「天神様の祟りがある」、SNS上で今、こうした声が上がっている。先週末、福岡市の再開発事業「天神ビッグバン」の一環として、天神駅の東部エリアも再開発の方向で調整が進められていることがわかった。そこには、天神の地名の由来となった「水鏡天満宮」が含まれており、神社の移設が検討されている。この報道に対し、不安や疑問の声が上がっているのだ。
「水鏡天満宮」は、天神様こと学問の神様である菅原道真が祀られている。901年、太宰府に左遷される道中、博多に着いた菅原道真が今泉辺りを流れていた四十川(現在の薬院新川)の水面に映った自身のやつれた姿を見て嘆き悲しんだ。そこで、庄村(現在の今泉)に容見(すがたみ)天神が建てられた。江戸時代(1612年)、福岡藩初代藩主・黒田長政によって水鏡天満宮として、現在の場所に移されたが、以来、「水鏡天満宮」は福岡城の鬼門除けとして福岡の地を守ってきた。このときの移転が天神の地名の由来となったのである。
西鉄などの地権者は近く、福岡市に計画概要を提出するようだが、一体、天神様を何処へ移転させるつもりなのか。それにしても、天神は市民の手から完全に離れ、後戻りできないところまで来てしまった。きちんと都市計画もされず、容積率緩和制度を活用したいがために、性急に建替えを進めようとしているから恐ろしい。このツケはいつか市民に圧し掛かってくるに違いない。本人は想像できないと思うが、高島宗一郎氏は、天神様を移転させた張本人として、歴史に残ることになるだろう。
撮影日:2022.12.01
解体が進むイムズ(愛眼ビルは現状維持)
ここは「(仮称)天神1-7計画」へ。(2023年7月着工、2026年3月竣工予定)
福ビルがあったところにクレーン
ここは「(仮称)新福岡ビル」へ。(2021年12月着工、2024年12月竣工予定)
これまで提出された計画概要(福岡市天神ビッグバンの資料に水鏡天満宮の位置を記入)
11月30日、新天町商業協同組合や福岡パルコ、西鉄などが一体で再開発する計画概要を市に提出。12月8日には、イオン九州と日本郵便が、イオンショッパーズ福岡と福岡中央郵便局を連携して段階的に建て替える計画概要を市に提出した。これで東西南北すべてのエリアでビルの建て替えが進むことになる。まさに、大震災を彷彿させるような光景になるだろう。
ところで、5年前、樗木九大名誉教授(都市計画)は、西日本新聞の取材で天神ビッグバンについて、福岡の歴史と伝統を生かしながら街づくりを進める必要性を述べておられたが、こうした現状をどう見ておられるのだろう。一度、お聞きしてみたい。(樗木教授が福岡アジア都市研究所の理事長をされていた時、私は市民研究員だったのでお話したことはある)
東部エリアを上空からみたところ(写真:毎日新聞より)
毎日新聞によると、どうやら、天神様は毎日福岡会館(白い建物)の跡地(那珂川沿い)へ移設されるらしい
菅原道真公もまさか400年後に移転させられるとは思われなかっただろうな、、
《西鉄など計画概要書提出~天神様は那珂川沿いへ 2022.12.23更新》
西鉄など再開発準備組合は23日、天神一丁目14・15番街区の計画概要を福岡市へ提出した。報道されていたとおり、天神様(水鏡天満宮)は、方角を変えずに那珂川沿いへ再配置されるようだ。
天神一丁目15・16番街区の計画概要公表について(2022年12月23日)
パースどおりだとすれば、緑地部分はかなり広くなるようだけど
《関連記事》
・天神ビッグバン 水鏡天満宮など一帯再開発へ 西鉄など計画概要書提出(西日本新聞 2022.12.23)
・福岡市中心部で「再開発計画ラッシュ」天神駅東側でも浮上~優遇期限が迫る(RKBニュース 2022.12.12)
・天神東部地区で大規模再開発へ 水鏡天満宮を移設、複合ビル建設(毎日新聞 2022.12.10)
・「天神ビッグバン」 水鏡天満宮含む一帯も再開発へ(NHK福岡ニュース 2022.12.10)
《参考資料》