折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

當麻寺 秋空 By空倶楽部

2017-09-29 | 空倶楽部

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 


 年2回、春と秋の彼岸に先祖供養の為、當麻寺を訪れる。

當麻寺といえばその創建は七世紀、

聖徳太子の異母弟、麻呂子王によると伝えられるからたいへんな古刹だ。

その古刹でなぜ先祖供養、しかも金沢から遠く離れた奈良で...ということになるのだが、

そのくだりについては以前書いたので、お時間のある方はこちらの記事を。 彼岸 當麻寺にて

さて、その先祖供養の他に楽しみにしていることがあって、

それは、供養の前後二日間、趣味のカメラをもってゆっくりと奈良を回ること。

この彼岸の日々、天候は上々。

それで今回の空倶楽部も「秋風が心地よい古刹の風景」となるはずだったのだが...

當麻寺の境内では補修工事が始まっていて、その風景が残念なことになっていた。

當麻寺はその歴史だけでなく、現存する建物群においても古刹といえる。

平重衡による南都焼き討ちのあおりで一部伽藍が焼失したとも伝えられるが、

寺のシンボルともいえる東西の塔が創建当時のまま残されているのは日本で唯一當麻寺だけらしい。

ところが、そのひとつの西塔はすっぽりと仮囲いに覆われているし、

大和三庭のひとつ、香藕園(こうぐうえん)を望む茶室は

雨漏り修理とかで建物周囲には単管の足場が張り巡らされている。

とどのつまり、とても紹介できる風景ではないのだ。

しかし、いったん逸った気持ちは抑えきれず、

また當麻寺に愛着を持つものとしては、それであきらめることもできない。

それで苦肉の策、今回は昨年の彼岸の空を蔵出し。

ところでこの工事、いったいいつまでかかるのだろう...?

ご住職に尋ねたところ、

「工期も予算もわかりまへんのや...」とのこと。

というのも、対象となる建物は国宝や重要文化財、

ご住職やご家族が勝手に見積もりをとって、

工事を手配するなど言語道断らしい。

しかも、その工法は昔ながらのもの、(例えば茶室の屋根なら茅葺き)と決められているそうだ。

今の建築技術なら、もっと耐久性を持たせたり、補修頻度を抑える工法もあるのだろうが、

そこは文化財、あくまでも創建当時に復旧させることが鉄則であるらしく、

結果、「私が住職になって3回目(の補修)でっせ」なのだそうだ。

以前、「国宝に住んでます」というご住職の軽妙なジョークを承ったこともあるが、

一方で文化財に居住する方の切実なお悩みも拝聴した次第である。

それはそれとして、この修理、當麻寺を未来永劫保存するために必要なもの、

それが2,3年かかるとしても、

この寺の歴史の中では取るに足らない時間と納得するしかないようだ。


その日、早朝に金沢を経って、奈良に入ろうとする頃、

関西のローカルラジオ局「FM COCOLO」から流れてきた曲。

ベルボトム・ブルース デレク&ザ・ドミノス

Derek And The Dominos - Bell Bottom Blues 

ここちよい秋風となつかしい音楽が旅気分を大いに盛り上げてくれた。

 

 

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もうひとつの「天国への階段」

2017-09-25 | 折にふれて

先日、ブリューゲルの「バベルの塔」を紹介したところ、

いつも訪問してくださるブロガーさんから

「天国への階段」ですね… とのコメントをいただいた。

バベルの塔を取り巻いて伸びる螺旋階段はまさに「天国への階段」そのものだと思う。

しかし、「天国への階段」は自分にとってもうひとつの意味を持つ。

当ブログ、記事から連想される音楽を添付していて、

その記事には、「塔」という言葉から連想して、ボブ・ディランの「見張り塔からずっと」(演奏はデイブ・メイソン)を選んだ。

ところが、もっとふさわしい曲を思い出したわけで、

それがもうひとつの意味、レッド・ツエッペリンの「天国への階段」だ。

ロックファンなら誰もが知っている名曲で、

高校一年生の時、初めて買ったロックアルバムがこの曲が収められているレッド・ツエッペリンⅣだった。

映像とともにこの名曲をあらためて聴きたくなり、youtubeを検索したところ、こんな映像がヒットした。

 

 

  HEART - STAIRWAY TO HEAVEN in HD - The Kennedy Center Honors LED ZEPPELIN, 2012.

