はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ASKAあなたもか

2014-05-27 17:01:16 | ペン&ぺん

 覚せい剤取締法違反(所持)容疑で、男性デュオ「CHAG and ASKA」のASKA(本名・宮崎重明)容疑者(56)が逮捕された。昨年、週刊誌で薬物疑惑が報じられたが、名誉毀損で訴えることもなく、反論もなかったので、誰もが「もしや」と思っていた。当初、容疑を否認していたが「覚醒剤を使ったことがある」などと使用を認める供述を始めているという。「ひとり咲き」(1979年)、「万里の河」(80年)から知っていたので、事件が事実なら残念だ。心に残る歌詞で数々のヒット曲を生んだのに、あの警視庁組織犯罪対策5課に逮捕されるとは……。なぜ、覚醒剤に手を出したのだろうか。全てを明らかにしてほしい。
 県警がホームページで県内の薬物事犯(覚醒剤、大麻、麻薬)の検挙状況を公表している。覚醒剤をみると、2011年は51人、押収量66.189㌘▽12年の特徴的傾向について①検挙者の年代別は30.40代が約6割②覚醒剤事犯再犯者の検挙が約8割③覚醒剤事犯では暴力団関係者の検挙が約半数④一般市民層への浸透、地方拡散が進んでいる――と説明している。
 若い頃、警察官から薬物の怖さを教えてもらった。覚醒剤はその名の通り、精神が覚醒し、気分が高揚するらしい。でも薬が切れると、とてつもない脱力感、疲労感に襲われ、幻覚も。薬物を絶つのは難しく、次第に精神も肉体もむしばまれていく。入手するのに高額な金も必要で、生活はすさむ。乳児ら4人が殺害された「深川通り魔殺人事件」(81年6月)を覚えておられるだろう。服役中の受刑者も覚醒剤を使用していたという。
 芸能人、アーティストらが薬物犯罪に陥るのはなぜ。新作、創作へのプレッシャーか。どんな理由があるにせよ、薬の力を借りてできなラブソングなど聴きたくない。
  鹿児島支局長 三嶋祐一郎 2014/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載

札幌と種子島で

2014-05-27 16:51:32 | はがき随筆




 17年前、札幌に住んでいた頃に買い求めたアマリリスの球根が、今年も種子島で花を咲かせた。
 東京本社を56歳で定年退職。北海道支社で4年半、嘱託として勤務した。休日に行った中小屋温泉の帰り道、駅のそばの店先で目にとまった球根を買い、札幌でも鉢に植えて咲かせた。そして60歳で退職。種子島に来るときに持ってきた。
 かみさんは「お湯は茶色でヌルヌルだったわの……。また行ってみたい」と言った後、オレンジ色のアマリリスに「来年もまた咲いてね」と語りかけていた。
  西之表市 武田静瞭 2014/5/27 毎日新聞鹿児島版掲載

写真は武田さんのブログより

古里の山

2014-05-27 16:36:11 | はがき随筆
 「ふるさとの山に向かひて 言うことなし ふるさとの山はありがたきかな」と石川啄木が詠んだ。私も家から望む鉾立山を眺めるのが好きだ。生前、母が遊びに来た時、水田が広がる山並みに「良い所だ」と故郷をほうふつさせたようで、昔話に花が咲いたからである。程なく山の屋根伝いに送電線の鉄塔が並び、時の流れは環境を変えている。母に「鉄塔を木の形で緑色にしたら景観に抵抗ないかも」と言えば、「まだ山らしい山で見られる」との答え。思えば、環境が変わっても「自分らしく」と暗に母の声がする。今日も黙して古里の山を眺めている。
  出水市 宮地量温 2014/5/26 毎日新聞鹿児島版掲載