陥没事故現場付近の岩盤の補強方法について。当初はトンネル上部の地盤を固める薬剤を地表から注入する予定になっていた。ところが、トンネルを掘り進めていくうちにトンネル上部の岩盤が当初の見込みより薄いことが分かった。そこで、今年8月の福岡市地下鉄七隈線建設技術専門委員会(委員長:樗木武九大名誉教授)で、トンネルの高さを約1メートル低くすることが決まった。その際、補強方法を薬剤注入から鋼管打設へ変更することも決まった。福岡市は変更理由について、大成建設JVから「地表近くの(インフラなどの)埋設物の配置が複雑なため、地上から薬剤を注入するのが難しい」と説明があったためとしている。
以上は昨日報道された内容だが、設計変更については、日経コンストラクション(土木専門雑誌)が事故後、詳しく伝えていた。そこに、設計変更のポイントは3つあると書かれている。1つ目は、トンネルの天端の位置を1m下げて掘削断面を縮小したこと。2つ目は、先受け鋼管の長さを当初の設計よりも短くしたこと。現場では、先受け鋼管からウレタンなどを含む薬液を注入する「AGF工法」と呼ぶ工法が採用され、周辺の地山を補強していた。先受け鋼管を短くすれば、トンネル天端近くの地山を支える力が弱まる。そこで設計変更では、トンネルの側面から横断方向に打つロックボルトとサイドパイルの長さを延長し、トンネルの変形を抑えていた。 おそらくは今回の報道に関係するところだと思われるが、ここでは薬剤注入から鋼管打設への変更については書かれていない。いずれにしても、この2つ目の設計変更が崩落の引き金になった可能性は高い。3つ目は、当初の設計では全断面を一度に掘削する方針だったところを、小径の先進導坑を掘ってから拡幅する工法に変更したこと。 最後に、それでも事故は防げなかったと締めくくっている。(下図参照)
今後、事故直前の設計変更は重点的に調査されるものと思われるが、昨日の国土交通委員会で、福岡市がこれらの設計変更届けを国交省に提出していなかったことが明らかになった。しかも、国交省は事後報告を容認していた。一番難所と言われるところの設計変更が検証されることもなく工事は進められ、大陥没事故は起きた。死傷者こそ出なかったものの、出ていてもおかしくない状態だった。福岡市や事業者のみならず、国の責任は重大だ。この問題について、今月14日からはじまる福岡市議会12月定例会で、中山議員が質問する予定になっている。果たして、市はどのような言い訳をするのか。
以下、日経コンストラクションより。
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