 

ケネディセンター名誉賞の一幕だというが、

そもそも、この賞は国籍を問わず音楽の功績を称えるもので2012年にレッド・ツエッペリンが受賞した時のものらしい。

                                                     ケネディセンター名誉賞

そこでは、称賛をこめて受賞者を敬愛するアーティストたちが受賞者の楽曲をステージで披露するのだが、

その圧巻が、ロックバンド「ハート」のリーダー、アンとナンシーのウィルソン姉妹による「天国への階段」。

あくまでもオリジナルに忠実に奏でられる美しいメロディ。

それを情感豊かに歌いあげるアン・ウィルソンと女性コーラスのメンバーたち。

やがて力強いドラムとともに、これまたオリジナルの再現かと思われるような感動的なギターソロが始まる。

そして終盤、いつのまにか現れた大合唱団がこの名曲をさらに盛り上げていく。

その熱演に酔いしれる観客の中には、バラク・オバマ夫妻やヨー・ヨー・マの姿も...。

 

さて、当のレッド・ツエッペリンのメンバーたちは...

今は白髪で好々爺としたギターのジミー・ペイジ。

精悍なあの美男子も昔、ボーカルのロバート・プラント 

あいかわらず地味なまま、年を重ねたという風貌、ベースやキーボードなどマルチプレーヤーのジョン・ポール・ジョーンズ。

最初は、「やるな...」というまなざしでステージを見つめる彼らだったが徐々にその表情は熱を帯びていく。

その中でもっとも印象に残ったのがロバート・プラント。

次第に涙目となり、クライマックスでは流れ落ちる涙を手でぬぐうしぐさも...

そんな彼らを見つめつつ、

私自身も当時意味もわからず暗記したクライマックスの一節を口ずさんでいた。

And we wind on the road

Our shadows taller than our soul

There walks a lady we all know

Who shine white light and wan show

How every thing still turn to gold

And if you listen very hard

The tune will come to you at last

When all are one and one is all

To be a rock, a natural

....And she's buying a stairway to heaven

 

 

 

 

あれから45年。

そんな懐かしい思いを胸に、久しぶりにレッド・ツエッペリンⅣをレコードで聴いてみた。

1970年前後、ハードロックという音楽ジャンルを切りひらいたレッド・ツエッペリン。

今の彼らの風貌からは想像もできないほど

激しく躍動的なサウンドが昔のまま繰り広げられたわけだが、

その中には今まで感じたことのない、

どこかやさしく、切ない気持ちさえ感じさせる音も含まれていた。

 

 

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高度ゼロメートルの風景 ふたたび By空倶楽部

2017-09-19 | 空倶楽部

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 


 

航空機に搭乗する際、

ほとんどの場合、ボーディング・ブリッジを通って直接機内へと乗り込むのだが、

たまに搭乗口が変更となり、バスラウンジへ回されることがある。

いったん外へ出て、バスで搭乗機へ移動するため、

悪天候や搭乗にかかる時間が長引くことなど煩わしいのだが、

一方でその機会でしか見ることができない景色にも出会う。

以前、当ブログでも取り上げたが、高度ゼロメートルの風景 のことである。

その日、夕刻の羽田発小松便は使用機到着遅れのため、すでに出発15分遅れのアナウンス。

悪いことは重なるもので、一本前に同じ搭乗口を使う札幌便が機材故障のため、

搭乗口は変更、バスラウンジ出発の搭乗となった。

搭乗案内時間にして30分遅れ、バスで搭乗機に着いた時にはすでに45分遅れとなっていた。

そして、バスで案内された駐機場で出会ったのがこの光景。

間近で見る航空機の大きさに子供のようにはしゃぐ(もちろん心の中だけだが...)

さらに振り返ると...。

8月の間、天気が悪かった東京もこの日は快晴。

美しい夕焼け空が出迎えてくれた。

変更アナウンスを聞いたときは、多少落ち込みもしたが、

搭乗口変更と45分遅れがなかったなら

この夕焼けに出会えなかったわけだから、

むしろ、この光景に引き合わせてくれた出発トラブルに感謝すべきだろう。


なんとなくの選曲はイーグルス中期のビッグヒット。

イーグルスはドン・ヘンリーやグレン・フライだけではないぞ、

とばかりにランディ・マイズナーの傑作。

 

  Eagles - Take It To The Limit  

 

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「バベルの塔」見聞録

2017-09-16 | 折にふれて

その日の午前中、ひとつ仕事を終えたあべのハルカスでのこと。

大阪の街を眺めながら、なにげなくネットを検索したところ、

肥後橋の国立国際美術館でブリューゲルの「バベルの塔」が展示されていることを知った。

 

バベルの塔とは、(よく知られた話であるが念のため、)旧約聖書に記された物語で、

「人々が天にもとどく塔を造ろうとしたところ、

それをよく思わない神が、人々の言葉を混乱させ、意思疎通ができないようにしたところ

人々は塔の建設をやめ、方々に散らばった」・・・という話。

そして今回、国立国際美術館に展示されている「バベルの塔」は

オランダの画家、ブリューゲルが描いた宗教画で、

数ある「バベルの塔」の絵画の中でもっとも有名なものとされているもの。

おそらく誰もが「どこかで見たことがある」、と思うはずだ。

 

「こんなチャンスはめったにない。」

昼休みの時間をうまく使えば見にいけるはず...

