はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

おかえり

2016-08-20 11:26:22 | はがき随筆
 娘の里帰りお産から帰る日がきた。初めての育児に不安を持つ娘に「赤ちゃんが泣く時は、この子はどんな時も私さえいれば大丈夫と自信を持ち、しっかり胸に抱くんだよ」と伝え、嫁ぎ先のえびの市へ出発した。
 えびのの実家に着くと、お父さんが「おかえり」、お母さんが「おかえりなさい」と庭先まで出て迎えてくださった。
 いつも使い慣れた言葉がなぜか胸を熱くした。とても大切な言葉だったのだと気づかされた。2人を無事に送り届け、ホッとした思いと、優しく温かな言葉を耳に残し、万緑の中を、わが家へと帰った。
  出水市 塩田きぬ子 2016/8/20 毎日新聞鹿児島版掲載

仲良きこと

2016-08-20 10:34:45 | はがき随筆
 市のエッセー教室に入ったら、宿題をもらった。夕食時、夫に尋ねる。「『愛しい人へ』のタイトルで文をつくることになったけれど、私たち、愛しい存在かな」「いや違うね」。即答に、にんまりする私。予想通りだったから。
 同世代の友に話すと「私たちは会話もなくお互い無視よ。『ご飯』と呼ぶと、飼ってる猫みたいに台所に来る」とのこと。とんでもない会話かもしれないが、これが日常茶飯事、ごく普通のやりとり。私も彼女も夫婦として刻んできた年輪が言わせる言葉。恥ずかしながら根底に愛しさがあるのよね。
いちき串木野市 奥吉志代子 2016/8/19 毎日新聞鹿児島版掲載