晩秋、東京の街角でふと見かけた紅葉。

Sony α99 Planar 50㎜(f/2.8,1/640sec,ISO100)
さて、前回の記事「Station」を投稿した時にふと思いついたことがあって、
それは「木綿のハンカチーフ」にはふたつのバージョンがあるということだった。
冬へと向かう東京駅の景色を眺めながら、選んだ曲が「木綿のハンカチーフ」だったが、
ふだん耳にする曲とイントロが違うぞ、と気づいた人がいたかもしれない。
ふだん(...そういってもすでに40年以上も経っているが)聴いているのは
ストリングスアレンジをとり入れた華やかなシングルバージョンで、
それに対して、前の記事で紹介したのは至ってシンプルなアルバムバージョンと呼ばれるものだ。
当時売出し中の新進気鋭の作詞家、松本隆が全ての曲の作詞を担当した太田裕美のアルバム。
それが名盤「心が風邪をひいた日」であり、「木綿のハンカチーフ」はそのトップを飾る曲だった。
心が風邪をひく...、この情緒豊かな表現を「感傷」という言葉で理解することは難しくない。
そして、この青春の日にありがちな心の在り様をテーマとしたアルバムだからこそ、
トップを飾る「木綿のハンカチーフ」は華やかである必要がなかったのではないかと思っている。
一方で、売れることが目的のシングルバージョンが華やかなアレンジになったことも当然の結果と思えるのである。
ともあれ「心が風邪をひいた日」のこと。
「木綿のハンカチーフ」、そして荒井由美が曲を書いた「袋小路」、
さらに、これもシングルカットされた「夕焼け」と名曲が続くが
個人的に特に印象深い曲が「青春のしおり」である。
青春のしおり 太田裕美
若い季節の変わり目だから 誰も心の風邪をひくのね
終盤にでてくる歌詞から、この曲がアルバムのタイトル曲であり、
中でも「感傷」というアルバムコンセプトからも重要な歌詞だということは察しがつく。
しかし自分にとってはそれよりももっと思い入れが強く、
遠い日のことを思い起こさせてくれるフレーズがある。
CSNY聞き出してから あなたは人が変わったようね
髪をのばして授業をさぼり 自由に生きてみたいと言った
みんな自分のウッドストック 緑の園を探していたの
夢ひとつずつ消えてゆくたび 大人になった味気ない日々
4人それぞれが強烈な個性をぶつけ合い、時には激しく、そして時にはやさしく心を揺さぶったCSN&Yの音楽。
髪をのばしたり授業をさぼったりはしなかったが
彼らの音楽と詩にはずいぶんと共感したもので、
それを持ち出す松本隆のしかけに「まんまとやられた」、そんな気分になったものである。
木綿のハンカチーフからあちこちと話が飛んでしまったが、
最後に彼らの代表曲で締めくくっておきたい。
スリリングな4人のかけあいが印象的、懐かしくもあり、今聴いても新鮮な「ウッドストック」。
Crosby, Stills, Nash & Young - Woodstock
1969年、ウッドストックでの伝説のロックコンサートをモチーフにしたもので
「夢ひとつずつ消えてゆくたび 大人になった味気ない日々」
の歌詞にあるように一時代を締めくくった曲といえるかもしれない。
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