~」
「【古賀茂明】アベノミクスの限界 ~笑いの止まらない経産省~」
「【古賀茂明】労働者派遣法改正前にすべきこと」
「【古賀茂明】時代遅れな、あまりにも時代遅れな ~安部政権のエネルギー戦略~」
「【古賀茂明】森元首相の二枚舌 ~オリンピックの政治的利用~」
「【古賀茂明】若者を虜にする「安部の詐術」 ~脱出の道は一つ~」