賑わいを取り戻した浅草寺。
浅草寺(東京都台東区)2023.04.08 14:42 Sony α7S2 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (55㎜ f/5.6,1/160sec,ISO640)
先の週末、久しぶりに訪れた浅草でのこと。
仲見世通りから浅草寺まで見渡す限りほとんどが外国人。
六本木ほどのアウェー感はないものの様々な言語が飛び交っている。
以前から外国人に人気の観光地ではあったが、
欧米人の数もさることながら、アジア人の数の多さに驚いた。
円安もあるが長期のデフレ傾向で日本全体が「安い」のだろうな、と思ったりもしていた。
それはそれとして「人も風景」。
浅草寺の境内から見下ろす光景に惹かれた次第だ。
そして、人込みを避けて逃げ込んだ先が「神谷バー」。
というか「いっぱいだろうな」と待つつもりで訪れたものの
空いていて拍子抜けしたのだが。
とりあえずはデンキブランとチェイサー代わりの生ビール、
そして、以前から食べたかったエビフライを注文。
予想通りの「洋食」だった。
途中、となりの席に欧米人らしき人がやってきて
デンキブランを一口飲んだが、それだけで早々に店を出て行った。
ちょうどその時、近くの席にいた人と目が合って笑いながら交わした言葉が
「どうもお気に召さなかったようだね」
どうやら、この場所だけはもうしばらく古きよき日本を保って行ける。
そんな気がしたのである。
千鳥ヶ淵での桜の話題が続く。
千鳥ヶ淵(東京都千代田区) 2023.03.31 7:47am Sony α7R3 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (70㎜ f/5.6,1/320sec,ISO100)
まだ人通りの少ない、朝の風景は気持ちを穏やかにさせてはくれたが
一方で、風が吹くたびに花びらがはらはらと散る桜を少しさみしく感じてもいた。
とは言っても、散りぎわの桜ばかりが気持ちを湿らせたわけではなく
前夜のジャクソン・ブラウンのコンサートの余韻が
そうさせたのかな、と思ったりもする。
50年来の思いを胸に出かけたコンサート。
自分自身の反応を意外に思うほど熱狂したことは直後の記事に書き留めた。
今度の日本公演でジャクソン・ブラウンが選んだ曲はほとんどが70年代のもの。
私にしてみれば10代から20代の初めにかけての思い出に繋がる。
曲ごとに様々な記憶が蘇がえり、その懐かしさや切なさ、
さらには、さみしさを散りゆく桜に映したのかもしれない。
そしてその時。ふと思い出した曲が『These days ( 邦題:青春の日々)』だった。
青臭い話ついでに曲への思いを留めておきたい。
Jackson Browne - These Days
コンサートでは歌われなかったが
ジャクソン・ブラウン初期の良く知られた曲だ。
彼がまだデビュー前、16歳の時に書かれたもので
この頃から彼特有の難しい表現が歌詞に現れているものの
「背伸び」したい気持ちが透けて見えるようにも感じる。
けれども、なんとなく言いたいことはわかるし、それが心の葛藤だと思うのだが、
直訳すると通じにくいので、思いっきり、というか独善的に意訳を試みてみた。
These days
Well I've been out walking
I don't do that much talking these days
These days
These days I seem to think a lot
About the things that I forgot to do for you
And all the times I had the chance to
そう、僕はこれまではずっと外に目を向けて歩んできた。
でも近頃は、そんなに人と話すこともしていない。
そして近頃は、君のためにやり忘れたことにひどく悔やんでいるようだ。
「いつだってそのチャンスはあったのに」ってね。
And I had a lover
It's so hard to risk another these days
These days
Now if I seem to be afraid
To live the life I have made in song
Well it's just that I've been losing so long
以前にも恋人はいたけれど
近頃は、別の恋をすることをためらってしまう。
近頃の僕が歌の中にあるような人生を怖がっているようなら
それは、僕がこれまでも逃げ続けてきたということだろうね。
I'll keep on moving
Things are bound to be improving these days
These days
These days I sit on corner stones
And count the time in quarter tones to ten,
my friend
Don't confront me with my failures
I had not forgotten them
物事を良いほうへ向けるなら行動を続けるしかないだろう。
でも近頃の僕はコーナーストーンに座り込んだまま
四分音で10を数えるようにのんびりしていたりもする。
でも友達なら、
僕の過ちを責めないでくれないか。
決して過ちを忘れてはいないのだから。
