「執シツ」と「埶ゲイ」は右側の字が丸で共通する。丸は丸い意でなく、人がひざまずいて両手を出しているさまで丮ケキという字が変化したかたち。では、人が両手を出すかたちの丮ケキ(=丸)に対して、その左辺にある幸と坴には一体どんな意味があるのだろうか。
執 シツ <しっかりと捕まえる>
執 シツ・シュウ・とる 土部
解字 甲骨文字から篆文まで、「幸(手かせ)+丮ケキ(人が両手を出してひざまずいた形)」 の会意。幸は 「手かせ」 の形。(単独では手かせをされるのを免れて幸いの意になる)。丮ケキは後に丸となった。両者を合わせた執シツは、坐って手を出している人の両手に手かせをはめ、しっかりと捕まえたさま。罪人をとらえるが原義。しっかりと罪人をとらえる意から、「とる・手にとる」、捕まえて放さないことから「こだわる・しつこい」意となる。
意味 (1)とる(執る)。手にとる。とり行う。「執刀シットウ」「執筆シッピツ」 (2)あつかう。つかさどる。「執事シツジ」 (3)こだわる。しつこい。「執念シュウネン」「固執コシツ・コシュウ」「執心シュウシン」
イメージ 「しっかりと捕まえる」 (執・摯・蟄)
音の変化 シツ:執 シ:摯 チツ:蟄
しっかりと捕まえる
摯 シ 手部
解字 「手(て)+執(しっかりと捕らえる)」 の会意形声。手でしっかりと捕らえること。転じて、しっかりと心に受け止めること。
意味 (1)とる。もつ。つかむ。 (2)まこと。まじめ。「真摯シンシ」「摯実シジツ」(まじめで誠実)
蟄 チツ・かくれる 虫部
解字 「虫(むし)+執(しっかりと捕らえる)」 の会意形声。虫が捕らえられたように土の中で冬ごもりすること。また、それを人に移していう。
意味 かくれる(蟄れる)。虫が地中にとじこもる。「蟄虫チツチュウ」(地中で冬籠りする虫)「啓蟄ケイチツ」(冬籠りの虫がはい出ること。啓は始める意)「蟄居チッキョ」(外出しないで家にこもること)
埶 ゲイ・セイ <人が草木を育てる>
埶 ゲイ・セイ 土部
解字 甲骨文は両手で苗木をもってひざまずく人の形で、木を植え育てる様子を表す。金文は左辺が、木の下に土を加えた形。篆文は、「坴(土の上に木がある形の変形字)+丮ケキ(人が両手を出した形)」の会意。ひざまずいた人が両手を出して土の上の木を手入れして育てている形。いずれも、「植物に手を加えて育てる」意となる。現代字は、篆文の右辺が、丮⇒丸に変化した。
※埶ゲイの左辺の「坴」は、陸の右辺と同じ形だが、成り立ちの違う字。「陸リク」を参照。
意味 (1)うえる。草木をうえる。 (2)いきおい。
イメージ 「草木を植え育てる」 (芸・熱・勢)
音の変化 ゲイ:芸 セイ:勢 ネツ:熱
草木を植え育てる
芸[藝] ゲイ・わざ・うえる 艸部
解字 旧字は 「艸(くさ)+埶(草木を植え育てる)+云(=耘ウン。雑草を取り除く)」 の会意形声。人が植物を植え、雑草を取り除いて草木を育てる意。のち、園芸の意味から転じて、人が身につけたさまざまな「わざ」の意になった。新字体は旧字から埶を省いた芸。これにより、この字の基本となる音符部分がすっぽり抜けてしまった。
意味 (1)わざ(芸)。身につけたわざ。技能。学問。「芸術ゲイジュツ」「芸能ゲイノウ」「芸苑ゲイエン」(学芸の世界) (2)うえる(芸える)。草木を植え育てる。「園芸エンゲイ」「農芸ノウゲイ」
勢 セイ・いきおい 力部
解字 「力(スキ)+埶(草木を植え育てる)」 の会意形声。力は土を掘り起こすスキの象形。勢は、スキで土地を掘り起こし、草木を育てること。すると草木は「いきおいよく」成長する。また、植物が成長するいきおいを、人に例えていう。
意味 (1)いきおい(勢い)。さかんな力。「勢力セイリョク」「優勢ユウセイ」 (2)ようす。ありさま。「形勢ケイセイ」「情勢ジョウセイ」 (3)むれ。人の集まり。「軍勢グンゼイ」
熱 ネツ・あつい 灬部
解字 「灬(火)+埶(草木を植え育てる⇒育てて大きくする)」 の会意。火を大きくしてゆくこと。草木を植え育てるように、たきぎに火をつけて、火をおおきくしてゆくこと。火が発するネツ(温かさやあつさ)をいう。初期の火は温かく、大きくなった火は熱い。
意味 (1)ねつ(熱)。ほてる(熱る)。人の体温およびそれを超える温かさ。「平熱ヘイネツ」「微熱ビネツ」「発熱ハツネツ」「熱病ネツビョウ」「熱帯ネッタイ」 (2)あつい(熱い)。高温で手を触れられない。「熱湯ネットウ」「灼熱シャクネツ」(焼けて熱い) (3)あつい(熱い)。夢中になる。心をうちこむ。「熱心ネッシン」「熱意ネツイ」「熱狂ネッキョウ」
