「月光とピエロ」 堀口大学
月の光の照る辻に
ピエロさびしく立ちにけり
ピエロの姿 白ければ
月の光に ぬれにけり
あたりしみじみ見まわせど
コロンビ-ヌの かげもなし
あまりにことの 悲しさに
ピエロは 涙流しけり
堀口大學は大正4年、父の赴任先マドリッドにあり、当時すでに名声を博し
ていた女流画家・詩人でもあった、マリー・ローランサンと出会い、交遊を深
めていく。
大学には淡い恋心が芽生えるが、年上で夫ある身の上流夫人であり、
元々も叶わぬ恋、若い大學(23歳)のこの思いは、所詮はピエロのようなも
の・・・この悲恋を大正8年、処女詩集「月光とピエロ」のポエムとして発刊さ
れている。