折にふれて

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軌跡の7分間  鉄写同好会

2018-05-11 | 鉄道写真

毎月11日は「鉄写同好会」の日。

詳しくは発起人てくっぺさんのブログ「高橋さんの写真記念館」をご覧ください。



 

 

その日、仕事を終えた午後。東京駅のホームに入線してくるE7系の車両を待っていた。

長野から「あさま」としてやってきて、車内清掃を終えた後、「かがやき」となって金沢へ向かう。

そのときの様子だが、この写真の主役、実は列車ではない。

入線する列車を出迎えるように等間隔でホームに立つ車両清掃スタッフたち。

彼らこそ、この写真、そして「奇跡の7分間」の主役なのだ。

 

彼らの所属は「テッセイ」。

現在の社名は「JR東日本テクノハート」だが、

旧「国鉄」時代に分社された旧社名「鉄道整備株式会社」の略称を今でも愛着込めて使っているという。

彼らを清掃スタッフと紹介したが、その仕事は客室内の清掃だけではない。

忘れ物のチェックから、ゴミだし、座席カバーの交換にトイレ掃除など、

その範囲は広く、しかもそれらの仕事を短時間に完璧にこなす。

どれだけ短時間か。

新幹線が東京駅に到着し、折り返しの発車までの時間は通常15分間。

そのうち、乗客の降車に5分、また折り返しの乗車に3分の時間が充てられる。

したがって、その乗降時間を除いた7分間が彼らに与えられた時間で、

その中ですべての仕事と仕上がりのチェックを終えなければならない。

彼らは手際よく、迅速かつてきぱきと無駄のない行動で仕事をこなす。

そして完了後、整列してさわやかに一礼。

その鮮やかともいえる仕事ぶりこそ「奇跡の7分間」の由縁である。

さらに、彼らの仕事意識は清掃業務だけに留まらない。

高齢者や急病人の介助、東京駅構内はもちろん周辺施設の道案内などコンシェルジュさながらだ。

彼らの姿を称賛をもって眺め、カメラを向ける外国人も増えているそうだが、

それもそのはず、彼らの取り組みは広く海外でも紹介され、

ハーバード大学ビジネススクールの教材としても使われているというから驚きだ。

 

さて昨今、企業が抱える課題のひとつに「働き方改革」がある。

これまでの話はその取り組み事例をテーマとしたセミナーで、

テッセイのOBであり彼らの生みの親である矢部輝夫氏により紹介されたものだ。

このすばらしい「職場」の誕生には矢部氏の指導もさることながら、

スタッフの方々の並々ならぬ努力と意識改革があったという。

セミナーではその過程がつぶさに紹介され、それを大いなる感動をもって拝聴した次第だが、

この日、彼らの仕事ぶりの一部始終を直に眺めながら、

その感動が本物だったことをあらためて実感したのだった。

ともすると、「時短」だけにとらわれそうになる「働き方改革」。

矢部氏が、まず彼らスタッフと共に始めたことは、

仕事の「誇り」と「生きがい」を再定義することだったという。

そして、この人間愛にあふれるセミナーの最後を矢部氏はこんな言葉で締めくくった。

「人は経営資源ではない。経営主体そのものである。」

 

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