じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

中村文則「銃」

2019-06-17 09:55:21 | Weblog
★ 中村文則さんの「銃」(河出文庫)を読んだ。

★ 銃を拾った。銃は死体のそばにあった。銃を手にしてから男は生きがいのようなものを感じた。

★ 男は普通の大学生だった。普通に仲間とじゃれ合い、女とも交わった。しかし男が充足を感じるのは、拳銃を磨く時間だった。

★ 最初は手に持ち、磨き、眺めるだけで満足だった。それが、撃ちたい衝動に駆られ、興奮するようになった。

★ 最初は山深く、人に気付かれないように撃とうとした。やがて、哀れな黒猫を撃った。そして、人を撃つことを計画した。

★ 銃を扱っているつもりが、銃は男の一部になり、やがて銃に支配されるようになった。

★ 「どうだっていい。何だっていい」(158頁)それは彼の魂の断末魔だったのかも知れない。

★ 緊迫した独白が続く。そして行き着くところは・・・。


★ この作品は「銃」が主人公だ。銃は何も語らないが、男の心の震えや行動によって語らせている。「銃」は具体的なもの(武器)だが、それにとどまらず、抽象的な何かの象徴かも知れない。人によっては恋愛だろうし、人によっては宗教やイデオロギーかも知れない。人を鼓舞し充実感を与えるとともに、扱い方を間違えば破滅に導く何か。
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