漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「巣ソウ」<鳥のす> と 「卵ラン」

2019年10月01日 | 漢字の音符
  剿ソウを追加しました。
 ソウ・す  ツ部

解字 木の上の鳥の巣に雛のいる形の象形[字統]。鳥の「す」を表わす。新字体は、旧字上部の巛⇒ツに変化した。新字体で分解すると、「ツ(たくさんのヒナ)+田(すの本体)+木」となる。
意味 (1)す(巣)。鳥や動物の住む場所。すをつくる。すくう(巣くう)。「営巣エイソウ」「帰巣キソウ」 (2)かくれが。「巣窟ソウクツ」(悪者などの隠れ家) (3)あつまる。あつまる所。「卵巣ランソウ」(卵をつくる器官)「病巣ビョウソウ」(病に侵されている個所)

イメージ
 「鳥の巣」(巣)
 意味(2)の悪者の「隠れ家」(剿)
 「形声字」(勦)

隠れ家
 ソウ・ショウ・ほろぼす・かすめる  刂部
解字 「刂(かたな)+巢(隠れ家)」 の会意形声。隠れ家を襲い刀で切り、ほろぼすこと。
意味 (1)ほろぼす。ころす。「剿賊ソウゾク」(賊をころす)「剿滅ソウメツ」(ほろぼす)「剿絶ソウゼツ」(ほろぼして根絶やしにする) (2)かすめる(剿める)。「剿取ソウシュ」「剿襲ソウシュウ」(かすめとって自分の説とする)

 ソウ・ショウ・ほろぼす・かすめとる  力部
解字 「力(ちから)+巢(ソウ)」の形声。①剿ソウに通じ、ほろぼす意。②力を剿(かす)め取るので疲れる意。[説文解字]は、「勞(つかれ)る也(なり)。力に従い巢(ショウ)の聲(声)」とするが、多くは①の意で用いられる。
意味 (1)ほろぼす(勦ぼす)。ころす。「勦除ソウジョ」(ほろぼして取り除く)「勦討ソウトウ」(討ちほろぼす)「勦殄ソウテン」( 皆ごろしにして滅ぼす)(2)かすめとる(勦る)。「勦襲ソウシュウ」(他人の説を自分の説にする) (3)つかれる。「其れ以て民を勦(つか)れしむ也(なり)」(春秋伝・左伝)「勦民ソウミン」(民を疲れさせる)


    ラン <たまご>
 ラン・たまご  卩部ふしづくり       

解字 木の枝などに虫などのタマゴが産みつけられた形の象形。たまごを意味する。卵は象形なので本来は部首になる字だが、系列字がほとんどないので、卩セツ部になっている。苦しい分類である。
意味 (1)たまご(卵)。鳥・虫・魚などのたまご。「卵生ランセイ」「鶏卵ケイラン」「卵黄ランオウ」 (2)まだ一人前にならない人。「医者の卵」

イメージ  「たまご」(卵・孵)
音の変化  ラン:卵  フ:孵

たまご
 フ・かえる・かえす  子部
解字 「卵(たまご)+孚(だく)」の会意形声。卵をだいて、ひながかえること。卵という部首がないので、子が部首になっている。音符は孚
意味 かえる(孵る)。卵がかえる。かえす(孵す)。「孵化フカ」「孵卵器フランキ
<紫色は常用漢字>

※孵は、音符「孚フ」に属する字。参考のため重出した。音符「孚フ」を参照。

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