折にふれて

季節の話題、写真など…。
音楽とともに、折にふれてあれこれ。

雪の科学館 休館前に

2025-02-12 | オトナの遠足

前回、冬枯れの空と題して雪の科学館がある風景を取り上げた。

展示そのものは中谷宇吉郎博士の研究業績を紹介するものだが、

設計者の磯崎 新氏の設計は展示施設だけに留まらない。

周辺環境も取り込んで、いや、柴山潟や白山も加えるなら、

数キロ、数十キロにも及ぶ風景も設計に取り込んでいる。

つまり、人の視界を大きく超えたスケールの風景設計が

雪の科学館のもうひとつの魅力だと思うのだ。

前回の記事で、「自分だけの風景を探してみて」と記したのは

人の視界を大きく超えた風景設計だから、

ここを訪れた誰もが違う景色を探すことができるということを伝えたかったのだ。

 

前置きが長くなったが、雪の科学館がある景色をいくつかご紹介。

科学館に続く長いスロープを行くと建物の正面にたどり着く。

そこから館内に入るのだが、今は地震災害の為、ここは閉鎖され

1階の通用口が臨時の入館経路となっている。

これから復旧工事に入り、正規の通路に戻るのだが、

それは一年後のことになる。

 

建物脇の放水路から眺めた柴山潟と白山連邦。

 

科学館の裏手、柴山潟のほとりにはカフェスペースがあって

その付近から眺めた白山連邦だ。

 

実は。今回ご紹介した写真は現在のものではない。

10日間居座った寒波が緩み、晴れ間が出るとの予報だったので

昨日、雪の科学館に向かったのだが、期待したほどの天候とはならなかった。

それでも、あらためて雪の科学館を紹介したいという「お国自慢」が治まらない。

それで、7年前に訪れた時に撮った写真を探し出し、蔵出しとした次第だ。

 

雪の科学館は長い改修工事に入る。

2027年から28年にかけての冬にこの風景が戻ってくることを

期待してやまない。

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冬枯れの空、雪の科学館で  By空俱楽部

2025-02-09 | オトナの遠足

今日は空倶楽部の日。そして2月のお題が「樹木と空」。

前回の記事で紹介した雪の科学館で眺めた空で参加します。

     

雪の科学館の建築設計は磯崎 新さん。

雪の結晶を模した六角形の建物がリズミカルに並ぶ特徴的な外観と

グリーンランドから運び込んだ石を敷き詰めた中庭が印象的で

建築設計や空間デザインを志す人たちにも人気がある。

が、魅力は建物だけではない。

雪の科学館は広大な芝の丘の上に建って見えるように配置されている。

なだらかな坂を登っていくに従って

その背後に柴山潟と白山が見えてくる。

実はこの見せ方も綿密な風景設計によるものだ。

なので、雪の科学館を訪れることがあったら、

すぐに館内には入らずに、まずは丘の麓に立ち

そこからの風景を楽しむように

ゆっくりと建物に向かって歩いてほしい。

時期は断然冬がいい。

冬枯れの景色の先、青々とした柴山潟越しに冠雪した白山連峰が連なっている。

そこで、自分だけの風景を探してみてはどうだろうか。

 

空倶楽部の日。詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで

 

 

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雪の科学館

2025-02-04 | オトナの遠足

JR3社の共同企画 Japanese Beauty Hokurikuキャンペーン

そのポスターのひとつが石川県加賀市にある『雪の科学館』を紹介している。

     
              JRおでかけNETより転載 

 

