はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

恋ごころ

2016-08-18 05:31:09 | はがき随筆
  
むかしむかし ありました
私 そのころ 独身で
感じの良い女性に会いました
恋人だったら良いのになぁ

子供が生まれたあの頃に
可愛い女の子に会いました
あの子が娘だったらなあ
残念 子供は息子3人だけ

古稀を迎えたこの年で
優しい女性に会いました 
息子の彼女だったらなぁ
ちょっぴり残る恋ごころ

指宿市 外薗幸吉 2016/8/18 毎日新聞鹿児島版掲載

アサガオ

2016-08-18 05:00:34 | はがき随筆

 うす紫の大輪のアサガオの花が、一つまた一つと咲いた。
 アサガオには、雨は似合わない。雨に打たれたアサガオの花は、しょんぼりしぼんで悲しそう。アサガオにはお日さまの光が似合う。からっと晴れた日、お日さまの光を浴びて朝一番に咲くアサガオはうれしそう。ぱっと花びらを開いて、それはそれはきれいだ。
 アサガオと、いったいだれが名付けたのだろう。アサガオはその名の通り、朝に咲く花。おはようと朝一番にきれいに咲いたアサガオの花を眺めながら、今日も一日、またがんばろうと思う。
  出水市 山岡淳子 2016/8/17 毎日新聞鹿児島版掲載

その日まで

2016-08-18 04:54:18 | はがき随筆
 心筋梗塞になったのは4年前。東日本大震災の翌年のことだった。胸に激痛があり、救急車で搬送され命を救ってもらった。まさか自分が、と戸惑った。東北の被災者に対し同情があったが、どこか他人事であった自分が、命の瀬戸際までいった。それからはいろんな風景の見え方がちがう。いつか自分にも終りが来ると、今は実感できる。予告なく突然くるその日まで、一日一日充実させようという気持ちになれた。これは家族といえども健康な人には分かってもらえない。仕方がない。幼い娘には言葉ではなく、日々の過ごし方で示せればと思っている。
 出水市 山下秀雄 2016/8/16 毎日新聞鹿児島版掲載

豊かさとは

2016-08-18 04:44:27 | はがき随筆
 ふるさと紫尾の麓は、見上げれば真っ青な空とギラギラの太陽。おばあさんが「こら学校がなくなって、プールからコドンの声がヒッキエテトゼンネなったな~」と話し掛けてきた。活気に満ちていた母校はこの春閉校し、若い人が子育てできる環境がさらに遠のいた。仕事を求めて町に移り住む人が相次ぎ、店も若者の姿も消えた。あと何年集落はもち続けることができるのか。地方再生と子育て支援を掲げているが、学校が消えてはムイかな~。本当の心豊かな地方再生が、ほしいが、ここにはコンド~? ウンダモシタ~ン、ウンダモシタ~ン。
 さつま町 小向井一成 2016/8/13 毎日新聞鹿児島版掲載

消し炭

2016-08-18 04:37:04 | はがき随筆
 「たかこー、すみを食おうや」。2歳上の従妹ははんてんの袖の中に炭を忍ばせて私を誘った。小学校に上がる前だった。1人で留守番をしている時が炭を食べられるチャンスで、従妹は見計らったようにやってきた。炭と言っても木炭は貴重品であったから、台所の煮炊きに使った残りの消し炭である。
 薪に使う木の種類によって堅さ柔らかさの違いこそあれ、味らしきものはなかったと思う。歯や口の周りが黒いままのとき、親に見つかったら叱られた。
 時は流れ、世間で炭を料理に使っている。私たちは既に食の先端を行っていたのだ。
  薩摩川内市 森孝子 2016/8/14 毎日新聞鹿児島版掲載

風が好き

2016-08-18 04:28:05 | はがき随筆
 今や冷房なしには生活できないが、長時間の冷房で体調を崩すこともある。こまめに温度調節しないと夏風邪もひくし……。
 3月から高架橋化されたのに伴い、冷暖房完備、エレベーターも設置された慈眼寺駅を利用した。外は熱いので冷房の利いた階段下にしばらくいたが、列車の到着時刻が近づいたのでプラットホームに出た。
 まあ、涼やかな風が吹いている! 二階建の家をも見下ろせる高い場所で、四方の風が相乗して醸し出した、いい風に巡り合った。やっばり自然の風が最高。
  鹿児島市 馬渡浩子 2016/8/15 毎日新聞鹿児島版掲載