岩国市 会 員 吉岡 賢一
母の1周忌を終えた。母のお城であり寝室であった部屋は、今やソファがどっかり応接間に変身した。
毎朝、起きがけにシャッターを開ける。人けのない寒い部屋が急に明るく生気を取り戻す。壁や天井に埋め込まれた母の目を感じるときがある。そのたびに、もっと優しく、ああしてこうしてあげたらよかったのに、と頭をもたげる自責の念は相変わらずだ。ただ目の前の悲しさに追われるだけではなく、遠い昔や幅広い母の全体像を思い出すゆとりが、出てきはじめた。
1年という時の流れか、気持ちは随分柔らかくなってきた。
(2009.12.07 毎日新聞「はがき随筆」)岩国エッセイサロンより
母の1周忌を終えた。母のお城であり寝室であった部屋は、今やソファがどっかり応接間に変身した。
毎朝、起きがけにシャッターを開ける。人けのない寒い部屋が急に明るく生気を取り戻す。壁や天井に埋め込まれた母の目を感じるときがある。そのたびに、もっと優しく、ああしてこうしてあげたらよかったのに、と頭をもたげる自責の念は相変わらずだ。ただ目の前の悲しさに追われるだけではなく、遠い昔や幅広い母の全体像を思い出すゆとりが、出てきはじめた。
1年という時の流れか、気持ちは随分柔らかくなってきた。
(2009.12.07 毎日新聞「はがき随筆」)岩国エッセイサロンより