<紫色は常用漢字>
参考 音符「執シツ」へ
音符「埶ゲイ」へ
執 シツ <しっかりと捕まえる>
執 シツ・シュウ・とる 土部
解字 甲骨文字から篆文まで、「幸(手かせ)+丮ケキ(人が両手を出してひざまずいた形)」 の会意。幸は 「手かせ」 の形。(単独では手かせをされるのを免れて幸いの意になる)。丮ケキは後に丸となった。両者を合わせた執シツは、坐って手を出している人の両手に手かせをはめ、しっかりと捕まえたさま。罪人をとらえるが原義。しっかりと罪人をとらえる意から、「とる・手にとる」、捕まえて放さないことから「こだわる・しつこい」意となる。
意味 (1)とる(執る)。手にとる。とり行う。「執刀シットウ」「執筆シッピツ」 (2)あつかう。つかさどる。「執事シツジ」 (3)こだわる。しつこい。「執念シュウネン」「固執コシツ・コシュウ」「執心シュウシン」
イメージ 「しっかりと捕まえる」 (執・摯・蟄)
音の変化 シツ:執 シ:摯 チツ:蟄
しっかりと捕まえる
摯 シ 手部
解字 「手(て)+執(しっかりと捕らえる)」 の会意形声。手でしっかりと捕らえること。転じて、しっかりと心に受け止めること。
意味 (1)とる。もつ。つかむ。 (2)まこと。まじめ。「真摯シンシ」「摯実シジツ」(まじめで誠実)
蟄 チツ・かくれる 虫部
解字 「虫(むし)+執(しっかりと捕らえる)」 の会意形声。虫が捕らえられたように土の中で冬ごもりすること。また、それを人に移していう。
意味 かくれる(蟄れる)。虫が地中にとじこもる。「蟄虫チツチュウ」(地中で冬籠りする虫)「啓蟄ケイチツ」(冬籠りの虫がはい出ること。啓は始める意)「蟄居チッキョ」(外出しないで家にこもること)
埶 ゲイ・セイ <人が草木を育てる>
埶 ゲイ・セイ 土部
解字 甲骨文は両手で苗木をもってひざまずく人の形で、木を植え育てる様子を表す。金文は左辺が、木の下に土を加えた形。篆文は、「坴(土の上に木がある形の変形字)+丮ケキ(人が両手を出した形)」の会意。ひざまずいた人が両手を出して土の上の木を手入れして育てている形。いずれも、「植物に手を加えて育てる」意となる。現代字は、篆文の右辺が、丮⇒丸に変化した。
※埶ゲイの左辺の「坴」は、陸の右辺と同じ形だが、成り立ちの違う字。「陸リク」を参照。
意味 (1)うえる。草木をうえる。 (2)いきおい。
イメージ 「草木を植え育てる」 (芸・熱・勢)
音の変化 ゲイ:芸 セイ:勢 ネツ:熱
草木を植え育てる
芸[藝] ゲイ・わざ・うえる 艸部
解字 旧字は 「艸(くさ)+埶(草木を植え育てる)+云(=耘ウン。雑草を取り除く)」 の会意形声。人が植物を植え、雑草を取り除いて草木を育てる意。のち、園芸の意味から転じて、人が身につけたさまざまな「わざ」の意になった。新字体は旧字から埶を省いた芸。これにより、この字の基本となる音符部分がすっぽり抜けてしまった。
意味 (1)わざ(芸)。身につけたわざ。技能。学問。「芸術ゲイジュツ」「芸能ゲイノウ」「芸苑ゲイエン」(学芸の世界) (2)うえる(芸える)。草木を植え育てる。「園芸エンゲイ」「農芸ノウゲイ」
勢 セイ・いきおい 力部
解字 「力(スキ)+埶(草木を植え育てる)」 の会意形声。力は土を掘り起こすスキの象形。勢は、スキで土地を掘り起こし、草木を育てること。すると草木は「いきおいよく」成長する。また、植物が成長するいきおいを、人に例えていう。
意味 (1)いきおい(勢い)。さかんな力。「勢力セイリョク」「優勢ユウセイ」 (2)ようす。ありさま。「形勢ケイセイ」「情勢ジョウセイ」 (3)むれ。人の集まり。「軍勢グンゼイ」
熱 ネツ・あつい 灬部
解字 「灬(火)+埶(草木を植え育てる⇒育てて大きくする)」 の会意。火を大きくしてゆくこと。草木を植え育てるように、たきぎに火をつけて、火をおおきくしてゆくこと。火が発するネツ(温かさやあつさ)をいう。初期の火は温かく、大きくなった火は熱い。
意味 (1)ねつ(熱)。ほてる(熱る)。人の体温およびそれを超える温かさ。「平熱ヘイネツ」「微熱ビネツ」「発熱ハツネツ」「熱病ネツビョウ」「熱帯ネッタイ」 (2)あつい(熱い)。高温で手を触れられない。「熱湯ネットウ」「灼熱シャクネツ」(焼けて熱い) (3)あつい(熱い)。夢中になる。心をうちこむ。「熱心ネッシン」「熱意ネツイ」「熱狂ネッキョウ」
<紫色は常用漢字>
参考 音符「執シツ」へ
音符「埶ゲイ」へ