はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

故郷の山と川

2016-04-20 07:59:00 | はがき随筆
 山や川が私を呼んでいるようだった。そんな気にさせたのは約30年前、訪れた紫尾山のふもとの湯川内温泉の裏山や小川。
 石の多い古い山道を歩くこと約3㌔。崖路はコケむして、ヒトツバなどにシダが張りついている。深い森の、スギやシイの大木の中に、ヤブツバキの赤い花がひっそり咲いている。反対側の崖下は清冽な谷川がザーザー音を立てている。
 なんと気持ちいいのだろう。
 帰途、3月中旬だったが、湯川内温泉近くで早くもカジカガエルのすんだ鳴き声を聞いた。
 故郷の山と川は、有難きかな! と思わず口に出た。
  出水市 小村忍 2016/4/18 毎日新聞鹿児島版掲載