じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

三木卓「砲撃のあとで」

2019-06-24 20:41:46 | Weblog
★ 三木卓さんの「砲撃のあとで」(集英社文庫)から表題作を読んだ。

★ 終戦前後の満州の街だろう。それぞれの軍、あるいは武装勢力が入り乱れて戦乱が続く街。兵士が通りすぎるたびに建物は崩壊し、街は荒廃していく。

★ 砲撃のあとで、略奪のために破壊された「外務省」に侵入した少年の目を通して、その惨状を描いている。

★ 「この都市には、さまざまな国籍の人間がいるが、ひとたび都市が混乱に陥るや、どの国籍の人間も、立場のいかんを問わず略奪に走るのだ」(100頁)

★ 道徳や倫理などと言ったものはもはや通用しない。赤裸々な人間の本性、野生化した人間を見るようだ。極限の中で生きる人間の姿を見るようだ。

★ 緊迫した戦場の様子が語られた後で、終盤のある男女との出会い(目撃)から雰囲気が変わったように感じた。極限状態にあっても少年の好奇心はいよいよ衰えることを知らない。生死が隣り合わせの状況だからこそ、生(性)への渇望がより高まっているようだ。
コメント