折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

「流星」 ある冬空の記憶

2017-02-28 | 日常

ある冬の日、空は朝から晴れわたり、しかもその空はそのまま夕刻まで続いた。

「弁当忘れても傘忘れるな」、そんな言葉があるくらい、

北陸の冬空は天気の移り変わりが目まぐるしく、

朝から夕刻まで快晴の空が広がったことは記憶にないくらいめずらしい。

そして、日暮れ間近。

その空が漆黒に変ろうとする時、まるで流星の軌跡のような飛行機雲がいくつも現れ、

その瞬間、ふと、四校記念館の碑に刻まれた詩を思い出した。

旧第四高等学校で学んだ作家井上靖によるものだが、全文を記憶していたわけではない。

青春の日、それから年を重ねて人生の終焉を間近にした日の、

それぞれの思いを北陸の冬の砂丘に現れた流星に託した詩が

鮮やかな情景として思いだされたのだ。

 

「流星」

高等学校の学生の頃、日本海の砂丘の上で

ひとりマントに見を包み、仰向けに横たわって

星の流れるのを見たことがある。

十一月の凍った星座から、一條の青光をひらめかし

忽焉とかき消えたその星の孤独な所行ほど

強く私の青春の魂をゆり動かしたものはなかった。

それから半世紀、命あって、若き日と同じように

十一月の日本海の砂丘の上に横たわって

長く尾を曳いて疾走する星を見る。

併し心うたれるのは、その孤独な所行ではなく

ひとり恒星群から、脱落し

天体を落下する星というものの終焉のみごとさ

そのおどろくべき清潔さであった。

                         井上靖


Stardust - Nat King Cole

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あるカメラ考  MINOLTAの系譜 

2017-02-25 | 写真生活

昨日の朝のこと。

日本経済新聞に目を通していたら、

「カメラ展示会 主役はソニー」なる見出しに釘づけになった。

横浜で開催されているアジア最大のカメラ展示会「CP+」でソニーが最も大きなブースを確保し、

キャノン、ニコンという二強を差し置いて気を吐いているという。


記事を要約すると。

  「日本企業のカメラ出荷台数は減少が続き、その背景にはスマホのカメラ機能の向上がある。」

  「幅広い商品群を持つ首位のキャノンも市場縮小の影響を受け、ニコンは構造改革を余儀なくされている。」

  「その一方、ソニーは画像センサーを内製する強みを発揮、高価格帯のレンズ交換式カメラの売上高を2年間で3倍に伸ばした。」


ともすると、家電品の延長のように揶揄されてきたソニーのカメラだが、

そのユーザーとしてはまことに喜ばしい話だ。

ソニーの一眼レフを使い始めてやがて10年となる。

なぜ、ソニーを選んだのか。

その理由がこの写真の中にある。

右のカメラが常用しているSONY α99。

そして左が30年前のフィルムカメラ、MINOLTA α7700i で、

子供たちの成長を記録しようと、当時、薄給の身でありながらボーナスをつぎ込んで買い求めたものだ。

1975年、EOS、Nikkon、PENTAXといったブランドの後塵を拝していたMINOLTAが起死回生を狙って発売したカメラがα7000。

本格的なオートフォーカス機能を搭載し、「αショック」なる言葉まで生みだした名機だ。

α7700iはその2代目で、やはりそのオートフォーカス機能が購入の決め手となった。

それから10年ほど、外出の傍らには必ずこのカメラがあり、

子供たちの成長の記録は大量のアルバムとなって今も残っている。

しかし、子供たちが大きくなるに従っていっしょに外出する機会は少なくなり、

やがては写真への興味も薄れて、いつの間にかこのカメラも棚の奥深くに仕舞い込まれたままになった。

話は変わるが、もう少し昔の話が続く。

10年ほど前からブログを書いている。

最初は仕事場での気づきなど文章が中心だったが、

少しずつ写真を差し込むようになり、

gooブログへ引っ越すあたりから、写真中心のブログとなり、再びカメラへの興味が湧きはじめたのである。

最初はコンデジを使っていたが、次第に高機能な一眼レフが欲しくなり、

カメラ雑誌を立ち読みしたり、カメラ店へも通うようになった。

