文基祐 会員限定記事
北海道新聞 2025年2月3日 17:00
道立図書館の閉架に保管されている大量のビデオテープ資料=1月、江別市(北波智史撮影)
音声や映像を磁気テープで記録するビデオテープが近い将来、再生できなくなる事態が迫っている。家庭の思い出やテレビ番組などを記録するために昭和、平成に需要が伸びたが、再生機の生産が終了し、テープの耐用年数も迫っているからだ。「ビデオテープの2025年問題」とも呼ばれ、国連の専門機関は警鐘を鳴らす。貴重な資料をテープで所蔵する北海道の公共施設は、保存が利くデジタルファイル化の対応に苦慮している。
ビデオテープの複製事業などを手がけるIT会社ソルトワークス(札幌)は3日の受注を最後に同事業から撤退した。「複製に必要な再生機の市販がなくなり、修理費用も上がった」(同社広報)のが理由の一つだ。
故人の祖父の映像を記録したテープをDVDで残そうと昨年、複製を依頼した札幌市西区の会社員男性(49)は「祖父の笑う姿や肉声を親族に残したかった。複製が間に合い良かった」と話す。
■郷土資料が見られなくなる?
郷土資料も豊富な江別市の道立図書館北方資料館。閉架にアイヌ民族の舞踊の映像や国指定重要文化財の豊平館(札幌)の修復記録などを収めたビデオテープ資料約690本が並ぶ。
館内のテープ資料総数は約1200本で、デジタルファイル化する複製作業は未着手だ。北方資料サービス課の伊藤嘉奈子課長は「資料が多く、保存状態などの確認が必要。予算や人員も限りがある」とため息をつく。
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