NHKの番組、旧「シルクロード」の「楼蘭王国を掘る」がなつかしい。
井上靖の筆力は、贅肉を削ぎおとしてなお、詩情が溢れる。この人の歴史小説は一種厳しさが溢れる文体のような気がする。山本健吉の新潮文庫解説では史実小説とも呼んでいたらしいが、1958年に発表されたこの小説は、それこそ史料から作者が想像力を駆使して描き出した夢の造型である。よく、「まるで見てきたように」というが、小説家はまさに「見てきたように」語る。1979年が番組「シルクロード」の取材時期、放送は80年4月からということを考えてもなかなかどうしてたいしたものだ。西域の興亡が短い小説からも伝わってくるような気がする。丘のタマリスクが見えるのだ。
「往古、西域に楼蘭と呼ぶ小さい国があった」という書き出しの簡潔さに、実は深い思いが凝縮している。
井上靖の筆力は、贅肉を削ぎおとしてなお、詩情が溢れる。この人の歴史小説は一種厳しさが溢れる文体のような気がする。山本健吉の新潮文庫解説では史実小説とも呼んでいたらしいが、1958年に発表されたこの小説は、それこそ史料から作者が想像力を駆使して描き出した夢の造型である。よく、「まるで見てきたように」というが、小説家はまさに「見てきたように」語る。1979年が番組「シルクロード」の取材時期、放送は80年4月からということを考えてもなかなかどうしてたいしたものだ。西域の興亡が短い小説からも伝わってくるような気がする。丘のタマリスクが見えるのだ。
「往古、西域に楼蘭と呼ぶ小さい国があった」という書き出しの簡潔さに、実は深い思いが凝縮している。