この日、気温こそ真冬そのものだったが
久しぶりの日差しに誘われて湖北、菅浦へ。
毎年、この時期になると、「光の春」を探しに出かける。
撮影テーマのことを言っているのだが、
それはとりあえず置いて菅浦のこと。
Sony α7S2 F2.8G/70-200㎜
琵琶湖は、北に向かって狭まるにしたがって
いくつかの岬と入り江による複雑な地形を造り出す。
そのひとつ、葛籠尾岬(つづらおさき)の入り江に開けた集落が菅浦だ。
空気が澄んでいたせいか、対岸の比良山系が間近に迫る。
いつも思うのだが、このあたりの琵琶湖の水は
大津あたりに比べると群青ともいえるほど濃い。
その濃い水の色から立ち上がる雪の山肌が明るく青空に映えて
冬山とは言え春の様相を感じたのである。
Sony α7S2 F2.8G/70-200㎜
入江に沿って車一台がやっと通れるほどの
道の両脇に細長く民家が点在している。
その集落を包み込むように葛籠尾崎の林が迫る。
「隠れ里」とも呼ばれた菅浦独特の景観だ。
Sony α7S2 F2.8G/70-200㎜
湖岸にせり出す八重桜。
このあたり一帯は桜の名所でもあり
とくに4月の中頃からはこぼれるような八重桜が湖岸を彩る。
枝先が少し赤みがかって見えたりもしたが
蕾がすこし膨らみ始めていたのかもしれない。
Sony α7S2 F2.8G/70-200㎜
さて...。
あらためて、「光の春」のこと。
何年か前に、新聞のコラム欄で知ったのだが、
ロシアでは2月のことを「光の春」と呼ぶ。
彼の地に限らず、北国での2月はまだまだ真冬。
毎日のように雪は降るし、時にはたいへんな雪害をもたらすこともある。
だが、次第に陽が長くなって、明るさを取り戻していくことを
春への希望を込めて「光の春」と呼ぶのだそうだ。美しい言葉だと思う。
そして、この日の菅浦。
琵琶湖の水はまだ寒々と感じたし
残雪もかなりあった。
けれども、明るい日差しの中、
菅浦のそこかしこで「光の春」を感じたのである。
ぼくたちの失敗/森田童子
学生時代をなつかしく思い出す春の歌だ。
けっして明るい歌詞ではないけれども
その内容とは裏腹に、春への希望を感じる曲である。