雪の科学館は加賀市出身で雪と氷の研究に生涯をささげた中谷宇吉郎博士の業績を展示している。

そして、その業績を集約する言葉としてよく知られているのが

「雪は天から贈られた手紙である」

漆黒の空からはらはらと落ちてくる雪を文学的に形容したように思えるかもしれないが

それだけではなく、もっと深いニュアンスが込められている。

博士は実験室でいくつもの雪の結晶を人工的に作り出した。

雪の結晶は上空の気温と水蒸気の組み合わせによって様々なかたちとなるが

雪を人工的に作り出すことでその相関を明らかにしたのだ。

その成果はナカヤダイヤグラムとして紹介されているが

逆に、地上に降りた雪の結晶によって上空の気温と水蒸気の状態がわかる。

そのことを博士は「天から贈られた手紙」という言葉に込めたのだ。

雪の科学館では博士が遺した科学的文献だけではなく随筆や画集も紹介している。

つまり、博士は科学者である一方、文学者としての一面も持ち

科学で解き明かした成果を情緒的な言葉に置き換えたのである。

雪の科学館には遠方からの来訪者も多い。

ダイヤモンドダストを人工的に作り出すなど

雪や氷にまつわる興味深い展示も多いのだが、

一方で建築デザインを志とする人たちにも人気がある。

そのお目当てがこの光景。

柴山潟越しに遠く白山を望む中庭に

博士が晩年に研究拠点としたグリーンランドから運ばれた無数の石が散りばめられている。

石は無造作に置かれただけのものだが、それが修景となっている。

地元びいきで言うのではないが、必見の風景だと思う。

さて...。

ここまで持ち上げておいて梯子を外すようだが

雪の科学館は4月から来年の3月まで長期休館に入る。

能登半島地震による被害を修復するためだ。

なので、この風景も一年間はお預け。

いや、せっかくなら冠雪した白山とともに眺めてもらいたいので

二年越しのお預けとなる。

毎年、この時期に訪れるものとしては寂しい限りだが

新たな企画など、この機にぜひ取り組んでほしいものだ。

 

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平泉寺 雪景色 2

2025-01-17 | オトナの遠足

平泉寺がある福井県勝山市は奥越と呼ばれる山間部にあって

金沢からだと国道157号線で約70キロ、1時間半ほどの道のりだ。

一般道の70キロとは言え、沿線にいくつものスキー場があるほどの山道で

県境の谷峠では標高900mを超える。

秋などは紅葉が美しい山岳道路だが、

厳冬ともなるとかなり雪深い難所を抜けることになる。

そして、平泉寺に着いて出迎えてくれた景色もこのとおり。

さらに境内へと向かうのだが、歩くことができるのは先に進んだ誰かが雪を踏み固めただけの道。

少しでも踏み外そうものなら深い雪に足を取られて転びそうになる。

さて、正式な名前は平泉寺白山神社。

「寺」と「神社」がつく奇妙な名前だがざっくりとその歴史を書き連ねると。

元々は8世紀に、富士山、立山と並ぶ三霊山のひとつ、白山を神体として開かれたとある。

山岳信仰、つまり自然環境を畏敬することから始まったようだが

12世に比叡山延暦寺の庇護を受けることになった。

庇護の事情までは記されていないが、経済的な理由とかってに想像している。

つまりこのころに平泉寺と呼ばれるようになったが

明治期の神仏分離令により仏教色が褪せた後も

寺の字だけは残り『平泉寺白山神社』と呼ばれるようになったとある。

     

その歴史を照らしつつ境内図を眺めてみると

拝殿や供養塔、発掘跡など興味深いものが多い。

ところが残念ながらすべては雪の下。

平泉寺のほんとうの魅力はこの景色からは伝わらないのだ。

     

 

今回の訪問はただの思いつき。

雪化粧した山寺への憧れからだったが

その縁起を知ると雪の下に隠れた平泉寺を眺めてみたいとの思いが俄然募ってきた。

木洩れ日。青々とした緑の苔と石畳。早春、初夏、秋と折々の

そんな境内を思い浮かべながら雪景色を後にした。

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平泉寺 雪景色

2025-01-13 | オトナの遠足

平泉寺白山神社。 

     

