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アメリカの警察官はベテランになっても現場主義? 日米の刑事ドラマに登場する組織と階級を解説

2025-02-05 | 先住民族関連

 

リアルサウンド 2/4(火) 12:02

フィクションに登場する警察組織

 フィクションにはいくつか「定番」と呼ばれるジャンルがあるが刑事ドラマは、特にメジャーなものの一つだろう。

【写真】警察組織が1冊でわかる!『警察・スパイ組織 解剖図鑑』書影

 ミステリーは人気ジャンルだが、謎解きをするとなると探偵役が必要になる。古典でもミス・マープルやブラウン神父のような素人が探偵役を務めるケースがあるが、やはり定番は私立探偵と刑事だろう。特にテレビドラマだと組織に所属する刑事が主人公のケースは非常に多い。統計を取ったわけではないが、多くの人の印象が一致するのではないだろうか。警察は一つの組織であり、一人の刑事を主人公にすることもできるが、一つの組織であるため群像劇にして主人公の存在をぼかすこともできる。前者の例でわが国で記録的長寿作品になっているのが『相棒』(テレビ朝日系)、後者のパターンでアメリカの記録的長寿番組になったのが『ロー&オーダー』だ。『相棒』は記事執筆中の2025年2月初頭現在、シーズン23が放送中。『ロー&オーダー』は20年継続し、スピンオフ作品の一本である『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』は今だ継続でシーズン26が本国で放送中である。

 刑事ドラマはエンタメ大国のアメリカで、数えるのも億劫になるほど大量に製作されている。アメリカは国土が広大であり、行政区分も法律も文化も日本と大きく異なる。勿論、刑事司法制度も警察組織の組織構造も違う。日本に「輸入」されてきた刑事ドラマを見て、日本人が観るとモヤッとしてしまう描写がたびたび登場してしまうのは無理からぬことだろう。だが、それらについての解説を筆者はあまり見たことが無い。

 それについて疑問を持っていたのだが、ようやくそのモヤモヤを解消してくれる一冊が出版された。2024年12月6日に発売された、加賀山卓朗(著)、♪akira(著)、松島由林(イラスト)の『警察・スパイ組織 解剖図鑑』(エクスナレッジ)である。今までこういった内容の記事を書く場合は、アメリカの警察組織のHPを見ていたので助かった(結局、今回も補足のために見たが)。今回は同書のほか、いくつかの参考文献を交えつつ「フィクションに登場する警察組織(主にアメリカ)」について解説していく。同書以外の書籍については適宜、文中で紹介する。

アメリカの刑事ドラマと警察組織

 日本の警察組織はそのすべてが国家公安委員会の管轄下にある。その管轄下に、警察庁→管区警察局→各都道府県警→所轄署→交番というかなりわかりやすい階層構造ができている(ただし首都東京を管轄とする警視庁と、管轄地の面積が広い北海道警は管区警察局ではなく警察庁直接の監督下にある)。

 『相棒』は警視庁、『教場』は県警(神奈川県警)、『踊る大捜査線』シリーズは所轄署、『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』は交番の警察官が主人公である。

 分かりやすく上から下へと連なる日本の警察組織に対して、アメリカの警察組織はそれぞれが独立し、独自の管轄を持っている。大雑把には下記が主だった組織である。

・自治体警察

・郡警察

・州警察

・FBI(連邦捜査局:Federal Bureau of Investigation)

 日本の都道府県に対して、アメリカの行政区分は国→州(state)→郡(county)→市(city)などの各自治体、である。そのほかに、どこにも属さない首都ワシントンD.C(D.CはDistrict of Columbia=コロンビア特別区の略称)、定住海外領土のグアム、プエルトリコ、アメリカ領ヴァージン諸島、アメリカ領サモア、北マリアナ諸島、先住民族(ネイティヴ・アメリカン、インディアン)自治区などは各自が独自の警察組織を持っている。基本的には地域の事件は各自治体警察、各自治体の管轄地域を跨いで事件が起きると郡警察、郡警察の管轄地域を跨いで事件が起きると州警察、州を跨いで事件が起きるとFBIの出番になる。

