昨日…というか今朝未明、昔の生徒からLINEがありました。
大学を卒業して就職した彼は、新人なりに仕事に邁進していたようです。しかし彼の直属の上司という人がかなり学歴差別が激しい人らしく、自身が卒業した大学よりもランクが下がる学校出身と見るや、あからさまに横柄な態度をとる曲者なのだそうです。
LINEの文面だけではよく分からないので電話に切り替えて話を聞いてみたのですが、彼自身はきちんと仕事をこなしているはずなのに身に覚えのないミスを指摘されて嫌味や叱責を受けているらしく、精神的に参っているということでした。それでも、折角コロナ禍の中で採用された会社であることもあり、入社して一年も経たない中で退職してしまうのは躊躇される…とも言っていました。
小一時間、彼の話をひたすら聞いていたのですが、後半になって少しずつ泣くことができるようになってきたようでした。なので、それを確認した上で
「ここで泣けるってことは、『本当は自分はどうしたいか』が大体自分の中で見えているよな。あとは『それをいつ実行に移すか』じゃないの。」
と問いかけてみました。
彼も何となく私から
『そう言われるんじゃないか…』
という予感がしていたらしく、電話の最後にはだいぶ明るい声色になっていました。これからじっくりと考えて、自分が幸せになれる道を選んでほしいと思います。
そこで、彼に一つの音楽を薦めました。それがイングリット・ヘブラーが演奏するバッハの《フランス組曲》でした。
1929年にウィーンで生まれたイングリット・ヘブラーは、特にモーツァルトの演奏に定評がある女流ピアニストです。その一方でバッハやシューベルトの作品にも優れた録音を残していますが、その中でも1980年にレコーディングされたこの《フランス組曲》の録音は名盤の誉れ高いものとなっています。
心身共に傷ついた彼にとって、このヘブラーのバッハが一服の清涼剤となってくれることを願って止みません。そして、彼自身で納得のいく道を選択して、幸せな人生を歩んでもらえればと思います。