じゅくせんのつぶやき

日々の生活の中で感じた事をつぶやきます。

伊集院静「切子皿」

2019-06-27 20:37:36 | Weblog
★ 伊集院静さんの「受け月」(文春文庫)から「切子皿」を読んだ。伊集院さんの作品はどれもスマートだ。

★ 正一は43歳。妻、二人の子どもと暮らしている。母も同居していたが昨年亡くなった。正一はほとんど母の手で育てられた。父は彼が中学生の頃に家を出て帰ってこなくなった。

★ 父はかつて実業団野球部のエースだったという。母は父のファンで、願いが叶って結婚したそうだ。母の死後、母の知人から聞いた話。

★ 駅弁を売って生計を立てていた母からカネを巻き上げ、暴力も振るう父だったが、かつては栄光の日々があったのだという。

★ 母の死後、土地の権利書が出てきた。その土地を利用するため、正一は30年ぶりに父と会うことにした。父は京都に住んでいる。

★ 京都、祇園四条界隈の雰囲気が伝わっていくる。料亭の切子皿に盛られた、はもと梅肉が美しい。京都の夏だ。

★ 最後は「はっ」とする。もしかして音信不通だった父は母と連絡をとっていたのだろうか。余韻を残して物語は終わる。
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高橋克彦「言えない記憶」

2019-06-27 17:41:01 | Weblog
★ 高橋克彦さんの「緋い記憶」(文春文庫)から「言えない記憶」を読んだ。

★ 子ども時代にの遊びの風景から始まり、同窓会のような飲み会の場面になり、それがある事件に結びついていく。

★ 主人公は小学4年生。近所の子どもたちと缶蹴りをしていた。2つ年上の女の子と実家の小屋に隠れたところ、ある事件が起こる。そしてやがて女の子の死体が川から上がる。小屋の中でいったい何があったのか。

★ 読み進めるうちにだんだん怖くなる作品だった。
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横光利一「御身」

2019-06-27 16:29:45 | Weblog
★ 横光利一「機械・春は馬車に乗って」(新潮文庫)から「御身」を読んだ。大正13年発表の作品だから、だいぶ古い。

★ 姉に子どもが生まれた。主人公の男は、幸子という名のこの姪がかわいくて仕方がない。

★ ギュッと抱きしめたいのだが、赤ん坊とは言えどうもこの叔父が気に食わない様子。あやされているときは気分よく笑っているのだが、身体に触れようとすると逃げる。無理強いすれば泣き出す。

★ 姉に言わせれば、「お前あらっぽいからや」の一言。

★ 叔父は「御身や、御身や」と言って、子守りを続けるしかなかった。姪(と言ってもまだ乳児だが)に「恋」をしてしまった叔父の自嘲気味な作品だった。
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先生の表情が暗い

2019-06-27 08:54:55 | Weblog
★ 中学校は期末テストの真っ最中。今朝も早くから何人か生徒が来て自習をしていった。

★ ところで、学級の集合写真ができたらしく、昨日も学校帰りに何人かの生徒が持ってきた。中学2年生に写真を見せてもらった。

★ 13歳から14歳にかけて、いわゆる思春期で難しい世代だ。成長の個人差が顕著で例えば背の高さにも大きなばらつきがある。身長のように心の発達にも個人差があるのだろうなと思う。

★ 写真を見ていて気になったことが2点ある。

★ 1つは不登校の生徒の数だ。今は1学級40名足らずだが、どのクラスにも2人から3人の不登校の生徒がいる。卒業アルバムでよくあるように右上の小窓にその写真が載っている。「教育機会確保法」ができて、無理をして学校に行かなくてもいいですよということになったが、数の多さが気にかかる。それぞれに事情があるのだろうが、学級あるいは学校の雰囲気に何か原因があるのかも知れない。

★ 2つ目は先生の表情だ。中に表情の暗い先生がいる。たまたまなのか(あるいは写真写りか)とも思うが、そのクラスの生徒の話を聞くとどうも学級が楽しくないようだ。先生方にもそれぞれ事情があるのだろうが、カラ元気でも太陽のように明るくあって欲しいなぁと思った。また、こうした先生の状態を校長をはじめとする管理職は的確に把握してフォローしてほしいなぁと思った。

★ 学級の雰囲気はちょっとしたところにも表れるものだ。
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白石一郎「金印」

2019-06-27 01:22:25 | Weblog
★ 27日、28日は中学校の期末テスト。次から次と訪れる生徒の合間を縫って、白石一郎さんの「孤島物語」(新潮文庫)から「金印」を読んだ。

★ 歴史の教科書には必ずと言ってよいほど載っている金印。「後漢書」東夷伝に「建武中元2年に倭の奴国が後漢に朝貢したので、光武帝は印綬をおくった」と記された金印である。

★ 今の福岡県・志賀島の百姓、甚兵衛が自分の田んぼから見つけたとされる。1辺2,5センチメートル足らずのこの金塊が、どのようにして甚兵衛の田んぼに行き着き、そして偶然発見されるに至ったのか。それは実に謎めいている。

★ この作品でもその点は謎のままだ。発見された金印がどのようにして公の知る所となったのか、そのいきさつに作家のイマジネーションが注がれている。

★ 金塊とは言えこのような小さなものが出土され、そして金塊であるがゆえに闇に消えそうなものが国の宝として残存したのは、まさに奇跡と言える。
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