共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

よみがえる正倉院宝物とラストチョコナッツワッフル

2022年02月23日 22時45分05秒 | アート
今日は今上陛下62歳のお誕生日です。しかし、何故かどのメディアでもトップニュースに天皇誕生日が来ることはないという、何とも失礼な感じが続いていました。

さて、そんな祝日の今日は六本木の東京ミッドタウンに出かけました。この中にあるサントリー美術館では、現在



《御大典記念特別展よみがえる正倉院宝物〜再現模造にみる天平の技》という展覧会が開かれています。

奈良・東大寺にある正倉院には、聖武天皇の没後に光明皇后が収めた天皇遺愛の品や大仏開眼に使用した法具が遺されています。この展覧会では、主に平成時代に様々な専門家監修の下で再現模造された品々が展示されています。

再現模造というからには造形だけでなく、使われる素材もオリジナルと同じものを使うことが絶対条件となっています。しかし、その中には象牙や亀の甲羅である玳瑁(たいまい)、木材の紫檀、螺鈿の原料の夜光貝等、現在ではワシントン条約に抵触する素材も数多くあるため、条約締結前に確保されていた貴重な素材を使っての大変な作業となっていました。

その最たるものが、正倉院宝物の代表格と言っても過言ではない



螺鈿紫檀五絃琵琶(らでんしたんのごげんびわ)です。何しろボディの素材は紫檀、装飾の素材は螺鈿や玳瑁細工と現在では輸入が厳しく制限されているものオンパレードですから、関係各位の御苦労たるや想像に難くありません。

通常の琵琶が四絃であるのに対して、今や世界中にこの一張しか現存していない五絃琵琶には



夜光貝を磨いた螺鈿細工や、花の中心部を彩る玳瑁細工が一面に施されています。平成の再現模造ではオリジナルから採寸したデータを元に



螺鈿細工や鼈甲細工といった様々な分野の職人さんたちが分業して、8年もの歳月をかけて完成させたものです。

また、この琵琶を演奏するために作られたともいわれている



紅牙撥鏤撥(こうげばちるのばち)も再現されていました。撥鏤(ばちる)とは象牙を紅や紺に染色する技ですが、象牙が禁輸品となっている現在では尚の事貴重なものとなっています。

この他にも



古代の竪琴である箜篌(くご)や



焼き物の鼓胴である磁鼓(じこ)、



現代のパンフルートのような甘竹簫(かんちくのしょう)といった楽器類が再現模造されていて、音楽に携わる者としてはかなり興味深い展示でした。

また



仏前に香を奉納するのに用いたといわれている黄銅盒子(おうどうのごうす)という法具も再現模造されていました。全長12〜13cmのものですが、蓋の上に着けられている五重塔を模した部分をX線撮影したところ、3cmほどのこの部分に実に58ものパーツが使われていることが判明した(!)そうで、そうしたところも忠実に再現模造されているとのことでした。

他にも染色を施した絹織物や刀剣、書などの再現模造が展示されていましたが、特に染色品の再現については



上皇后陛下が皇居内の御養蚕所で育てておられる日本固有種の小石丸(こいしまる)という蚕からとった生糸が使いられています(この小石丸からとられた絹糸は琵琶や阮咸の弦にも使われています)。また、現在では殆ど見られなくなり、皇居の敷地内て発見された日本茜を、上皇・上皇后両陛下のお心遣いの下で栽培したものからとられた染料を用いて赤や紫を染め上げています。

1300年以上の時を越えて伝えられてきたものを再現するということは、古の技術を伝承していくことにもつながる有意義な作業です。材料入手が困難になることもありますが、今後もこうした作業を通じて、古の工人たちの技を解き明かしていただきたいと思います。

さて、夕方になったので六本木からあざみ野に移動して《雫ノ香珈琲》に向かいました。恐らく今月来られるのは最後になると思ったので、今日は



今月限定の『チョコナッツワッフル』をオーダーしました。

正倉院宝物の素晴らしさに触れ、美味しいワッフルも堪能できた、幸せな祝日となりました。
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