「9」のつく日は空倶楽部の日。
満開を過ぎても千鳥ヶ淵の桜は見事だった。
桜の名所は平日であっても出遅れると混雑する。
また、ラッシュに巻き込まれたくもなかったので早々に宿を出た。
大正解! 独り占めと言っていいほど静かな桜景色に出会うことができたからだ。
ということで4月最初の空倶楽部。
お題の「花と空」は千鳥ヶ淵の桜と穏やか広がる都会の空でクリア。
千鳥ヶ淵(東京都千代田区) 2023.03.31 8:02am Sony α7R3 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (70㎜ f/5.6,1/320sec,ISO100)
二日間、留守にしていますので、みなさんのところへは後ほど伺います。
満開は過ぎて少し葉っぱもでていたけれども
それでも千鳥ヶ淵の桜景色はじゅうぶんに見応えがあった。
千鳥ヶ淵(東京都千代田区) 2023.03.31 7:51am Sony α7R3 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (70㎜ f/5.6,1/125sec,ISO100)
まだ人出の少ない平日の朝。
こんな穏やかな花見を東京で楽しんだのは久しぶり。
前夜のコンサートに続きオトナの遠足。ぜいたく、ぜいたく。
桜の開花とともにやって来たジャクソン・ブラウン。
その東京公演に行ってきた。
この年になって「今さら」という思いもないではなかったのだが...。
行ってよかった。コンサートを心底から楽しむことができたからだ。
ジャクソン・ブラウンとの出会いは十代。
彼のファースト・アルバムを衝動買いした高校生の時だった。
その時以来50年、折にふれて彼の音楽に耳を傾けてきた。
だが、過去何回かの来日公演があり、出かけるチャンスもあったにもかかわらず、
直に彼の音楽に触れようとはしなかった。
確かに、高校、大学時代とジャクソン・ブラウンの音楽に共感し熱狂もした。
けれども、社会に出てからというもの、
都会でしか開催されないコンサートに
休みをとってまで出かけようとは思わなかったのだ。
ところが今回は違った。
昨年暮れにジャクソン・ブラウンの来日を知った時、
最初は「ふーん、来るんだ。」程度の反応だったのだが、
彼がすでに74歳となっていることを知り、
ひょっとしたら、これが最後の来日になるかもしれないと思ったら
間近で彼の音楽を聴いておきたいとの思いが急に募り始めた。
幸いにして、今は仕事量を調整しやすくもなっているので
この機会は絶対に逃せない、と東京での追加公演のチケットを
発売開始と同時に申し込んでいた。
それからの3か月。気後れしないようにと最新アルバムを中心に
現在のジャクソン・ブラウンの音楽を繰り返し何度も聴いてきた。
昔のように歌詞を覚えるまで聴き込めたわけではないが、
どの曲が始まっても楽しめる準備は整っていた。
そして、公演の当日。
開演を待つ列に並ぶ人たちのほとんどが私と同年代。
彼の音楽に共感した人たちが同じ世代にたくさんいたことをうれしく思いながら開演を待っていた。
コンサートの選曲は意外にも大半が初期の4枚のアルバムから、
私がもっとも熱狂した時代の曲がほとんどだった。
公演の始まりこそ、だれもが大人しく聴いていたが、会場は次第に熱気を帯び
終盤には私自身も立ち上がって、若い頃に聞きおぼえた歌詞を熱唱していた。
観客総立ちの中、2回のアンコールの後のこと。
ジャクソン・ブラウンは演奏メンバーはもちろん、
日本人の運営スタッフもステージに呼び出し、
「Thank You Tokyo!」と手を振りながら、舞台の袖に消えていった。
その後も鳴りやまぬ拍手の中。
コンサートが完全に終わったことを確かめながら
私もゆっくりと会場を後にした。
そして、渋谷駅への道すがら。
「最近、これほど熱狂した時間を過ごしたことがあったかな」と
高揚のあまり、いくつかの曲を口ずさむ自分を不思議に思いつつ、
さらにこんなことを思ったりもしていた。
終盤の会場のどよめきを思う限り、私だけでなく観衆の誰もがあの時間を楽しんでいた。
そして、ジャクソン・ブラウンもまた、あのアンコールの曲『ロード・アウト』の歌詞のように
日本での最後の公演を満足してくれていたらいいな、と。
Jackson Browne The Load Out/Stay
『ロード・アウト』
客席は空っぽ。
さあ、設営スタッフにステージを受け渡そう。
会場は取り壊され、荷造りが始まる。
彼らは最初にここにやってきて、そして最後にここを出る。
わずかな賃金で働いてくれて
そして、別の街でまた会場を準備してくれる。
今夜、観客はとても素晴らしかった。
ちゃんと列を作って待ってくれていた。
そして、立ち上がってショーを盛り上げてもくれて、
すごく心地よかった。
でも、今、僕の耳には観客が聞くことがなかった
椅子を片づける音やドアが閉まる音が聞こえているんだ。
片付けが進んで、最後のギターが仕舞われても
僕はまだ歌っていたいんだ。
だからピアノを片づけるのは待ってくれないか。
みなさん。僕たちのコンサートに力をくれるのはあなたたちです。
座って待つのもいいけど、僕たちを引っ張ってください。
僕たちと一緒に歌いましょう!
『ステイ』
みなさん。もう少しだけいてください。
僕たちはもう少し演奏していたいんです。
開催者だって気にせず許してくれるでしょう。
だから、時間をとってもう一曲歌いましょう。