共 結 来 縁 ~ あるヴァイオリン&ヴィオラ講師の戯言 ~

山川異域、風月同天、寄諸仏子、共結来縁…山川の域異れど、風月は同天にあり、諸仏の縁に寄りたる者、来たれる縁を共に結ばむ

性格が垣間見える自筆譜〜シューベルト編

2020年08月14日 20時20分22秒 | 音楽
今日も今日とて暑い一日となりました。新型コロナウィルスの罹患者数と共に熱中症の患者数も鰻登りで、屋外でのマスクの使用が危ぶまれています。

今日も私は一日家に居ました。こういう時にはヘタに外出なんぞせずに、家で大人しくしているのが一番です。

ただ、外出しないとブログのネタに困ります。そんな時には有名作曲家の自筆譜特集に逃げるに限ります(ナンヂャソラ?)。

ということで、久々にやってみようと思います。今回はベートーヴェンに次ぐ巨匠、シューベルトです。



フランツ・ペーター・シューベルト(1797〜1828)と言えば音楽室の肖像画で御存知の通り、ポッチャリ顔にちっちゃな丸眼鏡がトレンドマークの、何とも人当たりの良さそうな顔を思い起こされる方もおられるかと思います。それでも、息子フランツを教師にしたがった父親との葛藤があったり、思いあった人と遂に結ばれなかったりといった苦悩も抱えていたようです。

そんなシューベルトはクラシック音楽界では『歌曲王』と呼ばれています。僅か31年の生涯の中で、歌曲だけでも実に900以上もの作品数を誇りますが、その数ある歌曲の中でとりわけ有名なのは《魔王》でしょう。学校の音楽の授業でも習うので、御存知の方も多いかと思います。

シューベルトの友人のヨーゼフ・フォン・シュパウン(1788〜1865)の手記によると、ゲーテの詩集を手にブツブツ言いながら部屋を右往左往していた当時18歳のシューベルトが突然弾かれたように机に向かうと、あっという間に書き上げてしまったのが《魔王》だったのだそうです。その自筆譜が



これです。以前載せたバッハの自筆譜とはまた違った感じで、このまま見ながら演奏出来そうな読みやすい楽譜ですね。

ただ、この自筆譜はちょっと変なところがあります。というのも、《魔王》の出だしは本来



三連符で始まるはずなのですが、上の自筆譜を見るとピアノの右手が8分音符になっているのです。これについてはシューベルト自身が

「《魔王》の右手の三連符の連打は弾ける人が弾けばいい。自分は8分音符でないと上手く弾けない。」

と言ったらしいのですが、もとでピアノの名手でもあったシューベルトが自作を『弾けない』と語ったというのも何だか不思議な話ではあります。もしかしたら、シューベルトなりの冗談のつもりだったのかも知れません。

生前、世間的評価には恵まれなかったものの多くの友人知人に囲まれていたシューベルト。そんな『人財』に恵まれた彼の生涯は、案外幸せだったのでしょうか。

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