花歳時記などというカテゴリーを作りながら
実は花の種類や名前を覚えることにほとんど興味がない。
いや一度だけ...。
せっかく写真を撮るのだから、常識的な花の名前くらい知っておこうと
フローリストをしている長男に教えを乞うてみたのだが...。
「きれいだと思ったならそれで充分じゃない。
それでも覚えたければ図鑑で調べたら...」と、つれない。
けれども、花を商売にするわけでもなし、
「それもそうだな」と思い直し、それ以来、無理に覚えることはやめた。
だが、花オンチながら、冬に咲く花でひとつだけ思い入れがある。
福井県越前海岸に群生する水仙だ。
越前海岸は房総や淡路島とともに日本三大群生地のひとつ。
日本海を望む崖地一面に群生する光景は、毎年「見事!」としか言葉がでないのだが
今年は暖冬など天候不順で、残念ながらその見ごろを特定できず
また、年明け以降の慌ただしさもあって、
今年の水仙はあきらめていた。
ところがである。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5f/af/1d0beb8a14a21ab43fd6f00de05c1b13.jpg)
ふと立ち寄った福井県内の高速道路サービスエリアで
小規模ながら群生する水仙を見つけたのだ。
もう開花の時期はとうに過ぎたと思っていたので
生き生きとして咲く水仙に出会ったことがうれしく
夢中でシャッターを切ったのである。
サービスエリア施設の陰に隠れた小さな緑地。
近寄る人もほとんどいない場所に人知れず咲く水仙。
それを眺めながら、何かで見た武者小路実篤の色紙を思い出していたのだが、
その色紙には水仙の絵とともにこんな言葉が記されていた。
「人見るもよし 人見ざるもよし 我は咲く也」
そして、この言葉は長男の言葉、
「きれいだと思ったならそれで充分じゃない…」にも通じるな、と
思ってみたりもしたのだった。
さて、ついでながら...。
せっかくなので以前撮った越前海岸の水仙をご紹介。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/73/39/a29cd9ae19bc70c2e50adb4d56073dc3.jpg)
群生する水仙が冬の日本海から吹き付ける
雪まじりの強風をものともせず咲き誇る姿は圧巻。
しかも、一様に可憐な花を踏ん張るように海に向けているのだ。
その凛とした姿を眺めるたびに勇気づけられ、
そして、それこそが越前海岸の水仙の魅力に他ならない。
そんな水仙の可憐さと力強さを
福井県で育った俵万智さんはこう詠んでいる。
海鳴りに耳を澄ましているような水仙の花ひらくふるさと