今日は日中は暖かな陽光の降り注ぐ、気持ちのいいお天気となりました。ただ、吹く風は冬の冷たさなので、時節柄と相俟ってまだまだ油断はできません。
ところで、今日2月21日はヘンデルのオラトリオ《サムソン》が初演された日です。
ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル(1685〜1759)は、同い年でその生涯をドイツ国内で終えたヨハン・セバスティアン・バッハ(1685〜1750)と違ってイタリアやフランスを遍歴しながら、最終的にイギリス・ロンドンやアイルランド・ダブリンにまで活動範囲を広げた作曲家として知られています。
自身の歌劇団を率いてヨーロッパ各国で自作のオペラを上演してきたヘンデルですが、イギリスに渡るとイタリア語のオペラがあまり受けず苦境を強いられていました。そんな中で新たに着手したのが、聖書の物語をテキストとしたオラトリオでした。
オラトリオ《サムソン》は1741年に《メサイア》とほぼ同時進行で作曲され、1743年にロンドンのコヴェント・ガーデンで初演されました。現在では《メサイア》と比べるとあまり演奏される機会は多くありませんが、ヘンデルが作曲したオラトリオの中でも最大規模の作品です。
ストーリーとしては旧約聖書に登場するサムソンとデリラの物語で、怪力無双を誇ったイスラエルの英雄サムソンがダゴン神を戴くペリシテ人たちの策略にはまって、両目をえぐられて捕えられているところから始まります。そして、最終的に密かに力を取り戻したサムソンが
剛力でダゴン神殿を支えている柱を押し倒し、ペリシテ人たちと共に死んでしまうというものです。
長いオラトリオの中でも特に知られているのが、終幕にイスラエルの女によって歌われるアリア『輝けるセラフィムを(Let the bright Seraphim)』です。このアリアは《メサイア》の『トランペットが鳴り響き(The trumpet shall sound)』同様、華やかなトランペットのオブリガートが伴います。
このトランペット付きの華やかなアリアは、オラトリオを離れて単独で演奏されることの多い曲です。これまでにも、昨年他界してしまったエディタ・グルベローヴァをはじめとして、ジョン・サザーランドやキャスリーン・バトルといったソプラノ歌手による録音も残されています。
そんなわけで《サムソン》の初演日である今日は、オラトリオの大団円を飾るアリア『輝けるセラフィムを』の演奏動画を転載してみました。バロックのアリアならではの華やかな装飾も、合わせてお楽しみください。