漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符 「月ゲツ」 と 「夕セキ」 <三日月をかたどる> 「汐セキ」「夙シュク」

2018年05月15日 | 漢字の音符
「月ゲツ」と「夕セキ」は、ともに三日月をかたどった字である。古代文字は両者とも同じ形をしている。篆文から形がかわり意味も分かれた。
 夕方の三日月

    ゲツ <つき>
 ゲツ・ガツ・つき  月部

解字 三日月を描いた象形。中の点は日と同じく実体のあることを示したもの。三日月だけでなく、すべての月齢の「つき」を表す。月は部首となるだけで音符にならない。
意味 (1)つき(月)。「満月マンゲツ」「月光ゲッコウ」 (2)としつき。一年を十二分した期間。「年月ネンゲツ」「月給ゲッキュウ」 (3)七曜の一つ。「月曜日ゲツヨウビ
参考 月は部首「月つき」になり月の意味を表すが、金文第2字が肉の字と同形のため部首「月にくづき」になり、肉や肉体の一部分などを表す。また舟の形を月にかえた部首「月ふなづき」となり、舟やうつわの意味を表す。常用漢字は月の3種類の部首を合わせて50字ある(第9位)。約14,600字を収録する『新漢語林』では273字が収録されている。常用漢字50字は以下の通りであるが、本来の月でなく、圧倒的に「にく月」が多い。
つき (5字)
 ゲツ・つき(部首)
 ロウ・ほがらか(月+音符「良リョウ」)
 ボウ・のぞむ(月+王+音符「亡ボウ」)
 チョウ・あさ(月+艸(上下に分離)+日の会意)
 (月+音符「其キ」)
  このうち、朝は音符になる。
にく月 (43字)肉や肉体の一部分などを表す。
 ユウ・ある(月+音符「又ユウ」)
 キ・はだ(月+音符「几キ」)
 ショウ・にる(月+音符「小ショウ」)
 チュウ・ひじ(月+音符「寸スン」)
 カン・きも(月+音符「干カン」)
 コ・また(月+音符「殳シュ」)
 (月+音符「支シ」)
 ケン・かた(月+戸コの会意)
 ホウ・あぶら(月+音符「方ホウ」)
 ハイ(月+音符「市ハイ」)
 タン(月+音符「旦タン」)
 ハイ・せ(月+音符「北ホク」)
 タイ・はらむ(月+音符「台タイ」)
 ホウ・えな(月+音符「包ホウ」)
 ドウ(月+音符「同ドウ」)
 キョウ・むね(月+音符「匈キョウ」)
 シ・あぶら(月+音符「旨シ」)
 キョウ・おびやかす(月+音符「劦キョウ」)
 キョウ・わき(月+音符「劦キョウ」)
 キャク・あし(月+音符「却キャク」)
 ダツ・ぬぐ(月+音符「兌エツ」)
 ノウ(月+音符「𡿺ノウ」)
 ジン(月+音符「臤ケン」)
 ワン・うで(月+音符「宛エン」)
 シュ・はれる(月+音符「重ジュウ」)
 チョウ・はらわた(月+音符「昜ヨウ」)
 フク・はら(月+音符「复フク」)
 セン・すじ(月+音符「泉セン」)
 マク(月+音符「莫ボ」)
 シツ・ひざ(月+音符「桼シツ」)
 ボウ・ふくらむ(月+音符「彭ホウ」)
 ゼン(月+音符「善ゼン」)
 オク(月+音符「意イ」)
 ゾウ(月+音符「蔵ゾウ」)
 ヨウ・こし(月+音符「要ヨウ」)
 ヒ・こえる(月+巴の会意)
 コウ・うなずく(月+止の会意)
 イク・そだつ(月+𠫓(生まれ出た子)の会意)
 (月+田の会意)
 ミャク(月+𠂢ハイの会意)
 セキ・せ(月を含む会意)
 フ・はだ(月+盧の略体)
 ノウ・よく(月を含む象形)
  このうち会意の胃・脊セキ・能ノウは音符となる。
ふな月 (2字)舟やうつわの意味を表す。
 服フク・したがう(月(うつわ)+音符「𠬝フク」)
 朕チン・われ(月(うつわ)+音符「关ソウ」)

     セキ <ゆうがた>
 セキ・ゆうべ  夕部              


  上は夕、下は月
解字 三日月を描いた象形。甲骨文・金文とも月と同じ形であるが、篆文から月と夕の区別をするようになった。意味は、三日月の見える夕がたを示す。三日月は新月から三日目の月の意味で、日の入り後の西の空で見やすくなるため、夕方の意味になった。夕は部首となるが、音符ともなる。
意味 ゆうべ。ゆうがた。ひぐれ。「夕闇ゆうやみ」「夕日ゆうひ」「夕立ゆうだち」「旦夕タンセキ」(あさゆう。旦は朝の意)「七夕たなばた」(七月七日の夕に行われる星祭り)
参考 夕は部首「夕ゆう・ゆうべ」になり、夕方や夜の意味を表す。なお、金文第一字の形は肉と同じなので、肉の意味を表す場合もある。夕部は常用漢字で5字ある。主な字は以下のとおり。
夕方や夜の意味
 セキ・ゆう(部首)
 ヤ・よる(夕+亦エキの略体の会意)
 ム・ゆめ(夕を含む会意)
肉の意味
 ガイ・そと(夕+卜ボクの会意)
 タ・おおい(夕+夕の会意)
 カ・おびただしい(多+音符「果カ」)
  このうち、夜・夢・多は音符となる。

イメージ 
 「ゆうがた」
(夕・汐)
 「つき」(夙)
音の変化  セキ:夕・汐   シュク:夙

ゆうがた
 セキ・しお  氵部
解字 「 氵(海水)+夕(ゆうがた)」の会意形声。夕方におこる海水の満ち引き。
意味 しお(汐)。ゆうしお。ひきしお。「潮汐チョウセキ」(朝潮と夕汐。潮の干満)
※「潮」は朝のしおをいう。

つ き
 シュク・つとに  凡部

解字 甲骨文字は月に両手をのばして座る人の形(会意)。月に祈る形を表している。金文は「月+両手を出す人」、篆文は「夕+両手を出す人」の形。篆文の夕は夕方でなく月の意。夜のまだ明けやらぬうちから月を拝するさまで、早朝から(早くから)・早朝の意味を示す。現代字は「両手を出す人」の部分が「凡」に変化した「凡+夕」になった。
意味 (1)つとに(夙に)。はやく。(A)朝早く。「夙起シュクキ」(朝早く起きる)(B)むかしから。「夙志シュクシ」(早くから抱いていたこころざし)。(2)あさ。早朝。「夙夜シュクヤ」(朝早くから夜おそくまで。また、早朝) (3)地名。「夙川シュクガワ」(六甲山地から兵庫県西宮市南西部を南流し大阪湾に注ぐ川)
<紫色は常用漢字>

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