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西之表市の市街地から本城跡に上る路地の左側の土手に咲く緋寒桜を鑑賞していたときの話。路地はかなり急坂で、通る人は足元を見て上がるため緋寒桜を見上げる余裕がない。ビニール袋を手にした、買い物帰りと思われる私と同年配の男性が上がって来た。上がりきったところで振り返り声をかけてきた。「今年もきれいに咲いてますな。私もここを通るのが楽しみです」とにっこり。今度は下校途中の女子小学生が通りかかった。「こんにちは」「お帰りなさい」。こうした会話も日常的に交わされる。種子島には日本の原風景が息づいている。
西之表市 武田静瞭 2017/3/8 毎日新聞鹿児島版掲載