共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

今日はボッケリーニの誕生日〜情熱のギター五重奏曲第4番《ファンダンゴ》

2022年02月19日 19時40分20秒 | 音楽
今日は朝から雲の垂れ込める、ちょっと暗めの一日となりました。夕方頃には雨も降り出して、寒さに拍車をかけていました。

ところで、今日2月19日はボッケリーニの誕生日です。



ルイジ・ボッケリーニ(1743〜1805)は、同時代のハイドンやモーツァルト比べると現在では作曲家として隠れた存在に甘んじていますが存命中はチェロ演奏家として名高く、チェロ協奏曲やチェロソナタに加えて弦楽四重奏曲を90曲以上、そこにチェロ一本を加えた弦楽五重奏曲を100曲以上作曲して、自身でも演奏を行いました。その中でも弦楽五重奏曲ホ長調G275の第3楽章は『ボッケリーニのメヌエット』として単独で有名になっています。

ボッケリーニの作風はハイドンに似ていながらも、独特な優美さと憂いを含んだものとなっているものが多く見受けられます。そのスタイルから、当時の音楽家からはハイドン夫人(Signora Haydn)などとも呼ばれていたようです。

優れた演奏技術をもって、それまで通奏低音楽器として用いられてきたチェロを一気にソロ楽器に昇華させたボッケリーニですが、スペインに渡ってからギターのための作品も遺しています。それを代表するのが、ギターと弦楽四重奏を組み合わせた13曲のギター五重奏曲です。

ボッケリーニはスペインのドン・ルイス王子の招きにより1749年からスペイン宮廷に仕えて以来、終生マドリードに住んでいました。ギター五重奏曲群はアマチュアのギタリストであり、1796年からボッケリーニのパトロンであったブナバント侯フランシスコ・ボルハ・デ・リケル・イ・デ・ロスのために1798年に作曲されたものです。

13曲のギター五重奏曲の中でもとりわけユニークなのがギター五重奏曲第4番ニ長調G448、通称『ファンダンゴ』です。これはボッケリーニが作曲したギター五重奏曲の中で最も人気のあるものの一つで、特に第3楽章と第4楽章は『序奏とファンダンゴ』の別タイトルでギター・アンサンブルやピアノとギターの二重奏など様々な編曲でクラシックギター奏者に親しまれています。

チェロ奏者であったボッケリーニのほかの室内楽作品と同様チェロに多くの主旋律が割り振られていて、たびたびかなりの高音を演奏することが求められています。そして最もユニークなのが第4楽章の後半で、チェロが演奏を休止してカスタネットに持ち替えることが示されている部分があるのです!

チェロ奏者にカスタネットを持たせるというアイデアはあまりにもユニークですが、さすがに打楽器演奏技術的に難しいこともあって、現在では別に打楽器奏者をスタンバイさせることもあります。それでも、このカスタネットの音色がスペイン舞曲ファンダンゴの雰囲気を高めるため、この曲に欠かせない存在となっています。

そんなわけでボッケリーニの誕生日である今日は、バロックヴァイオリン奏者の寺神戸亮さんが率いるアンサンブルによる演奏を載せてみました。フラメンコダンサーを伴ったユニークな演奏をお楽しみください。


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