もう2年以上も前に奈良の室生寺を訪れた時に

その時は秋だったが、季節を飛び越して

雪化粧した山寺の風景を重ねていた。

雪と伽藍のモノクロの世界。

そんな人気のない静寂な風景を眺めてみたいと思ったのだ。

北陸は雪が降る上に信仰の厚い土地柄でもあるので

山寺の雪景色など案外簡単に出会えるとその時は思っていた。

ところが、悪天候が続く北陸の冬に、

しかも週末に出かけようと思うと

中々その機会が巡って来なかった。

昨日はこの冬初めてと言ってもよいくらいの晴天。

この日は逃せないと福井県山あいの勝山市にある

平泉寺へと向かうことにした。

山寺の雪景色を求めて訪れたにもかかわらず、

平泉寺に着いた当初はたじろいだ。

伽藍は雪に埋もれていて思い描いた景色と大きく違っていたのだ。

平泉寺を訪れたのはこれが初めて。

観光写真で知る平泉寺は石と苔に覆われたイメージが強く

そこにコントラストとして雪が加わると勝手に想像していたのだが。。。

一面が深い雪に覆われていて、参道にはわずかに人が歩いて踏み固めた雪道が出来ているだけ。

長い参道を雪に足をとられながら歩き始めたものの

「この銀世界では」と引っ返そうかとも思ったのだが

けれども、北陸では珍しいせっかくの好天。

気を取り直して、ファインダー越しに境内を眺めて見たところ

それなりの雪景色かなとも思えてきた。

ということで、二回に分けて雪深い平泉寺白山神社をご紹介することにする。

     

 

 

 

 

 

 

 

 

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インスタレーション

2024-10-11 | オトナの遠足

国立新美術館での一コマ。

インスタレーションという芸術の表現手法があるという。

門外漢の理解だが、

空間全体が作品であり、鑑賞者は個々の作品を鑑賞するというより

作品に囲まれた空間そのものを芸術作品として体験する、ことではないかと思っている。

感覚的なものだから写真では表現できないのだが

インスタレーションとして感じたものにカメラを向けてみようと思った。

設計者の黒川紀章氏が意識したかどうかはわからないが

館内のあちこちで、建物の造作はもちろん調度であっても人であっても

瞬間を繋ぎとめるとその空間には芸術性があるように思えてくる。

「ここにこんな景色があった」

「あそこからはどんなふうに見えるのだろうか」

と館内を巡りながら、

インスタレーションとはこのような感覚を楽しむことなのかな

と思いつつファインダーをのぞき込んでいたのである。

 

 

 

 

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オトナの遠足:冬の巻  By空倶楽部

2024-02-09 | オトナの遠足

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで


立春に相応しい冬晴れの日。

毎年恒例にしている「オトナの遠足」に出かけることにした。

     

一見何の特長もない池に見える。けれどもここ鴨池は水鳥たちの楽園。

わずか10ヘクタールほどの小さな池だが、

水鳥たちの生態系を守るラムサール条約に指定された湿地帯。

いわば水鳥たちの聖域、サンクチュアリなのだ。

論より証拠。景色を引き寄せてみるとこの通り。

    

この日はヒシクイがほとんどだったが、

マガンやコハクチョウなど様々なガンカモ類が

多い時には数千羽単位で羽を休める。

    

バードウォッチングに興味があるわけではないが、

冬になって水鳥たちがやってきたと聞くと無性に出かけたくなる。

目的もなくただこの景色を眺めるだけで満足するのだ。

 

ここでひとしきり鳥たちを眺めた後、もうひとつ向かう先がある。

鴨池から車で5分ほどの片野海岸で、

そこには渚に向けて大きく窓を開口したカフェ『うみぼうず』がある。

      

鴨池で目から心を休めた後、次は舌で心を温めるのだ。

コーヒーをすすりながら波の向こうの海を眺める。

     

そして、「あの彼方にもう春が来ているのだろう」と想像してみる。

そう。春の気配をうかがうこと。これこそがこの遠足の目的なのである。

     


折にふれての選曲はザ・バンド『ラストワルツ』から。

The Band: "It makes no difference".

