辰巳八景山本 一力新潮社このアイテムの詳細を見る |
♪「辰巳八景」山本一力著 新潮文庫(上の表紙は単行本)
実質今年の読書第一冊目。相変わらず遅読だね・・・。
深川・門前仲町辺りで数代に渡って商いを続ける江戸商人や職人を中心とした「人情話」
医学も科学も、現代とは較べようもなく遅れていた時代だ。
江戸名物の大火、病、不景気などにより商売を続けていくのも大変だ。
それでも江戸の庶民は一生懸命前向きに生きてゆく・・・。
筆者は長唄の「巽(辰巳)八景」から材を得て物語を紡いだという。
長唄に基づいた「永代橋帰帆」「永代寺晩鐘」「仲町の夜雨」「木場の落雁」「仲町の晴嵐」「州崎の秋月」「やぐら下の夕照」「石場の暮雪」の8つの短編からなる。
いやぁ、どの話も胸に染みる。
江戸の庶民、商人、職人の心意気や優しさ、粋がなんとも言えず良いなぁ。
大石主税の切腹前の若者らしい真の姿に接し、「人の心の痛み」に気づくろうそく問屋の主(永代橋帰帆)。
老舗の煎餅屋の娘と永代寺の僧侶との叶うはずもない淡い恋(永代寺晩鐘)。
夫婦で心から望んでも子が出来ず、妾に子を産んでくれるよう頼み込む鳶宿の女将(仲町の夜雨)などなど・・・。
中でも最終話の「石場の暮雪」は泣けた。
履物職人の一人娘に一目惚れした売れない絵草子作者の一途な思いと、父親の大商いや婿取りを気に掛け、その気持ちを受け切れずにいる娘・・・。
この最後の話は、御徒町のガード下で一人で夕飯を食べながら(呑みながら)読んでいたが
最後のページで胸がいっぱいになり涙が溢れてしまった。
いいなぁ~、江戸の庶民は貧しくても、今の僕たちよりイキイキと幸せに過ごしているなぁ~。
山本一力という人は、こういう話が本当に上手だ。最高だね!
この物語には頻繁に門前仲町、永代橋、富岡八幡宮、永代寺などが出てくる。
門前仲町は、叔父が木場に住んでいたので若い頃からよく駅は利用した。
でも街そのものを散策したことはあまりなかった。
4~5年前に仕事で門仲に行くことがあって、時間が余ったので富岡八幡宮と深川不動尊を探索してみた。
あんなに立派な神社とお寺だとは思わなかった。
広く鬱蒼とした境内、歴史を感じさせる社(やしろ)など・・・。
門前町も賑やかなものだ。
「あぁ~、この境内を鬼の平蔵や秋山小兵衛、大治郎が歩き回ったのか(?)」と思うと、感慨深いものがあった。
深川を舞台とした時代小説を読んで、江戸の古地図を見て、そしてこの辺を散歩する。
そして帰りにこの辺りの老舗料理屋で一杯・・・。
どうです、楽しそうでしょう?
みなさん、そのうちご一緒いたしましょう!