じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

藤堂志津子「秋の猫」

2019-06-23 23:18:45 | Weblog
★ 藤堂志津子さんの「秋の猫」(集英社文庫)から表題作を読んだ。

★ 壮絶な夫婦喧嘩らは物語は始まる。いやまだ結婚していないから夫婦喧嘩とは言えないかもしれない。早智子は30歳で結婚をあきらめたが、33歳でこの男と出会い3年間付き合ってきた。結婚を目指してきたが、この男は浮気を繰り返したのだ。1回目は、何とか許せた。しかし2回目となると最早堪忍袋の緒が切れた。

★ 男と別れた早智子は猫を飼うことにした。1匹のつもりが2匹も飼うことになった。ロロとミミと名付けた。早智子と猫との生活が始まった。

★ 私は犬好きだが、猫好きにはたまらない作品だろう。
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三木卓「鶸」

2019-06-23 22:10:55 | Weblog
★ 三木卓さんの「砲撃のあとで」(集英社文庫)から「鶸(ひわ)」を読んだ。

★ 1973年上半期の芥川賞受賞作だが、書かれている時代は1945年、終戦前後の北満州だろう。具体的な記述があるわけではないが、酷寒の中で、そして法秩序、貨幣秩序の崩壊した極限状態の中でなんとか生き伸びている人々の姿が少年の視線で描かれている。

★ 少年は煙草を売って日銭を稼いでいたが、自動小銃をもった少年兵の略奪に合う場面から物語が始まる。不法な行為に遭っても歯向かうこともできない。もはや法の支配が存在しないことを冒頭で物語っている。

★ 兄からの知らせを受ける。父親が帰還したという。しかし父親は発疹チフスを患い高熱で死地を彷徨っていた。旅立つ前と帰還したときの父の変わりよう。それは現地における日本人を取り巻く環境の激変を象徴するようだ。兄と少年は当座のカネを稼ぐために家財を売りに行く。しかしそこで遭遇する現地の人々の半ば略奪のような買い取り。しかも支払われた軍票は近々ゴミ屑同然になるという。

★ 「鶸」とは字の通りスズメのような弱弱しい小鳥のようだ。少年は飼っていたこの小さな命を自らの手で葬る。少年はこの小さな命を人手に渡すことが許せなかったのだ。
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西加奈子「あおい」

2019-06-23 17:51:27 | Weblog
★ 西加奈子さんのデビュー作「あおい」(小学館文庫)を読んだ。

★ 27歳の女性が主人公、もともと2つ上の同僚の雪ちゃんが好きだったカザマ君と同棲をはじめ4か月になる。雪ちゃんからは断絶されてしまった。バイト先のスナックでの話や学生の頃レイプされた話。そして、カザマ君の子どもを宿した話などが、あっちへ飛びこっちへ飛びながら進められていく。

★ 随分と粗削りな構成だとも思うが、主人公とともに浮遊するのも悪くない。

★ なぜ題が「あおい」なのかと思ったが、そう言うことだったんだね。(興味のある方はご一読あれ)
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