いろいろと調べるうちに、MINOLTAはすでにカメラ事業から撤退、

αシステムはソニーが継承し、レンズ資産も受け継がれていることを知った。

α7700iで使っていたレンズがいくつかあったので、

それがソニーを選ぶ理由のひとつではあったのだが、

そもそも30年前のレンズなど、使えたとしても、

デジタル技術はもちろん、今の自動化技術では制限が多いことは理解したうえでのこと、

資産継承は表向きで、「滅びゆくもの」への感傷がソニーを選ばせたように今では思っている。

現に、今使っているレンズはすべて最近買い求めたもので、MINOLTAのレンズを使うことはもうない。

といいながらも、当ブログの使用カメラにいまだにMINOLTA α7700iと書いているのは自分ながら滑稽なところだ。

 

そして、これがソニーのデジタル一眼を常用としたころ、最後にα7700iで撮った写真。

写真として焼き付けたものをスキャナーで読み込んでいるので、

解像度など、再現に制限はあるが、

諧調の豊かさなどアナログの良さが存分に伝わってくる...

そう勝手に思っていて、当ブログのサイドバーにも表示している。

 

さて、この話には実は大きなオチがある。

ソニーのαシステムにはAマウントとEマウントがあって、

AマウントはいわゆるMINOLTA以来の系譜、

そして、Eマウントは最近話題のミラーレス一眼のレンズ群を指す。

つまり、同じαシステムでもAとEではまったく異なるレンズ群なのである。

新聞記事を紹介した「CP+」で脚光を浴びているのは、

今やAマウントにとって代り、αシステムの主流になりつつあるEマウント。

一方で、私のカメラα99はAマウント。

ほとほと「滅びゆくもの」にとり憑かれているようである。

 

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空から空倶楽部  By空倶楽部

2017-02-19 | 空倶楽部

小松空港を離陸した飛行機は、上昇しながらいったんは南へ向かい、

日本列島を横断した後、大きく旋回して進路を東にとる。

その後、富士山を左手に眺めながら、遠州灘上空7~8000メートルを飛行し、

伊豆半島、大島上空を経由して関東へと向かう。

この日の天候は上々ながら、ふと機体の下に目を移すと、

海と空の間に無数の細かい雲が浮かんでいた。

 

やがて、飛行機は徐々に高度を下げはじめ、

横浜上空あたりともなると、ベイブリッジ越しのみなとみらいの風景が手にとるように鮮明となる。

飛行機はそのまま直進し、いったん外房へ出た後で大きく北西へ旋回し、房総半島を横切って東京湾へと進入する。

 

さらに高度を落とした飛行機は臨海工業施設を間近に見下ろしつつ、

東京湾アクアラインに添うように羽田空港に向けて最終の着陸態勢へと入っていく。 

 

この日は久々の窓側席とあって、その風景にかぶりつき。

空写真といっても、かなりのこじつけとなるが、題して「空から空倶楽部」。


本日は空倶楽部7周年。

お祝いを申し上げるとともに、あらためて、発起人のchacha○さん、かず某さんに心から感謝申し上げます。

そこで、過去一年で印象に残った空写真を掲載と...

 

晩秋、陽が傾きはじめた羽田空港。

離陸に向けて、ゆっくりと動きはじめたJAL機に光芒が降りそそぐ。

日本を代表する航空会社でありながら経営危機に陥ったJALが

見事にV字回復を遂げたことは記憶に新しい。

話は変わるが、北陸新幹線の開通以来、小松と羽田を結ぶ航空路の利用客は激減した。

航空各社対応に追われる中、JALは使用機こそ小型化したものの、

便数を減らすことなく、利用客の利便性は以前通り確保している。

きびしい利用環境にもかかわらず、かつてのフラッグ・キャリアの使命感がそうさせるのか、その心意気に只々こころ打たれる。

伝統の赤い「鶴丸」のマークに、「がんばれ!ニッポン!」の文字。

次第にエンジン音を高める白い機体に「がんばれ!JAL!」と小さなエールを送った。


 先週あたりからずいぶんと暖かくなってきた。

寒の戻りはあるものの、春の到来を実感している。

選曲は、春の訪れとともに聴きたくなるシャナイア・トゥウェイン。

Shania Twain - Forever And For Always

 