 

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オトナの遠足 By空倶楽部

2023-08-09 | オトナの遠足

「9」のつく日は空倶楽部の日。

     ※詳しくは、発起人 かず某さん chacha○さん まで


空倶楽部、8月お題の「青い空白い雲」は友人たちとのゴルフの一幕で。

  

年に20回ほどラウンドするが、そのほとんどが仕事関係。

親睦が目的とは言え、何がしかの緊張を感じたりもする。

けれども、そんな中で掛け値なしに心から楽しめるのが友人たちとのゴルフ。

仲間うちの合言葉は「ピクニックに行こう!」だ。

  

その日の最高気温は35℃。

万全な熱中症対策のもとオトナの遠足を楽しんだ次第だ。 

 

 

 

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エッセル堤という風景 2

2023-07-17 | オトナの遠足

エッセル堤の突端で歩いてきた道を振り返ってみた。

渚からここまでは500m。遠く三国の街並みがまるで海に浮かんでいるようだ。

   

前項でも触れたが。

渚からながめるエッセル堤は海に張り出すアーチ状の構造物だが、

間近にするとその整然とした印象とは裏腹に

ごつごつとした岩が積み上げられていることがわかる。

堤が築かれた明治時代の頃はコンクリートの調達も困難だったはずだから、

おそらくは人力で岩を積み上げたのだろう。その難工事ぶりが窺えるのである。

美しさと無骨さ、そして人々の苦労が産業遺産として評価につながったのかもしれない。

   

あらためて突端から風景を。

   

エッセル堤としては突端だが、実はその先にも突堤が伸びている。

昭和23年。直前の福井地震による被災を修復するとともに新たな突堤が増築されたのだ。

その長さは400mを超えるというから、堤として海にせり出す部分の

総延長は1Kmにも及ぶことになる。

そして、日没が近いにも関わらず、新堤の上ではたくさんの人が釣りを楽しんでいる。

エッセル堤と新堤は、景観としてだけでなく、人気の釣りスポットとしても人々に愛されているのだ。

 

さて、その海の道を歩き終えようという頃、いよいよ陽が傾き始めた。

   

 

残念ながら、水平線上の雲が厚めだったので、

空が真っ赤に焼けることはなかった。

けれども、雲の合間から一瞬漏れた光はあたり一帯の雲を輝かせ

思わず声が漏れるほど印象的な空を演出してくれたのである。

 

 

余談だが...。

知人、友人との連絡手段としてlineを使ってもいるが

自分から発信することは少ない。

ところが、この日に限っては劇的な空の移り変わりを

感動のあまり連続投稿した。

受け取った人たちにとっては

着信音がうるさかっのでは...と所業の大人げなさに赤面した次第だ。

 

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エッセル堤という風景

2023-07-16 | オトナの遠足

一週間居座った梅雨前線が北上し、ようやく晴れ間が現れた週末の午後。

それでもまだ雲は多かったが、撮影に出かけることにした。

劇的な空を撮るならかえって好都合と思ったのだ。

目指したのは三国港。海と空が広く開けた夕陽の名所だ。

金沢からだと車で二時間近くかかるのだが、そんな距離など苦にはならない。

むしろ、今日はどんな夕空が現れるかと、ワクワクしながら車を走らせるのだ。

石川県にも夕陽が美しい海岸はいくつもあるのだが

隣県の海を訪れるのには理由がある。

三国港から大きく張り出す突堤。エッセル堤に魅せられているからだ。

いくら夕陽が美しくても海と空だけでは単調な風景でしかない。

そこに圧倒的な存在感で風景を特別なものとしてくれるのがエッセル堤で

海に伸びるアーチ状の突堤は他にはない海岸線の美しさを形作っているのだ。

さて、いつもなら渚からエッセル堤を主題にした風景を撮るのだが

日没まで少し間があったので堤を歩いてみることにした。

   

エッセル堤は三国港内の土砂堆積を防ぐため

明治18年(1882年)にオランダ人技師エッセルの設計により完成している。

渚からながめる堤は幾何学的な美しさを感じさせてくれるが

間近だと遠目の美しさとは裏腹な無骨さ、荒々しさを実感する。

けれども、そんな堅牢さが150年の長きにわたって三国港を守ってきたのだろう。

   

あらためてエッセル堤の全容。

その姿「天橋立の飛龍」のよう、などと表現すると少し度が過ぎるようだが

人が造ったものでこれほど美しいものはそう類を見ないのではと思っている。

現に土木技術史上の価値が認められ経済産業省の近代産業遺産に指定され

また文化的価値という点では国の重要文化財ともなっている。

 

この稿続く。

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