時報は文字盤を見て知るだけの角時計。電池を替え、時刻を調節してしばらくするとピンポーン。聞いたこともなかったのに。寝間に入ってしばらくするとピンポーン、ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。玄関のインターホンと全く同じで、さも急用と言わんばかりに連続で。誰が何用でと身をふるわせて玄関を見ると、人影と見え、とくとくうなる心臓を抑えて、縁側から庭の門扉を見ても動いていない。十三夜の月はこうこうと、近所もまだまだ暗闇で、電話台を探すとまたピンポーンと“半”の時報。古時計の仕業に全身の力が抜けた。
阿久根市 川畑マスミ(77) 2008/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載
阿久根市 川畑マスミ(77) 2008/6/16 毎日新聞鹿児島版掲載