漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「面メン」<かおの表面>と「麺メン」「緬メン」

2019年04月03日 | 漢字の音符
    麺メンを書き直しました。
 メン・おも・おもて・つら  面部

解字 甲骨文は目の周りを線で囲った形で顔面を表している。転じて面会の意味にも使われる[甲骨文字辞典]。篆文は首(かしら)の略体に囲いをつけた形。現代字は面になったが、中央に目が残っている。顔面のほか仮面の意ともなる。
意味 (1)顔に付けるかぶり物。おめん。「仮面カメン」「能面ノウメン」「面具メング」(顔面を防護する武具) (2)おも(面)。おもて(面)。つら(面)。人の顔。「顔面ガンメン」「赤面セキメン」 (3)向き合う。「面談メンダン」「面会メンカイ」 (4)うわべ。「表面ヒョウメン
参考 メンは部首「面めん」になる。意味は顔を表す。常用漢字では面1字のみ。その他に、靨ヨウ・えくぼ(面+音符「厭エン」)・靤ホウ・にきび(面+音符「包ホウ」)などがあるが、非常にすくない。

イメージ 
 「かめん・かお」
(面) 
 「形声字」(麺・緬)
音の変化  メン:面・麺・緬

形声字
[麵・麪]メン・ベン  麦部
解字 麺は、篆文で「麪メン・ベン」と書かれており、これが正字である。後漢の[説文解字]は「麥(むぎ)の末(粉末)也(なり)。麥に从(従い)丏(メン・ベン)の聲(声)」と簡潔に記し、意味は麦(小麦)の粉で麦と丏メン・ベンの声(音符)から成る字だとしている。この説明から、麪は小麦粉を意味することが明らかになる(麦は大麦も意味するが、大麦は粒食したり麦芽として発酵させて利用し製粉しない)。
 では麦に丏メン・ベンをつけて何故麦の粉になるのだろうか?これについて[説文解字]は何も説明していないし、ほとんどの辞書は[説文]の説明を受け売りしているだけである。丏メン・ベンという字は、矢をさけるための低い壁とされ、身をかくす、見えないなどの意がある。粉体工学の故三輪茂雄氏は「粉(こな)と粒(つぶ)を見分ける視力の限界、すなわち目の解像力は大体10分の1ミリだ。このあたりが日常語の粒と粉を使い分ける境目であろう」としている(「粉(こな) ものと人間の文化史125」)。
 三輪氏の基準を援用して粉を定義すると「10分の1ミリ以下の粒には見えない(丏)もの」となり「麪メン・ベン」は「麥の粒には見えないもの、すなわち麥粉」ということになる。些かこじつけ的な解釈だが、丏メン・ベンを会意形声字として解字するとこうなる。
 楷書になり丏メン・ベンは同音の面メンに置き換えられ麵メン・ベンができた。そして第二次大戦後に新字体の「麺」が誕生したわけである。
意味 (1)むぎこ。小麦粉。「麺棒メンボウ」(水を加えてこねた小麦粉を押しのばす棒)「麺麭パン」(小麦粉を水でこねイーストを加え発酵させてから焼いた食品)「麺食メンショク」とは、中国で小麦粉でつくった食品の総称をいう。 (2)こねた小麦粉を手で引き延ばしたり、切って細長くした食品。「拉麺ラーメン」「冷麺レイメン」「素麺ソウメン」「刀削麺トウショウメン」(こねた小麦粉を片手に持ち、もう一方の手で持った刀で細く削りだす麺)
 メン・ベン  糸部
解字 「糸(いと)+面(メン)」の形声。メンは綿メン(長く続く・ほそい)に通じ、ほそく長い糸をいう。また、長く続く意から、「はるか」の意となる。
意味 (1)細い糸。 (2)はるか。遠い。「緬然メンゼン」(はるか遠いさま)「緬思メンシ」(はるかに思いやる) (3)「緬甸ビルマ・メンデン」とは、はるかな郊外の意で、古代の中国で西南の国を指した呼称。旧国名のビルマを指 した。現在の国名はミャンマー。中国では現在もミャンマーに緬甸を使っている。 (4)「緬羊メンヨウ」とは、ヒツジの別称。
<紫色は常用漢字>

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