自治体警察

 フィクション作品で最もよく登場するのは各自治体の警察組織だろう。『クリミナル・マインド』のように毎回舞台となる土地が変わる作品もあるが、基本的にはどこかしらの土地が作品の舞台であり、当然ながらその土地にはその土地の警察組織がある。

 自治体警察とは名前の通り、市町村などの各自治体を管轄とする警察組織である。その規模は自治体によりさまざまであり、5万人以上の職員を抱えるニューヨーク市警察(NYPD)から、署員数人の田舎の警察署まで規模も機能もさまざまである。

 テレビドラマでも映画でも小説でも、高頻度で登場するのは組織が大きいニューヨーク市警察、ロサンゼルス市警察、シカゴ市警察など大都市の警察組織である。すでに名前を挙げた『ロー&オーダー』はニューヨーク市警察の刑事と地方検事たちがレギュラーキャラクターで、スピンオフのうち『LAW & ORDER:LA』のみロサンゼルス市警察と地方検事が主人公になっている。『ロー&オーダー』とシェアードワールドになっている『シカゴ P.D.』はシカゴ市警察の刑事が主人公である。

  古典的な長寿シリーズ『刑事コロンボ』の主人公、コロンボ(ピーター・フォーク)はロサンゼルス市警の刑事である。ハリウッドのあるロサンゼルスはその土地柄上、ロケ地になることが全米三大都市の中でも特に多く、主だった長寿シリーズだと他に『クローザー』と主人公が交代した続編の『Major Crimes ~重大犯罪課』、マイクル・コナリーの小説『ハリー・ボッシュ』シリーズ及び、同作を原作にした『BOSCH/ボッシュ』もロサンゼルス市警察の刑事を主人公にしている。

 三大都市のような大都市の場合、市警察には各地域を担当する分署(precinct)が存在する。これは日本における所轄署に相当する。ニューヨークとシカゴは各分署に番号が付いているが、これらは連番ではなく空き番号がある。(ニューヨーク、マンハッタンの分署にはMidtown South Precinct、Central Park Precinctなど一部番号以外のものもある)『ロー&オーダー』に登場するNYPDの分署も『シカゴ P.D.』に登場する架空の分署も現実世界の空き番号を割り当てている。

 大都市になると発生する犯罪の種類も多様になる。各地域によって文化的なカラーも違うため、各自治体警察で部署の数も違う。特に最大都市ニューヨークは多種多様な犯罪に対応するため、多数の部署が存在する。NYPDの公式サイトによるとNYPDには20の局(Bureau)が存在し、さらにその下に部(Division)、隊(Squad)があるとのことだ。『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』は特捜班(Special Victims Unit)の刑事たちが主人公だが、現実には刑事局(Detective Bureau)の特捜部(Special Victims Division)か、その管区配下の特捜隊(Special Victims Squad)が相当するそうだ。『ロー&オーダー』のスピンオフでもまだ新しい、『LAW & ORDER:組織犯罪特捜班』はもともと『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』のレギュラーメンバーだったステイブラー刑事(クリストファー・メローニ)を主人公にしているが、こちらは組織犯罪がテーマで、組織犯罪の担当はNYPDでもまた別の部署である。10年継続した『LAW & ORDER:クリミナル・インテント』は重要事件捜査班(Major Case Squad)の刑事たちが主人公だが、これは実在の組織でNYPDの本部内にある。念のためにNYPDの公式サイトを確認したが存在が明記されていた。実際はドラマのように殺人事件は担当せず、誘拐、銀行強盗、ハイジャックなどが担当とのことだ。

 流石は職員5万人を超える組織である。複雑だ。NYPDだけでこれだけの差別化が可能なのは、その複雑、巨大さ故だろう。そのほか、フィクションで主人公扱いされているのを見たことが無いがニューヨーク市地下鉄を管轄とする部署、イエローキャブ(タクシー)に扮した車両でパトロールを行う部署など少々変わった部署もある。

