武藤里美 会員限定記事
北海道新聞 2025年2月3日 16:00
北方領土をテーマにした漫才を披露するアップダウンの竹森巧さん(左)と阿部浩貴さん=1日、札幌市中央区(富田茂樹撮影)
お笑いコンビ「アップダウン」の竹森巧さん(46)=渡島管内森町出身=、阿部浩貴さん(47)=札幌市出身=が7日の「北方領土の日」に合わせ、元島民らの思いを描いた漫才「ふるさと」を完成させました。旧ソ連による四島侵攻から今年で80年。高齢化などで元島民の人数が終戦時から約7割減った中、元島民らから島の記憶を聞き取って台本を練ったそうです。道産子芸人が新作ネタに込めた思いとは。
「1番近い歯舞群島の貝殻島は、(根室半島の)納沙布岬まで3.7キロですよ」
「僕んちからイオンまで5キロですからね。買い物に行くより近い」
1日に札幌市内で開かれた元島民や関係者向けのネタのお披露目会。2人は北方領土の位置関係や歴史、終戦までの生活をテンポの良い掛け合いで紹介した。
ただ1945年(昭和20年)8月の旧ソ連の侵攻の場面に入ると、2人の口調は一変。元島民の体験談を感情を込めて重々しく語った。笑いで始まり、深刻な展開に続く一般的な漫才とは一線を画す構成に、参加者約30人が次第に引き込まれていった。
アップダウンは結成29年のベテラン。15年ほど前に鹿児島県の知覧特攻平和会館を訪れたことをきっかけに「何かを伝えるお笑いをしたい」と考え、アイヌ民族や特攻隊、原爆など社会的なテーマに取り組む。
原爆を題材にした漫才を目にした千島歯舞諸島居住者連盟(千島連盟、札幌)の関係者が「北方領土について、関心がない人に知ってもらうきっかけをつくりたい」と依頼したのをきっかけに、今回のネタを作った。
「政治的で難しい問題」。北方領土問題をネタにすることに当初、2人は戸惑ったという。関係者から「不謹慎だ」と言われたこともあった。
それでも2人は「笑いがあるだけで、重いテーマでも最後まで見届けてもらえるのでは」と依頼を受諾。「批判を乗り越える作品をつくる」(竹森さん)と決意した。
2人は昨年8月から、道内外の元島民や元島民2世の計8人を取材。元島民が残した手記や当時の写真なども調べた。
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