はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

清掃

2014-01-11 12:44:11 | はがき随筆
 元日の朝、梁淵に集合との声がかかった。釣友5人で水神様の1年間のアカを丹念に落とした。水神様に焼酎をあげて、5人が思い思いに手を合わせる。私は「去年の大漁に感謝して、今年も5人がけがなく、釣りができること」を祈った。
 そして場所を移して、私たちは新年会を始めた。話題は3月末から始まるマテ貝取りで盛り上がった。アユ掛けの達人のNさんか、マテ貝取りはからっきしなのだ。川で馬鹿にされているTさんが、海では一番の取り頭だから不思議だ。
  出水市 道田道範 2014/1/11毎日新聞鹿児島版掲載

1本のツバキ

2014-01-11 12:35:09 | はがき随筆
 正月、子供の頃住んでいた所を訪ねた。広い庭と大きな家があり、庭には1本のツバキもあった。裏には松林がありその下に田んぼが続いていた。当時、フナ、ドジョウすくい、缶蹴り、かくれんれぼ、こま回しなど夕方暗くなるまで遊んでいた。母の呼び声でやっと家に帰った。
 今は家もなく庭は荒れ、松林もなく、子供の遊び声も聞こえない。静かだ。ただ1本のツバキが少しだけ枝を広げ残っていた。私たちの遊びを見ていたツバキだった。見上げると小さなつぼみをつけ寂しく生きていた。当時を知る唯一の証人。そっとツバキの幹をなでて帰った。
  出水市 畠中大喜 2014/1/10 毎日新聞鹿児島版掲載

サポーター

2014-01-11 12:27:57 | はがき随筆
 朝4時、薄明かりの山道をあえぎながら軽自動車がやって来る。コトリという音を確かめると、私は外に出て朝刊を手にする。「毎日俳(歌)壇」は毎週月曜日。「よしっ!」と小さくガッツポーズをして再び寝室へ……。間髪を入れずに「どうだった?」と妻。「うん。載ってた」「やったあ、バンザイ!」
 眠たい目をこすりながらも、自分のことのように喜んでくれる。投稿の道は、予想以上に厳しい。全国からの投稿者。ボツの日が延々と続く。でもでも、弥生さんという力強いサポーターのいる限り、ほへこたれはすまいと思っている。
  霧島市 久野茂樹 2014/1/9 毎日新聞鹿児島版掲載

冬晴れ間

2014-01-11 12:21:33 | はがき随筆
 昨年の師走は本格的な冬日が続いた。黒い雲が空を塞ぎ、肌を刺す冷たい北風が吹き、音もなく降る雨。
 そんな日が続き、久しぶりの快晴の朝が来た。 雲の蓋が取れ、突き抜けるような澄んだ空と、暖かな太陽の日差し。草木も生気に満ち輝き、家々の閉ざされた窓も開けられた。屋根瓦も光り、どこの家も所狭しと布団が干された。 
 いつもの晴れた日をこんなにも気持ちよく感じたことは、なかった。
 太陽のエネルギーと、優しさに包まれた一日であった。
 万物の深く息せし冬晴れ間
  出水市 塩田きぬ子 2014/1/8 毎日新聞鹿児島版掲載

「追加した願い」

2014-01-11 12:16:56 | 岩国エッセイサロンより
  
2014年1月10日 (金)

岩国市  会 員   片山 清勝

 氏神様の石段は長くて急。子どもは3歳くらい、その父娘の後ろに続いて上る。中ほどまで上がった時、息をはずませ「パパ、神様はどうして高いところにいるの」と聞く。何十年も参拝するが、思ったこともない質問に、これは難問と思った。 
 間をおかず「それは、子どもが仲良く遊んでいるのがよく見えるから」とパパは質問を待っていたかのように教えた。神は身近にいて子どもを見守ると教えたひと言。機に応じて出せる知恵を頓知という。これは物忘れ対策に役立つと直感、家内安全に急きょ、頓知の2字をプラスし初詣の柏手(かしわで)を打つ。


  (2014.01.10 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載