大隅地区の勉強会 2016-04-15 12:35:20 | 毎日ペンクラブ鹿児島 大隅地区勉強会 花曇りの四月二日(土)、リナシティ鹿屋二階談話室にて実施。 少人数の参加で作品が五つだったので、たっぷり時間をかけて微に入り,細にわたって、徹底的に合評、推敲できたのではなかろうか。 故に、書き手は苦い思いをした部分もあろう。痛みを踏み台にして各自が作品に磨きをかけていかれるように願い祈っている。 次回は十月五日(土)、リナシティ鹿屋です。 伊地知記す
働き蜂 愛さん 2016-04-15 12:30:54 | はがき随筆 幼少期、いつも愛さんの仕事場で遊んだ。早朝、牛のためにワラを切り、草と合わせてやる。鶏はハコベやぬかと水を合わせてやる。ワラでムシロを打つ。ワラを水に浸し「ワラっご」でたたいて柔らかくする両手で縄をなう。一間ほどの木製の織り機で右左とワラを交互に入れ、ガッタンと高い音が響く。ムシロは黄金色に打たれた。凍る冬の川に砂利を数時間かけてさくさんの砂利を取る。「魂の賢い人」。敬服。人間パワーをもらう。明朗快活に働く愛さんのそばにいて「幸せ」を感じる。爪のあかでも煎じて飲みたい。愛さんを教訓に導こう。 姶良市 堀美代子 2016/4/15 毎日新聞鹿児島版掲載
2人でお茶を 2016-04-15 12:21:36 | はがき随筆 40歳過ぎて出会い、数年後の桜の季節に遠く離れ離れになった人が、わが家のリビングでお茶を飲む日が来るとは。中島みゆきの「紆余曲折を経て……」という歌詞が頭をかすめる。 茶飲み友だちの域に入った、ということか。10年くらい前まではいろんな意味で距離もあったし、結構な障害もあった。 あなたに会いに夜を越えて、と果てなく遠い道のりを車で走ったこともあったけれど、今ではそんな情熱も体力もない。 こたつに入ってお茶をすすりながら、ぽつりぽつりと語る姿は、すっかり爺婆になり果てた感がある。 鹿児島市 本山るみ子 2016/4/14 毎日新聞鹿児島版掲載
監督と彼女 2016-04-15 12:15:07 | はがき随筆 「お母ちゃん、鹿大の公開授業受けるよね」 「うーん、だんだん不安になってきた。90分もつかなあ~」 「今だよ、今! 思ったときに行動した方がいいよ。その授業が来期もあるとは限らないし……」 19歳の一人娘、今春鹿大の2年生になる娘は、まるで監督のようだ。45歳も年上の彼女(私)に、平気で「スタート」を出したり、「カット!」を出す。でも、監督の「スタート!」のおかげで、41年ぶりに鹿児島大学の公開授業の一つ『ライフスキルの心理学』を受けられることになった。感謝している。 鹿児島市 萩原裕子 2016/4/13 毎日新聞鹿児島版掲載
かわいい春 2016-04-15 12:02:54 | はがき随筆 「ひいばあちゃん、じゅんこ姉ちゃん、ただいま」 私の母からみればひ孫にあたる4歳の甲高く明るい元気な声。「今日、保育園でお散歩に行って、つくしを取ってきたの。はい、これはおみやげだよ」 小さなもみじの葉のようなやわらかな手にしっかり握られた3本のつくしのぼうや。 「わあ、ありがとう。春を見つけてきたね」 3人でにっこり顔を見合わせて笑った。かわいい笑顔とかわいいつくし、かわいい春のプレゼント。うれしいなあ。 やさいい心をありがとう。かわいい春をありがとう。 出水市 山岡淳子 2016/4/12 毎日新聞鹿児島版掲載
小さき者 2016-04-15 11:56:05 | はがき随筆 過日、息子の卒園式があった。号泣したのは私よりも息子だった。息子は手の甲や手のひらで涙を拭い、果ては一張羅の袖で鼻水を拭う始末だった。「明日はもうお友達に会えない」という確固たる事実は、息子の心に何らかのくさびを打ち込んだのであろう。そこに未来を見ろというのは酷なのかもしれない。息子はまだ「小さき者」だ。同じ年ごろの子供たちに存在の不幸を説き「行け、勇んで」と背中を押した文豪のまねはできない。けれど、子離れできる日はいつかと自問する瞬間もある。彼から手を離す日まではその手を握っていたいと思う。 鹿児島市 堀之内泉 2016/4/10 毎日新聞鹿児島版掲
雪中の鶴 2016-04-15 11:43:03 | はがき随筆 1月24日の朝、窓越しに見えた菜園の野菜が雪に埋もれ、ネットをはっていたエンドウが雪をかぶって垂れていた。出水に移り住んでこんな大雪は初めて。人の声も物音もしない静寂。ふと越冬地の鶴はどうしているかと夫と車で出かけた。沿道の竹林が美しい。節々に乗った雪が竹の青さを鮮やかに見せた。 越冬地は一面の雪、鶴の群れはみな風上に頭を向けていた。広い干拓地を回ってみた。雪の寒さがこたえるのか、鶴の動きも少なく、時折クワッーと鳴き声がする。遠くの鶴は舞う小雪にかすれ、墨絵を見るようだった。 出水市 年神貞子 2016/4/9 毎日新聞鹿児島版掲載
