上図は、旅リョの古代文字である。甲骨文は、旗がなびく棹を持った人のあとに人がついている形。金文第一字も同じ形だが、第二字は下に車が描かれており軍の行進を表している。篆文から「㫃(はた)+从(人がしたがう)」の形になり、現代字で旅となった。古代文字の変遷から分かるように、甲骨文・金文の旗がなびく形は、篆文で「㫃」、現代字では「方𠂉」に変化した。
現代字で旗のかたちは「方𠂉」となっているため、ほとんどの人は気付かないが、これは旗のしるしなのである。結局、「方𠂉」は旗を表す部首の「たれ」の役割をしている。しかし、部首にならずに方部のなかで埋もれている。方𠂉を見付けたら、「これは旗のしるしだ!」と見つけてあげよう。
部首の役割をしている㫃(方𠂉)
旅 リョ・たび 方部
解字 「方𠂉(はた)+二人の人の変形」 で、旗をもった人のあとに人がついていく形。旗ざおをもった人に導かれて旅をすること。また、軍旗の下に隊列を組んで出行する軍をいう。
意味 (1)たび(旅)。たびをする。「旅行リョコウ」「旅館リョカン」「旅路たびじ」 (2)軍隊。「旅団リョダン」(二、三個連隊からなる陸軍部隊の編成単位)
旗 キ・はた 方部
解字 「方𠂉(はた)+其キ(四角い)」 の会意形声。其キは箕み のかたちで四角いイメージがある。それに方𠂉(はた)ついた旗は四角い旗の意。
意味 はた(旗)。はたじるし。「旗手キシュ」「校旗コウキ」「旗艦キカン」(司令官が乗っている軍艦)
遊 ユウ・あそぶ 辶部
解字 「辶(ゆく)+方𠂉(はた)+子(こども)」 で、子供が旗のまわりで遊んであるくこと。
意味 (1)あそぶ(遊ぶ)。楽しむ。「遊戯ユウギ」「遊興ユウキョウ」(遊び興ずる)「遊山ユサン」(山野に遊びに出る) (2)旅をする。勉学に他国へ行く。「漫遊マンユウ」(心のままに諸国をめぐり旅をする)「遊学ユウガク」(よその土地で学問をする)
族 ゾク・やから 方部
解字 「方𠂉(はた)+矢(や)」 の会意。旗の下にたくさん矢をならべた形。旗は氏族(同じ血統の者)の旗であり、また、氏族軍の象徴で矢は誓約するときに用いる。族は氏族旗のもとで誓約する氏族の構成員の軍士・族人をいう[字統]。
意味 (1)やから(族)。みうち。血つづき。「家族カゾク」「親族シンゾク」 (2)家柄。血統上の身分。「王族オウゾク」「豪族ゴウゾク」「貴族キゾク」 (3)なかま。同類。「民族ミンゾク」「語族ゴゾク」「カミナリ族」
旋 セン・めぐる 方部
解字 「方𠂉(はた)+疋(あし・あるく)」 の会意。旗の周りをあるくこと。また、旗を持ってあるくこと。
意味 (1)めぐる(旋る)。ぐるぐるまわる。「旋回センカイ」 (2)相手との間を行き来する。とりもつ。「斡旋アッセン」「周旋シュウセン」 (3)かえる。「凱旋ガイセン」
施 シ・セ・ほどこす 方部
解字 「方𠂉(はた)+也(うねる)」 の会意。也はヘビの象形で、ヘビがうねるイメージがある。施は、うねりながらなびく旗のこと。旗をなびかせて人々を指揮して動かし、諸事をおこなうこと。また、「ほどこす」(必要な処置をとる)意から「めぐみ与える」意が派生した。
意味 (1)旗がなびく。 (2)実行する。おこなう。ゆきわたらせる。しく。「実施ジッシ」 (3)ほどこす(施す)。必要な処置をとる。「施策シサク」(ほどこすべき対策)「施錠セジョウ」(錠をかける) (4)ほどこす(施す)。めぐみ与える。「布施フセ」(施しめぐむ)「施薬セヤク」(薬をほどこす)
旃 セン・はた 方部
解字 「方𠂉(はた)+丹(あかい)」の会意形声。赤い色の旗をいう。また、氈セン(毛織物)に通じ、毛おりものの意でも使われる。
意味 (1)はた(旃)。無地の赤い旗。「旃旌センセイ」(はた。旃も旌も、はたの意) (2)毛おりもの。「旃毛センモウ」(毛織の衣服の毛)
旄 ボウ 方部
解字 「方𠂉(はた)+毛(け)」の会意形声。旄ボウはヤクの毛をまとめて丸くした飾りを旗竿の上から5つほど連続して吊りさげた旗。皇帝の使節に任命の印として与えられた。この連続した丸い飾りを星になぞらえ、連続して数個がまとまる星であるスバルに当て、中国で旄頭星ボウトウセイともよばれた。また、同音の昴ボウがスバル星に当てられる。
旄ボウを持つ使節
意味 (1)はたかざり。さしずばた。「羽旄ウボウ」(雉の羽とヤクの毛を、竿の先端に飾りつけた旗)「旄頭星ボウトウセイ」(スバル星) (2)ヤク。からうし。「旄牛ボウギュウ」(ヤクの別称)
<紫色は常用漢字>
バックナンバーの検索方法
※一般の検索サイト(グーグル・ヤフーなど)で、「漢字の音符」と入れてから、調べたい漢字1字を入力して検索すると、その漢字の音符ページが上位で表示されます。