はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ゲーム感覚で

2016-01-14 12:34:56 | 岩国エッセイサロンより
2016年1月14日 (木)
岩国市  会 員   林 治子


売り出しのチラシ片手にスーパーヘ。入り□近くのお菓子コーナーに人だかり。チョコレートの詰め放題。早速手をのばす。小さな袋にギュギュと押し込んでゆく。店内の騒音も耳に入らないほど夢中。あっー破れた。誰かがいう。ゲームするみたいに両手ですこしずつ押し込むのよと連れらしき人の声。なるほどとうなずく。見ると袋からはみでて大山盛りになっていた。そっと籠の隅にもたれさす。レジに置いた途端にくずれた。「欲張り婆さんね」とバツの悪さを笑いでごまかした。「まだまだうわ手がおられます」とニッコリ。この言葉にほっと救われる。
  (2016.01.14 毎日新聞「はがき随筆」掲載)岩国エッセイサロンより転載

寂れ行く山村 胸痛む

2016-01-14 12:33:05 | 岩国エッセイサロンより
2016年1月13日 (水)

    岩国市   会 員   横山恵子

 元日付の紙面から連載が始まった「中国山地」。過疎が進む状況を、暗たんたる思いで読んでいる。 私の故郷も中国山地沿いにある。訪れるたびに、空き家が目立つようになってきた。草が伸び放題の庭や荒れた田畑が、故郷の荒廃を物語っている。
 農業だけでは生活もままならず、高度成長に伴い、子どもたちは次々に都会へ出て行った。
 残された親は高齢化が進み、施設へ入ったり子どもの所へ行ったりして、地域はすっかり寂れている。
 昔は、自給自足が当たり前で、ゴマ、ソバ、大豆なども作っていた。「そばを打って食べた。今思うとぜいたくじやったね」と、叔母が懐かしそうに話してくれた。
 人の命の源は農業だと思う。行政がそれをないがしろにしてきたつけが今、集落の荒廃という形で表れているのではないだろうか。それに伴って自給率も下がった。
 寂れゆく故郷を見るのはつらい。   

    (2016.01.13 中国新聞「広場」掲載岩国エッセイサロンより転載

“びっくり”卵

2016-01-14 12:10:35 | はがき随筆






 「これが鶏の卵だなんて信じられる?」。カミさんが手にしている卵は、これまでに見たこともない大きさだ。種子島自然卵農場から取り寄せたのだが、一つだけ巨大だったという。
 ネットで検索。英紙「デイリー・メール」に主婦が購入した巨大卵は113㌘あり、黄身が四つ入っていたと報じられていたとあった。さらにユーチューブでは192㌘の卵を割ったら中にもう一つ卵が入っていた動画が紹介されていた。
 さてこの卵は……黄身が二つ、白身も二つと、丸々二個分で、カミさんも「ラッキー」。種子島産の巨大卵もギネス級!
  西之表市 武田静瞭 2016/1/14 毎日新聞鹿児島版掲載
画像は武田さんのブログより

声が出ない

2016-01-14 12:09:54 | はがき随筆
 ひっきりなしに咳が出て、喉がちぎれそうに痛くなって声も出せなくなった。
 今までにも声が出なくなったことはある。失恋したとき、早春の浜辺で貝殻採集をしたとき……。今回は風をひき始めた段階で薬を飲まず、ひどくなったのにいっこうに病院にもいかなかったと反省しきり。マスクもかけず、うがいもしなかった。夫とは筆談+ジェスチャー。電話にも出られない。
 「よか年してわが身も守れんバカばあさん」。夫がズバリ。「うっ」。心がかすかに動いたが声も出せず、書くのは面倒。両手で頭上に○を作った。
  鹿児島市 馬渡浩子 2016/1/13 毎日新聞鹿児島版掲載

小さなつぶやき

2016-01-14 12:09:18 | はがき随筆
 年越しと正月の用意に、スーパーに出かけた。袋から出す食材の多いこと……。いつぞや「昔はおふくろの味といわれていましたが、今はふくろの味といわれています。皆さん、ご家庭の味をつくってください」という旨の話を聞き、苦笑いしたことをふっと思い出す。
 一日一日と時代は変わっている。古きよきものを大切にしながら、新しきよきものを取り入れていかなければならない。
 姉が竹筒に活けてくれた花々をながめながら、ホッと一息。日だまりの中でしみじみと思い願った。平和でありますまように、よき年でありますように。
  出水市 山岡淳子 2016/1/12 毎日新聞鹿児島版掲載

オレ 

2016-01-14 12:08:46 | はがき随筆
 つくば市に住む6歳は、自称代名詞に「オレ」を連発する。「ウチの孫は自分のことをオレなんて言うんですよ」なんて他人に話そうものなら、揶揄されていると思うのか彼は露骨に嫌な顔をする。とんでもない。じいじは男の子としてちょっ誇らしいのです。かえりみて、私はどうであったか。60年も前、静岡の片田舎で、そうそう使っていました「オレ」を。いつも上級生にまじってあそんでいたからね。その上、人一倍自己顕示欲が強かったから。そんな「オレ」も、知らないうちに「私」に……。だから春杜がまぶしいんだ、きっと。
  霧島市 久野茂樹 2016/1/8 毎日新聞鹿児島版掲載