2013年11月 7日 (木)
岩国市 会 員 山下 治子
5%引きでポイント2倍のスーパーの駐車場は、祝日と重なりどこも満杯。やっとこさ駐車すると、メモしてきた買い物を足早に済ませたが、レジも長蛇の列。やれやれと駐車場に戻り、はて、車はどこだ。
確かこの辺り……とカートを引いて歩き回り、ようやく「あった」とキーを開けようとするのだが、なぜか開かない。秋とは思えぬ炎天下に汗が噴き出し、いら立っていると声をかけられた。
「どうかしました?」
「キーが開かなくて」
「これ、私の車ですよ。お宅のはそっちでしょ」
怒り□調でけげんな目をされた。言われてみれば、左隣に色も型も同じ車が並んでいる。
「おばちゃんもニンチなの?」
傍らの女の子の一言に、慌てて口をふさぐと「すみません、失礼言って。母がそれなもんで」とため息まじりに頭を下げられた。
「おばあちゃん、おうち忘れちゃうの。すぐ迷子になるの」
女の子のおしゃべりはあどけないが、介護する者の苦労はいかばかりかと「おつらいでしょうね」と言うと、女性は涙ぐまれた。
車とおうちは違うが、女の子には同じに思えたのだろう。まだ大丈夫と我を張っても老化は否めない。先日、介護保険者証も送られてきた。
「今日が一番若い日」と心して、人生の秋の味覚を味わっていこう。
(2013.11.07 毎日新聞「女の気持ち」掲載)
岩国エッセイサロンより転載