BBC 2025年1月28日
安全保障への大型投資を発表したデンマークのトールス・ルンド・ポウルセン国防相(右)とグリーンランドのヴィヴィアン・モッツフェルト独立・外務相 REUTERS
デンマークは26日、自治領であるグリーンランドおよびフェロー諸島と協力し、北極圏の安全保障を強化するために146億クローネ(約3160億円)を投じると発表した。
この合意には、3隻の新しい北極船、高度な画像取得能力を備えた長距離ドローン(無人機)の拡充、人工衛星の運用強化が含まれている。
デンマークのトールス・ルンド・ポウルセン国防相は、「北極および北大西洋における安全保障と防衛に関して深刻な課題があることを認識しなければならない」と述べた。
この動きは、アメリカのドナルド・トランプ大統領がグリーンランドを取得したいと繰り返し述べているのを受けたもの。グリーンランドはデンマークの一部だが、広範な自治権を持つ。
トランプ大統領は就任前の1月初め、グリーンランド取得のために軍事力や経済力を行使する可能性について尋ねられた際、これを否定しなかった。
世界で最も人口が少ない地域であるグリーンランドには、約5万6000人が住んでおり、その多くは先住民イヌイットだ。
アメリカは長い間、グリーンランドに対して安全保障上の関心を持ってきた。第2次世界大戦でナチス・ドイツがデンマークを占領した後、アメリカはグリーンランドに侵攻し、軍事基地や無線局を設置した。それ以来、アメリカはこの地域で存在感を維持している。
グリーンランドは北米から欧州への最短ルートにあり、アメリカにとって戦略的に重要な位置にある。
近年では、グリーンランドの天然資源、特にレアアース(希土類)やウラン、鉄の採掘に対する関心が高まっている。
グリーンランドのヴィヴィアン・モッツフェルト独立・外務相は、新たな防衛支出を発表する声明で、「グリーンランドは脅威の変化する時代に突入している」と述べた。
「この部分的な合意により、グリーンランドおよびその周辺の安全を強化するための第一歩を踏み出したことをうれしく思う」
今年前半には、さらなる資金提供の発表があるとみられている。
デンマークは昨年12月にも、グリーンランドの防衛に約12億ポンドを費やすことを発表している。これには新しい船舶と長距離ドローン、追加の犬ぞりチームの調達が含まれている。
ポウルセン国防相は、この発表のタイミングを「運命の皮肉」と表現。トランプ大統領がグリーンランドの所有と支配がアメリカにとって「絶対的な必要性」であると述べた直後に行われたことを指摘した。
グリーンランドのムテ・エーエデ自治政府首相は、領土は売り物ではなく「グリーンランドはグリーンランドの人々のものだ」と述べてる。
デンマークのメッテ・フレデリクセン首相もトランプ大統領に対し、グリーンランドの未来を決めるのはグリーンランド自身であると伝えている。
トランプ大統領はそれ以降も、グリーンランド取得の意志を強調し続けており、欧州各国からもグリーンランドを脅かさないよう警告を受けているにもかかわらず、その姿勢を変えていない。