「9」のつく日は空倶楽部の日   

詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 

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カレーなる街角で

2017-02-16 | 日常

海にひらけた歴史ある街の一角から。

歴史あるといっても、それは昔の話。

その歴史に触れたくてこの街を訪れる人はおそらく少ない。

博物館通りと名づけられたこの街角。

かつての繁栄の象徴で、今は博物館となった銀行の建物を中心として整備されたとのことだが、

その歴史よりも、瀟洒な景観に惹かれて訪れる若者が多いようだ。

 

一方で、カフェやバー、美容院など新しく形成された街並みと張り合うように、

「置き去りにされまい」とばかりに、その存在感を主張するかつての佇まいも残されている。

 

 

 

さらに、旧家を改装したこんな資料館も...

新旧の狭間にあって、その仲をとりもつことで、この街並の景観にひと役買っている。

そんな存在に思えた。

 

さて、そんな街角のカフェでいただいたランチ。

インド風チキンカレーとのだが、

「インド風」という遠慮がちなネーミングは

玄米ご飯にれんこんやかぼちゃなど和風素材がトッピングされている由縁か。

しかし、その味は香辛料がきいたスパイシーな本格派、

インドでも充分に通用するのではないか(もっともインドへは行ったことがないが...)

そう思えるほど実にうまかった。

このカレーをひと口食べた瞬間、(なんとも単純だが)この街がいっぺんに好きになった。

がんばれ! カレーのうまい街角!

 


記事とはまったく関係ないが...

最近、あらためてハマっているあの伝説の名作の主題歌

高橋洋子  残酷な天使のテーゼ

なるほど。

この人が歌っていたのか。

 

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光の春  2017冬の金沢散策

2017-02-12 | 金沢

西日本を中心にこの冬いちばんの寒波が襲来...

とのことだが、この冬に限っての金沢は冬将軍の攻撃対象ではないらしい。

早々に大雪警報は解除され、週末は断続的に雪が散らつくものの、

時折り青空ものぞく、冬としてはまずまずの空模様となった。

金沢を訪れたい時期として冬をあげる観光客も多いので、雪のない金沢は多少拍子抜けの感もあるが、

当ブログ、金沢発の使命(?)として、めずらしくもないが、今年の冬の金沢を点描してみることとした。

 

武家屋敷界隈。

土塀を守る菰(こも)がけは、兼六園の雪吊りと並んで、冬の風物詩。

新幹線開通以来、人出に拍車がかかり、ここを訪れる団体客も増えた。

もともと狭い通りなので、風情を損なわない程度に写真を撮るには観光客の隙を狙う根気が必要(笑)。

 

兼六園外周の茶店界隈。

 

金沢は雪国で気温も低いと思われがちだが、

日中、氷点下になることはめったにない。

個人的には東京のビル風のほうがよほど寒いと思うのだが、

観光客のこの姿、完全装備である。

 

さて、うっすらと雪が残る兼六園内。

木立から漏れる、か弱い陽ざしが印象に残った。

 

ところで。

ある新聞のコラム欄の受け売りであるが 、ロシアでは2月のことを「光の春」と呼ぶらしい。

かの地ではまだまだ厳冬ではあるが、陽の光が次第に強さを取り戻しはじめることをそう表現したのだろう。

春を待ち焦がれるしみじみとした心情が込められている。

一日のなかでめまぐるしく天気が変わる北陸の冬。

一瞬だったが、金沢城の上に広がった青い空を眺めながら、

その美しい言葉を思い出した。

 