そう思って、国立国際美術館へ急行。

 

...ということで「バベルの塔」見聞録。

その第一印象、行列の先、遠目に「バベルの塔」を見つけたときは「?!」だった。

なにが「?!」かというと、絵画のサイズが拍子抜けするほど小さいのだ。

その大きさ、横の長辺で70センチとちょっと。

壁一面もあろうかと思うほどのスケールを勝手に想像していたのでそう驚いたのだが、

しかし、そんな「拍子抜け」など間近にこの絵を見た瞬間に吹っ飛んでしまった。

ピーテル・ブリューゲル一世が「バベルの塔」を描いたのは16世紀。

この頃から、宗教画に風景画としての要素が醸成され始めたというが、

主題の塔はもちろん背景の農村や海辺の風景などが

ただよう風まで感じられそうなほど写実的に描かれており、

また、それらが小さなキャンバスの中に緻密に凝縮されている。

緻密と書いたが、例えば、わずか3ミリばかりの描写ながら、無数の人間が塔の建設に関わる様子がいきいきと伝わってくる。

外装の漆喰をかぶって真っ白になって作業する人びとに、

滑車を操り、力を合わせレンガを荷揚げする人々など。

まるで「神の怒りにふれた会話」まで聞こえてきそうなほどだった。

ふと思ったことだが...

緻密に描かれた人々の営みこそが、神の怒りにつながるバベルの塔の暗示としてブリューゲルが伝えたかったことかもしれない。

公式HP ブリューゲル バベルの塔

 

ところで...。

驚きの技巧が散りばめられた「バベルの塔」を大きな感動とともに存分に鑑賞してきた次第だが、

その高さ、「天にもとどく」というがいったいどれくらい?

3ミリに描かれた人間を170センチの身長と仮定すると、

その高さは510メートルにもなるとのこと、しかもまだ建設途上。

ということは、ここ大阪にある日本一高いビル「あべのハルカス」でさえ及ばないということになる。

 


折にふれての選曲は「見張り塔からずっと」。

オリジナルはボブ・ディラン。

そしてこの曲をメジャーにしたのが早世の天才ギタリスト、ジミ・ヘンドリックス。

その他多数のカヴァーがあるが、今回取り上げたのはデイブ・メイソン。

ボブ・ディランやジミ・ヘンドリックスに比べるとポップでメロディアスな仕上がりとなっているものの、

元来この曲が持つスリリングな疾走感は失われていない。

個人的ながら、先のニ作に勝るとも劣らない傑作だと思っている。

 

All Along The Watchtower-Dave Mason

 

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鯨波 「しらゆき」が走る風景  鉄写同好会

2017-09-11 | 鉄道写真

毎月11日は「鉄写同好会」の日。

詳しくは発起人てくっぺさんのブログ「高橋さんの写真記念館」をご覧ください。

 


 

新潟県柏崎市鯨波海岸。

トワイライト・エクスプレスを追いかけて、前回ここへやってきたのがちょうど3年前の夏。

その半年後にトワイライト・エクスプレスは廃止となり、ここへ来ることもないだろうと思っていた。

ところが...。

今年の1月に仕事で新潟へ出向く機会があった。

以前は、金沢と新潟を特急「北越」が直接結んでいたが、

北陸新幹線の開通とともに「北越」は廃止され、

今は北陸新幹線を経由し、上越妙高駅で特急「しらゆき」に乗り換えて新潟へと向かう。

その上越妙高駅でホームに入ってくる「しらゆき」を初めて見たのだが、

特急といえば、「サンダーバード」や「しらさぎ」の洗練されつつも淡白なフォルムを見慣れているせいか、

降りしきる雪の中、トリコロールの鮮やかな車体がやってくるのをかなり印象的な光景として記憶している。

その「しらゆき」の車窓から日本海を眺めながら、

また鯨波で、今度は「しらゆき」を撮ってみたいと思い始めていた。

そして、どうせ撮るなら、トリコロールが似合う夏の海、

それも夕景...ということでふたたびここへやって来たわけである。

 

