
冬空に凛と咲く白いサザンカの花に、在りし日の夫の面影をしのぶ。自己流で剪定や枝作りを楽しんでいた夫は枝が伸び、葉が茂ってくるのを満足げに眺めていた。
そんなある日、手伝っていた息子が自分の考えで枝を切り落としていた。「あれっ」と絶句した夫は転がっている枝に茫然としていた。その場に微妙な空気が流れた。一方、息子は叱声が飛んでくるのではと固まっていた。しばらく沈黙の後、「澄んだことは終わったことじゃ」と、夫の言葉だった。
咲き誇る大輪の花は、どことなくほほ笑んでいるようだ。
鹿児島市 竹之内美知子 2014/1/1 毎日新聞鹿児島版掲載