まったく関係ないが、例によって休日の朝、youtubeのなかで、ビートルズのDon't Let Me Downに目が止まった。

解散から30年ほど経ったころだったろうか、

Let It Be ...Naked というタイトルのCDがリリースされた。

このクリップはその中のものだと思う。

もともとの「Let It Be」、ビートルズの最後のアルバムとされているが、

そのときのビートルズは既に解散状態で、

プロデユーサー のフィル・スペクターがメンバーの意思に反して

過度なアレンジを施したことはかなり有名な話でもある。

それに対して、...Nakedと注釈のついたアルバム。

赤裸々な...という言葉が示す通り、

これがほんとうの彼ら4人最後の姿だったのだろう。

The Beatles - Don't Let Me Down

吹きっさらしのビルの屋上、厚着して演奏する彼ら。

よほど寒かったのだろう、鼻を真っ赤にしたジョンの熱唱(?)が微笑ましい。

 

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置き去りにできなかった空 冬の湖北夕景 By空倶楽部

2017-02-09 | 空倶楽部

湖北、冬の夕景。

 

冬至の頃、夕陽は竹生島めがけて落ちていく。

その夕景を撮りたくて出かけた湖北。

残念ながら天気が良すぎて、赤く輪郭を整えた夕陽とはならず、いったんはお蔵入りにしたはずの空だった。

白とびはしているし、ピントをどこに合わせたかもあいまい。

それでも、あらためて眺めていたら、なんとなく置き去りにすることができなかった空。

 

空倶楽部2月のお題は「樹木と空」。

わずかだが、樹木も含まれているということで...

恥ずかしながら、お題クリア。

 


なんとなくの選曲。

アンチェインド・メロディ  ライチャス・ブラザーズ

はじめて聴いたのは受験勉強最中の頃、

リバイバルで、当時、もちろんブルーアイドソウルなどという言葉もなかった。

Righteous Brothers - Unchained Melody  

デミ・ムーア、パトリック・スウェイジ主演の映画「ゴースト」の主題歌として再度リバイバルヒットして誰もがどこかで聴いたことがある曲...

そう思うはずだが、エヴァーグリーンだということを知る人は少ないかもしれない。

 

 

 

「9」のつく日は空倶楽部の日   

詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 

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雪景色にこころ躍る 余呉

2017-02-05 | 琵琶湖 余呉 湖国

余呉で出会った雪景色

すでに立春を過ぎ、冬もあとわずかの辛抱。

といっても、今年の金沢はまったくといっていいほど雪が降らない。

聞いた話によると、石川県の降雪量は例年に比べて4割も少ないのだという。

金沢では積もっても10センチ程度、感覚的にはもっと少なく、こんな冬は記憶にない。

 

ということで、雪国に住みながら、

よその土地の雪景色をよろこぶ変人が撮った銀世界。

 


雨の日曜日、持ち帰った仕事を片づける傍らで、BGMとして流していた古い洋楽。

その中でプレスリーが心にしみた。

Elvis Presley - Always On My Mind

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「ワカサギ狂騒曲」 余呉、もうひとつの冬景色

2017-02-01 | 琵琶湖 余呉 湖国

前回に引き続き余呉から。

ここにはもうひとつ冬景色がある。

夜明けとともに続々と押し寄せる車、滋賀ナンバーはもちろんのこと、

京都、大阪などの近畿勢に岐阜や愛知といった中京勢など...、そのお目当てはワカサギ釣りだ。

 

陽ざしはまだ弱く、気温は零下。

にもかかわらず、桟橋に所狭しと陣取った釣り人たち。

ひとの一所懸命な姿、それもこれだけ大勢の人たちをレンズ越しに眺めていたら、

釣りなどしたことがないくせに、それだけでワクワクしている自分に気づき、自然と頬が緩んでいた。

釣り人たちの熱気が伝わってくるその光景、題して「ワカサギ狂騒曲」。

来年も、再来年も...その先もずっと、この光景が見たい、一瞬寒さも忘れてそう思った。


時は過ぎていく。

だから、動き出すんだ。

ワクワクする気持ちがなくなったあとでは遅すぎるから...

 
    Eagles - 'After the Thrill is Gone'

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