さて、その夕景。

 

8月最終の土曜日。

鯨波を通過する「しらゆき」と夕陽が重なるチャンスは8月の終わりの時期しかない。

下り「しらゆき」の通過時間が18時5分頃、一方の日の入りが18時20分。

その撮影条件は、3年前にトワイライトエクスプレスを待ったときとほとんど同じ、

不思議とそれを覚えていて、カメラ設定に迷うことはなかった。

ちょっと残念だったのは、夕陽が輪郭を整える前に「しらゆき」がやってきたことだが、

こればかりは週末限定しろうとカメラマンにはどうしようもない。

今回はご愛敬ということでリタイア後の楽しみとしてとっておくことにしよう。


なんとなくの選曲は

テレフォン・ライン  エレクトリック・ライト・オーケストラ。

プログレシブというジャンルながら、ちょっと懐かしいサウンド。

Electric Light Orchestra - Telephone Line  

 

 

 

 

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戸隠 鏡池にて By空倶楽部

2017-09-09 | 空倶楽部

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 


 

引き続き戸隠高原から。

戸隠名産の蕎麦とともに楽しみたかったものがもうひとつあった。

それがこの風景。

 

鏡池といい、その名が示す通り、

今月の空倶楽部のお題、「映りこみの空」にはもってこいの風景...

のはずだったが、残念ながら雲の多い空模様となってしまった。

まあしかし、そのぶん木々の緑がしっとりと写ってくれたかと自分に言い聞かせたが、所詮負け惜しみ。


 

そして、そんな一面の雲を映した鏡池をながめながら思いついた曲が

ジャクソン・ブラウンのファーストアルバムに収められていた「フロム・シルバー・レイク」。

Jackson Browne - From Silver Lake

題名と語り口調の落ちついた曲の雰囲気から選んだ次第だが、

あらためて訳詞を読んでみると、銀色に輝く湖を歌っているのではないようだ。

帰らぬ「兄」を待つ心情をあいかわらずの難解な歌詞で表現しているが、

当時(1972年)のアメリカの世相から、反戦的なニュアンスが込められているのではないかと感じた。

 

 

 

 

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蕎麦と涼風のある風景

2017-09-05 | オトナの遠足

8月最後の週末に出かけた戸隠高原。

つづら折りの坂道を登っていくと、

計器パネルに表示される外気温が見る見るうちに下がっていく。

平地ではあいかわらず厳しい残暑が続いているが、ここは別世界だ。

そして、戸隠といえば蕎麦。

わんこ蕎麦や出雲蕎麦と並び、日本三大蕎麦に数えられ、

数十の蕎麦屋が軒を連ね、開店前から行列ができる店も少なくない。

澄んだ空気に透明な湧水、そして目にやさしい風景...

瑞々しい自然をすべて凝縮した戸隠の蕎麦。

そんな蕎麦の味を心待ちに高原の散策を楽しむ。

その気分は、題して「蕎麦と涼風のある風景」


 

戸隠で感じた清々しい風。

それを運んでくれるかのようなライ・クーダーの爽やかなギター の音色。

Ry Cooder - I Think It's Going To Work Out Fine

 

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おわら風の盆

2017-09-03 | 若狭 越前 越中

富山市八尾町。

養蚕と農業を生業としてきた山あいの静かな町だが、

この地に、9月1日からの3日間、全国から20万人を超える人がやってくる。

立春から二百十日、この頃に吹く激しい風を静めるためにいつしか始まったという「おわら風の盆 」。

 

哀愁をおびた胡弓と三味線の音色、それに合わせて歌われる恋の歌、おわら節。

そのおわら節にのせて三日三晩踊り明かす。

そんな地域の祭りが広く知られることとなり、今では全国各地からどっと人が押し寄せ、

熱烈なリピーターも多いという。

踊り手たちは二十五歳以下の未婚の男女。

男女それぞれ踊りが異なり、いずれも四季の生活を所作で表現している。

その踊り、男性はあくまでも強くたくましく、女性は優雅でしなやかなのだが、

全体としての調和がとれていて、まるでひとつのドラマを見ているようだ。

この祭りに通い始めてすでに10年は経っていると思う。

山が近く、三本の川に囲まれている地形のせいか、

必ずと言っていいほどにわか雨が降り、

年によっては雷雨で踊りが中断されたこともあった。

ところが、今年に限っては終始快晴。

ここちよい秋風を感じながら、祭りを楽しむことができたのだが、

それも、きっとこの子たちのおかげ。

踊りに込めた強い願いが空にも通じたものと感謝した次第だ。

 

 

 

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