ミツバツツジ 2016-04-15 11:31:32 | はがき随筆 昨日は晴天で、紫紅色の花はあでやかに見えたが、今日はぬれそぼちながら風に揺れている。夫がこよなく愛したミツバツツジ。舅が大切にしていたのを移したのもある。 今年は夫の10年祭と母の5年祭をこの春休みに執り行う。みんなが集まるその日まで、花が色あせないでもっていてくれるといいのだが無理だろう。イワツツジと呼ぶ人が多いが、図鑑にはミツバツツジとある。 咲くのに遅速があり、濃淡があるが、いま我が家はミツバツツジの花盛り。このろうたけた花の庭に、夫のみたまが遊んでいるような気がしてならない。 霧島市 秋峯いくよ 2016/4/8 毎日新聞鹿児島版掲載
諷刺 2016-04-15 11:23:13 | はがき随筆 毎日夫人の4月号1㌻の風刺劇、全くそうだと相づちを打ちながら読みました。 現在、衆議院は多数派がトップのいう通り結束しています。どうしていつの間にこんな事に? 平和憲法はどうなるのだう? イスラム国の台頭、中国の覇権主義、目には目、歯には歯、平和はどうなるのだろう。 力ない老人、考えてもわかりません。 原発再稼働を喜ぶ方々、福島の悲惨な現況、いかがお考えなのでしょうか。この火山列島、人間のすることで絶対はあり得ません。また想定外となってしまうのでしょうか? 鹿児島市 津田康子 2016/4/7 毎日新聞鹿児島版掲載
黒じょか 2016-04-15 10:52:44 | はがき随筆 わが家の黒じょかは婿や嫁の親など大切な人を歓迎する特別な品物だった。が、朝ドラで五代友厚と白岡新次郎が黒じょかと猪口で親交を深める場面に触発されて、わたしの晩酌はコップから黒じょかへ代わった。 その晩酌のとき、孫が「Eテレの天才てれびくんで、どちゃもんが黒じょかから出てくるよ」と教えてくれた。どちゃもんはアニメキャラクターで、各都道府県の特産品を身体の一部にしているのだという。話が弾み、晩酌の時間がまた楽しくなってきた。孫たちが入れ替わりついでくれる黒じょかの焼酎はさらに味わい深いものとなった。 姶良市 中馬和美 2016/4/6 毎日新聞鹿児島版掲載
母への感謝状 2016-04-15 10:41:54 | はがき随筆 過日、教育界永年勤続者表彰式が県庁であり、85歳の母を伴って出席した。高齢の母はそうした場所への出席をちゅうちょし「私みたいな年寄りをつれて行く人がいるの」と何度も口にしていた。その母を「お母さんしかいないんだよ」と背中を押し、一緒に表彰式に出席した。 共働きの私たち夫婦の代わりに、2人の娘を慈しんで育ててくれた両親。父が亡くなり、母のこれまでの苦労に、ただただ感謝の思いでいっぱいである。その日教育長からいただいた感謝状はとりもなおさず母への感謝状。「お母さん、ほんとうにありがとう」 南さつま市 天野芳子 2016/4/5 毎日新聞鹿児島版掲載
切り干し 2016-04-15 10:35:37 | はがき随筆 宮崎の畑に切り干し大根のプラスチックがたくさん並んでいた。山間の北風が乾燥に適宜なのだろう。いわゆる切り干しである。 私は多めに買ったニンジンを切り干しにしてうまくいった。次は桜島大根を少しでも大切にしたいと保存の方法を手だてた。なるほどわが家でも昼の日と寒風で3日もするとカラカラになる。昔、母はとりのこしの小さく短い大根をイチョウに切り、蒸し干しして、6月からの田仕事の繁忙期にもどしてみそ汁の実とした。 味濃くいまでもよみがえる母の味がなつかしい。 鹿児島市 東郷久子 2016/4/4 毎日新聞鹿児島版掲載
ついに完成 2016-04-15 10:04:54 | はがき随筆 未完成のちぎり絵がイーゼルに載せたままだった。 人生には予期せぬもろもろなことが起こるもの。10年近くを経て、ようやく作品に取りかかったものの、遅々として進まず、それでも数種類の紙をちぎって重ね張りしていく。乾くのを待っての作業は時間もいる。 夕日に染まる雄大な桜島、波の輝きと、完成間近になるとピッチも上がる。イーゼルの前を離れたり、角度を変えたりと眺め、1人悦に入る。そんなとき、ふっと赤く染めた山の向こうに遠い日の夫の面影が浮かぶ。「絵はついに完成しましたよぉ」と叫びたくなる。 鹿児島市 竹之内美知子 2016/4/3 毎日新聞鹿児島版掲載
北帰行 2016-04-15 09:59:09 | はがき随筆 ツルが帰っていく。今年も万羽だった。知り合いの写真家がすばらしい写真を下さった。多くは水辺にたたずんでいる。3羽は連なって大空をめざす。まだエサをついぱむもの、今まさに飛び立とうと見上げる6羽。遠くの山々と、水面に映るそのシルエットが、細身をくっきりと際立たせている。数多くの立ち姿やさまざまなしぐさが見事に調和した、セピア色の風景。それを小さな額に入れて頂戴した。その撮影ポイントには16回も通われたそうだ。「翌日には、もう一羽も残っていなかったのですよ」と写真家は言われた。ともに旅路の無事を祈った。 出水市 山下秀雄 2016/4/2 毎日新聞鹿児島版掲載