「役割」と「階級」は異なる

 階級についても述べておこう。『警察・スパイ組織 解剖図鑑』にNYPDの例が載っていたため一部紹介すると、NYPDは本部長(Commissioner)を頂点にした階層構造で、警部(Captain)の下から制服組と私服組(刑事)に分かれる。

 ご存じない方も多いかもしれないが、刑事は「階級」ではなく「役割」である。これは日本でも同じで、「刑事」とは「刑事課に所属する私服警察官」のことである。『相棒』の杉下右京(水谷豊)は警視庁の架空の部署である特命係に所属する「刑事」で、階級は「警部」。右京が刑事であることと警部であることは役割と階級という別の属性を示している。また、少々蛇足だが、ついでに述べておくと刑事ドラマに登場するのは殆どの場合、捜査一課の刑事である。警視庁の刑事部には刑事総務課、捜査第一課、捜査第二課、捜査第三課、捜査共助課、鑑識課が存在する。

  そのうち、殺人事件を担当するのは捜査一課である。刑事ドラマで起きる事件は殺人事件が圧倒的に多いため、刑事ドラマに出てくる刑事は必然的に捜査一課の刑事が多くなる。人気作での珍しい例が、新庄耕の小説および、それを原作にしたNetflix製作の『地面師たち』で、同作は詐欺事件を扱うため知能犯罪を担当する捜査二課の刑事がメインキャラクターとして登場した。ニューヨーク市警察の場合、殺人事件の担当は殺人課(Homicide Squads)である。

 階級について、アメリカのフィクション作品を翻訳する際に“Lieuteneat”を「警部補」など日本の階級に当てはめて訳すのが定着しているが、NYPDの私服組は上から順にDetective First-Grade~Detective Third-Gradeまで三階級存在し、これらは日本の警察には相当する階級が無い。

 また、アメリカの警察組織は管理職よりも現場組が多いことも日本と異なる。日本だと警視は完全に管理側でデスクワークをする階級だが、NYPDの場合、警視(Inspector)は現場に出て指揮をする階級である。日本では仕事の出来る人はマネージメント側に配置される文化だが、アメリカでは現場で能力を発揮する人はベテランになっても現場で働き続ける文化がある。そういった考え方の違いも伺える。

 超長寿作品の『LAW & ORDER:性犯罪特捜班』に1999年の第1シーズンから登場し続けているオリヴィア・ベンソン刑事(マリスカ・ハージティ)は当初「Detective」だったが、26年の間にSergeant(巡査部長)→Lieutenant(警部補)→Captain(警部)と昇進して、今は性犯罪特捜班を束ねる立場にいる。キャリア組の右京が警部補→警部と一階級しか昇進していないのは、出世コースから完全に外れたのが理由だろう(現実にそんなキャリア組がいるのかわからないが)。

ドラマでおなじみの「ミランダ警告」

 最後に少々、蛇足だが「ミランダ警告」にも言及しておこう。アメリカの刑事ドラマでよく見る、刑事が犯人を逮捕したときに読み上げる「You have the right to remain silent.(あなたには黙秘権がある)」の文言から始まる、被疑者(犯人)の権利に関する定型文である。より具体的には、下記の4項目の警告である。

1.黙秘権があること

2.供述は不利な証拠として採用される可能性があること

3.弁護士の立会を求める権利があること

4.経済的余裕がなければ公選弁護人を付けてもらう権利があること

  これを警告し、被疑者に権利を理解させないと被疑者の供述は公判で証拠として採用されないことが法的なルールとして決まっている。

 実際は取り調べの開始前までに通知すればいいが、ドラマでは演出的な効果を狙って決まって逮捕時に行われる。実際にも早めに警告しておく方が理にかなっているので逮捕時に警告することが多いとのことだ(必ずではない)。

(次回に続く)

ニコ・トスカーニ

https://news.yahoo.co.jp/articles/841890b07d81700add097f97e05d8744fcf01213?page=1

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