当尾、浄瑠璃寺。
初めて浄瑠璃寺という名前を耳にしたとき、
奈良仏教文化とは異質の歴史の浅い寺を想像した。
浄瑠璃という言葉から三味線に乗せた語り物を連想するとともに
竹本義太夫や近松門在衛門といった作者の名前を思い出し、
さらには男女の悲恋など世俗的な出来事に繋がる印象を受けたからだ。
だが、調べてみると浄瑠璃とはサンスクリットを語源とした
ひとつの浄土を表す言葉であることを知った。
東方浄瑠璃浄土がそれだ。
浄土というと西方極楽浄土のことばかりと思っていたが、
仏教の世界には浄土はいくつもあって
浄瑠璃寺はそのひとつ薬師如来が導く浄瑠璃浄土を具現しているという。
この寺の見どころは阿弥陀堂に鎮座する九体の阿弥陀仏。(現在は二体が修理中)
そのありがたいお姿を拝し、浄土より此岸に戻ったところ...
「撮ってください」とばかりのしつらえを前に
世俗に戻って「映え」撮りに及んだ次第。
さらに続く。
空倶楽部のCさん、Kさん。そして二科会員のD師匠と訪れた奈良。
奈良というと奈良公園を中心として東大寺、興福寺、春日大社や
西ノ京の薬師寺、唐招提寺などが有名どころだが、
今回は奈良に詳しいKさんのご案内で
郊外の鄙びた(などと書くと叱られそうだが)寺を回った。
題して「オトナの撮影会」
ということで、しばらくは奈良の話題が続く。
まずは当尾(とうの)岩船寺から。
当尾の厳密な所在地を記せば京都府木津川市。
けれども、ガイドブックなどでは奈良の観光地として収録されているので
当ブログでも大和路点描として掲載させていただくことにした。
山間の地。緑にすっぽりと包まれた伽藍が印象的な寺だったが
中でも、深緑に朱色がひときわ映える三重塔が目を引いた。
今回の奈良。
何をどう撮るか、まったく考えてなかったのだが
Kさんがふと口にした「観光写真にならないように...」を
心掛けるようにした。
したがって、なんでこんなものを撮ったのか、というものもあるし、
しかも大方が「力のない写真」。
だから、「数」で勝負、組み写真で掲載することとした。
それぞれの寺の雰囲気が伝われば幸いだ。
続く。
「9」のつく日は空倶楽部の日。
奈良西ノ京、薬師寺遠景。
2022.10.16 6:31AM Sony α7S2 F2.8G/70-200㎜ (135mm f/13/50sec , ISO100)
地元のカメラマンの方に薬師寺絶景のタイミングを教えていただいた。
頃合いにすればゴールデンウィークと盆の期間。
薬師寺のちょうど背後から朝日が昇るのだそうだ。
逆光、つまりは明暗差の激しい条件。ドラマティックな写真が期待できる。
だが一方でたくさんのカメラマンが殺到するのだろう、と
その時期、ここに立つことがすこし億劫にも感じられた。
そう思わせてくれたのがこの日の薬師寺。
日の出から30分あまり。穏やかな光がふたつの塔を包んでいた。
逆光ほどの迫力には欠けるかもしれないが、
やさしい斜光に照らされた薬師寺もいいものだ、と
この光景に見入った次第だ。
志賀高原で出会った朝の光景。
2022.10.02 06:45AM Sony α7S2 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (29㎜ f/5.6,1/320sec,ISO1000) 2022.10.02 06:49AM Sony α7S2 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (70㎜ f/2.8,1/80sec,ISO125)
笑子さん、chacha〇さん、そしてD師匠とのオフ会で訪れた志賀高原。
信州から草津へ抜ける国道292号線沿いで夕景、星空を楽しみ、
さらに夜明けに歓喜した後で訪れたのがここ木戸池付近。
紅葉には少し早かったようだが、前日からの晴天で冷え込んだせいか
初冬を思わせるような光景に出会えたのは幸運だった。
2022.10.02 07:01AM Sony α7S2 FE24-70㎜/f2.8 GM2 (70㎜ f/5.6,1/80sec,ISO400)
ところで、今日10月10日「スポーツの日」を含むこの三連休のこと。
元々は10月10日が晴れの特異日だったことから
1964年に開催された先の東京オリンピックの開会式に選ばれ、
その後、「体育の日」として国民の祝日に制定され、今は「スポーツの日」となっている。
つまりは晴れる確率が高く、行楽日和を期待した人も多かったはず。
ところが、三日間とも金沢は雨模様。
残念と言いたいところだが、このところ週末に出歩くことが多かったので
休養を決め込んで溜まった写真の整理を楽しんでいる。
ゆったりとした時間を楽しみながら
そして、この曲を繰り返し聴きながら...。
Carpenters - Rainy Days And Mondays
好きなことをやっているので、雨の月曜日だからといってふさぎ込んでいるわけではない。
動画の冒頭に登場するカレン・カーペンターの写真に惹き込まれたのだ。
少女の面影を残すいくつかの表情に思わず頬がほころぶ。
生きていたなら72歳。どんな女性になっていたのだろうか、などと他愛無い思いを巡らせつつ。
「9」のつく日は空倶楽部の日。
東京都庁 2022.09.11 10:27AM Sony α7S2 FE2.8 16-35 GM (26㎜ ,f/3.5,1/800sec,ISO160)
東京都庁庁舎が竣工したのは1990年。
あくまでも個人的な感想だが、その姿を一言で表現するなら威圧的。
また、シンプルな外観が多い高層ビルの中にあって異様とも感じていた。
そして例えるなら、映画「バットマン」シリーズにでてくるゴッサムシティにある建物のようだ、と思ってもいた。
竣工当時は日本全体が過熱した景気に酔い、そこに莫大な予算が費やされたことから、
「バブルの塔」とも揶揄されたそうだ。
そう、旧約聖書の伝承、神の怒りに触れた「バベルの塔」になぞらえたもので
つまりは「歓迎されない」というニュアンスが伝わって来る。
私自身もあまり好きになれなかったわけだが・・・。
けれども、その朝に限っては違った。
カーテンを開けた瞬間に、いかつい姿とばかり思っていた都庁が
さわやかな朝の空とともに目に飛び込んできたからだ。
日本を、いや世界を代表する建築家、丹下健三氏の名建築。
その芸術性の高さを理解しながらも、好きになれなかった姿だったが...。
それが竣工から30年余り。
前衛的な姿がようやく私の目になじんできたのかもしれないと、その姿に見いったのだ。
さて、今月の空倶楽部。お題は「鉄塔と空」。
東京都庁は鉄骨鉄筋コンクリート造なので
「鉄塔と言えないこともないのかな...」と拡大解釈に及んだ次第。
秋風が冷たくなってきて、ふと聞きたくなった曲。
The Sounds Of Silence , Simon & Garfunkel
サイモンとガーファンクルのデビューアルバム『水曜の朝、午前3時』に収録されている
アコースティック・バージョンだ。
映画『卒業』で使われたアレンジされた曲がお馴染みだが
しみじみと聞くなら断然このバージョン、と思っている。